ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 情報誌ISICO > 2種類の細胞を同時に培養・観察 画期的な新容器を世界標準に ~(株)ギンレイラボ

本文

2種類の細胞を同時に培養・観察 画期的な新容器を世界標準に ~(株)ギンレイラボ

印刷ページ表示 更新日:2024年11月27日更新

受賞者のその後にフォーカス 

ISICOでは2007年から毎年、ビジネスプランコンテストを開催し、優秀な起業家の成長をサポートしている。厳しい審査を勝ち抜いた起業家が、その後どのように成長したのか。2016年のコンテストで最優秀起業家賞に選ばれたギンレイラボの島崎猛夫社長に現状を聞いた。

従来品の欠点を克服 事業化6年目で黒字に

細胞培養器「NICO-1(ニコイチ)」の写真 島崎社長がコンテストで発表したのは、「NICO-1(ニコイチ)」と名付けた新しい細胞培養器だ。二つの容器を隣り合わせに連結し、フィルターを通して培養液を共有する構造で、がん細胞と正常細胞など、2種類の細胞を同じ条件で培養し、相互作用などを観察する際に使用する。
 従来の細胞培養器は二つの容器を上下に重ねた構造だが、顕微鏡の機能の制約上、下にある容器の細胞しか観察できないなどの欠点があった。これらの欠点をすべて克服するのがNICO-1だ。
 NICO-1は2016年の発売後、国内外の大学や企業の研究室が購入し、医学・薬学・生物学・海洋学といった分野で活用されている。
 国内では専門商社を介して販売するほか、理化学機器販売最大手の富士フイルム和光純薬(株)(大阪市)を通して「UniWells」というブランド名でも供給する。海外代理店向けには「ICCP」というブランド名で展開している。
 販売は順調に伸び、事業は3年前に黒字化した。「NICO-1でなければ観察できなかったと感謝されたこともある」と笑顔を見せる島崎社長。NICO-1を使って得られた研究成果は、すでに10報以上の論文に掲載され、「エクソソーム(細胞が産生・放出する小胞)研究の標準品になりつつある」との声も届いている。

実験時に感じていた不便が開発のヒントに

島崎猛夫社長の写真 島崎社長は金沢医科大学の研究者であり、NICO-1は自身が感じていた不便を解消するためのアイデアを具現化したものだ。当初は自作していたが、その後、製品化の必要性を感じ、プラスチック製医薬品容器の製造で実績のある伸晃化学(株)(金沢市)の協力を得て、共同開発した。
 製品化が順調に進んだ一方、販路開拓の面では苦労もあった。当初販売を依頼していた企業が大手企業に吸収合併され、それまでの話が白紙に戻ってしまったのだ。そのため、NICO-1について最もよく理解している島崎社長が起業し、販路開拓に取り組んだ。
 診療や研究を専門とする島崎社長にとって、販路開拓は初めての経験である。加えて、研究者は実験結果の再現性と信頼性を重視するため、長年にわたって実績のあるメーカーの製品を好むという業界特有の事情も高い障壁となった。それでも、展示会への出展など、地道に営業活動を続け、少しずつ活路を開いていった。

資金目当てで出場 信用度アップにも

研究に没頭する島崎社長の写真 ISICOが主催するビジネスプランコンテストに出場したのは、生産体制を整え、販路開拓に取り組み始めた2016年のことだった。
 出場のきっかけは、旧知の間柄である(株)キュービクス(白山市)の丹野博社長や(株)エムシープロット・バイオテクノロジー(内灘町)の友杉直久社長が、過去のコンテストで最優秀起業家賞を受賞していたことだった。「優勝すれば事業資金がもらえると知っていたので、それを目当てに出場を決めた」と島崎社長は振り返る。
 交付された事業資金は、学会で開かれる展示会への出展費用や事業に必要な機器の購入などに充てた。また、ISICOの専門家派遣制度を活用してブラッシュアップした事業計画書は、金融機関から資金調達する際に大いに役立った。
 「事業活動を始めるタイミングで、まとまった資金が得られたのが大きかった。新興企業は信用が第一であり、販売代理店と契約する際にも、ISICOから支援を受けていることが有利に働いた」と島崎社長は話す。

生体模倣システムなど応用展開も次々と

生体模倣システムのプロトタイプの写真 今秋には、住友理工(株)(愛知県小牧市)と共同で、NICO-1をベースにした生体模倣システム(MPS)をリリースした。生体内の臓器の機能や疾患状態をデバイス上で再現し、動物実験をしなくても、医薬品や化粧品などの効能や安全性を確認できると期待されている。
 さらに、今年度はISICOの成長戦略ファンドスタートアップ創出支援事業(アクセラレーション支援)に採択され、MPSを一層充実させることで世界展開と宇宙ビジネスへの参入にもチャレンジする。専門家でなくても扱えるような、自動培養装置や自動実験システムの開発も視野に入れる。
 このほか、関連会社の(株)ギンレイバイオ(金沢市)では細胞を製造するための試薬・培地の販売に向け準備を進め、2年後には細胞製造に関する会社も立ち上げる予定だ。
 「NICO-1が世界に広まり、業界のスタンダードになってくれればうれしい。そして最終的には細胞を使った治療の社会実装に貢献したい」と話す島崎社長。石川発のスタートアップとして大きく羽ばたくことを願ってやまない。

企業情報

企業名 株式会社 ギンレイラボ
創業・設立 設立 2015年11月
事業内容 バイオ関連製品の研究・開発・販売

企業情報詳細の表示

関連情報

関連URL 情報誌ISICO vol.138
備考 情報誌「ISICO」vol.138より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.138


月間アクセスランキングへのリンク

月間アクセスランキング
DGnet 企業情報/バーチャル工業団地/情報誌ISICO


ViVOサイトへのリンク

活性化ファンド・チャレンジ支援ファンド商品開発ストーリー集サイトへのリンク

じわもんセレクトサイトへのリンク

DGnetサイトへのリンク