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令和6年能登半島地震で被災しながらも、試練を乗り越え、明日への一歩を踏み出した地元企業の奮闘ぶりを紹介します。
和倉温泉のブロッサムは、手軽な洋食や本格フレンチを楽しめる家族経営のレストランだ。現在は創業者の長男である黒川恭平さんが料理長を務める。
年初の能登半島地震では、冷蔵庫が倒れ、鍋がひっくり返り、皿やグラスが割れた。外壁や内壁がはがれ落ち、配管も壊れた。温泉街全体が大きな被害を受ける中、「一日でも早く店を開け、復興を後押ししたい」と考えた黒川さんはクラウドファンディングを活用して修繕費を募った。
寄付として受け取るコースに加え、支援金をすべて食事券として返すコースも用意したところ、目標金額300万円に対し、約400人から836万円が集まった。修繕を終え、営業を再開したのは4月13日のことだ。今では地元の人を中心に、震災前の8~9割まで客足が回復した。
店を閉めていた期間には、七尾市内の避難所で約1カ月間、料理人仲間と炊き出しを続けた。「多くの方に喜んでもらえて、あらためて食の持つ力を感じた。限られた材料で工夫して作るのでスキルアップにもつながった」と黒川さんは話す。
また、「被災地の状況を知ってもらうきっかけになれば」と35歳以下の若手が競う料理コンテスト「RED U-35」にエントリー。335人の中から上位5人に選ばれ、地元の人を喜ばせた。
店舗の営業再開に合わせ、震災直後からいったん受注を止めていたオンラインショップでの販売も再開した。販売しているのは店で評判のバスクチーズケーキだ。能登の天然塩とフランス産クリームチーズ、北海道産生クリームをぜいたくに使った濃厚な味わいが好評で、被災地を応援しようと全国から注文が寄せられた。
現在は第二弾としてドレッシングの商品化を進めている。創業時から店で出し、「野菜嫌いの子どもも、これをかければ食べられる」と評判の味だ。ISICOの専門家派遣制度を使ってアドバイスを受け、ターゲットを明確化し、店頭調査や消費者へのアンケート調査を実施した上で、容量や価格などを見直した。
2月からは業界の枠を超え、和倉の若手経営者らが集まる会にも参加し、月に1度、地域の復興ビジョンについて話し合っているという黒川さん。ブロッサムでの新たな挑戦はもちろん、「和倉全体の復興にも尽力したい」と意欲を見せる。
企業名 | レストラン ブロッサム |
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創業・設立 | 創業 1983年4月 |
事業内容 | レストラン経営 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.137 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.137より抜粋 |
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掲載号 | vol.137 |