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人工衛星の軽量化へ チタンの加工に適したプレス加工金型を開発 ~フジタ技研(株)

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サキドリ

金属の耐摩耗性などを向上させるコーティング技術に定評があるフジタ技研では、軽量化が求められる人工衛星向けに、加工が難しいチタン製の電池缶ケースを成形する金型の表面処理技術を新たに開発した。​

鉄からチタンに切り替え 3,000万円のコスト削減

各種コーティングの見本の写真 通信等のサービス拡充に向け、近年、人工衛星の活用が世界的に拡大している。内閣府の資料によれば、2022年に打ち上げられた人工衛星は2,368機で、5年前に比べ約5.3倍に増加した。
 人工衛星を打ち上げるにはロケットが必要だ。しかし、人工衛星の重量が増すほど、打ち上げコストは高くなる。そこで課題となるのが人工衛星の軽量化だ。
 その解決策の一環としてフジタ技研が取り組んだのが、人工衛星用バッテリーに搭載されるチタン製電池缶ケースを量産するための技術開発である。従来は鉄製で、チタン製に切り替えることで1個当たり約3グラムの軽量化になる。人工衛星1機につき数千個単位の電池缶ケースが搭載され、一度の打ち上げに50機ほどの人工衛星が積み込まれるため、少なくとも約150キログラムの軽量化、約3,000万円程度のコスト削減につながる。
 とはいえ、チタンは成形する際に使われるプレス金型にこびりつきやすく、これが製品に傷やひび割れなどの不良を引き起こす。宇宙空間では不良があっても交換できないため、より信頼性の高い部品が必要とされる。同社では金型に、新たに開発した表面処理を施すことでこの課題を克服した。

表面に微細な凹凸と世界初のコーティング

 では、同社ではどのようにして課題を解決したのか。
 通常、鉄やステンレスをプレス加工する場合は、専用の加工油を使って金型と金属材料の間に油膜を作り、滑りやすくしている。一方、チタンの場合はその特性上、加工油の効きが弱いため油膜が切れてしまい、こびりつきの原因となる。
 そこで同社では、普通は鏡面状に仕上げる金型の表面に微細な凹凸をつけ、加工油をとどまりやすくした。さらに、窒化処理によって金型の表面を硬化させた上で、PVD(物理的蒸着法)と呼ばれる手法によってミクロン単位の膜でコーティングし、強度を高めた。
南条𠮷保研究開発部長の写真 この結果、もともとは1回プレス加工するだけで使い物にならなくなってしまった金型が、1,000回以上加工しても高い精度を保てるよう改善した。
 最も苦労したのはコーティングだった。同社の南条𠮷保研究開発部長は「チタン向けのコーティングはどこにもなく、開発の足がかりがないため、ゼロからのスタートだった。加工条件や材料を見直しながら何度も試し、最適な組み合わせを探し出した」と振り返る。昨年末までに完成させた新技術は特許申請中だ。

サポイン事業に採択 研究開発が大きく前進

工場の写真。自動車部品製造用の金型を主力とする。 新技術のベースとなったのは、2016年度にISICOの次世代ファンド事業の支援を受け、研究開発に取り組んだ自動車部品向けの高硬度コーティングである。その後、情報通信機器メーカーからチタン製電池缶ケース用の金型について相談され、このコーティングを改良することで課題の解決を目指した。研究開発にあたっては、2021年度の経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に採択され、3年にわたって補助を受けた。
 サポイン事業は、精密加工や表面処理など、12分野の特定ものづくり基盤技術の向上につながる研究開発を支援する制度で、他の企業や研究機関などと連携体を構築して取り組むのが特徴だ。
 同社の場合は石川県工業試験場、富山県立大学と連携体を構築し、ISICOが事業管理機関を務めた。県工業試験場は窒化処理や表面の凹凸についての評価、富山県立大はコーティングの評価を担当した。また、産業技術総合研究所と工作油メーカー、情報通信機器メーカーがアドバイザーとして加わった。
 南条部長は「研究開発には費用がかかるため、簡単に手を出せないが、サポイン事業によってかなり負担が軽減された。ISICOが事業管理機関として採択後の経産省とのやりとりや事務処理を担ってくれたおかげで研究開発に専念できた」と話す。

メガネや医療機器など新たな用途も模索

フジタ技研の社屋外観写真 メーカー側の事情で、チタン製電池缶ケースが人工衛星に搭載されるにはもうしばらく時間がかかりそうだが、その数は今後ますます増えると見られ、「軽量化が求められる宇宙・航空機分野で新たな販路を開拓する足がかりになる」と南条部長は期待を寄せる。
 一方で、チタンはメガネや医療機器などにも使われることから、フジタ技研では何社かの取引先に新技術で加工した金型を提供し、新たな用途も模索している。

企業情報

企業名 フジタ技研株式会社
創業・設立 創業 1970年4月
事業内容 冷間鍛造金型の一貫生産、精密プレス金型加工など

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関連URL 情報誌ISICO vol.137
備考 情報誌「ISICO」vol.137より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.137


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