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令和6年能登半島地震で被災しながらも、試練を乗り越え、明日への一歩を踏み出した地元企業の奮闘ぶりを紹介します。
魚春水産は地元で水揚げされた新鮮な魚介類を、全国の飲食店や宿泊施設に販売する仲卸業を営んでいる。
元々は鮮魚だけを扱っていたが、2年前に急速冷凍機2台と超低温冷凍庫を導入し、冷凍部門を立ち上げた。急速冷凍機はどちらも食材の細胞を壊さず、水分量を保ったまま、包み込むようにして均一に冷やす仕組みだ。色合いも変わらず、おいしさをそのまま維持できる性能が特徴で、鮮魚であれば、解凍後にそのまま刺し身で提供できるほどの品質を誇る。
長期保存できるだけでなく、食中毒予防に役立つ点も鮮魚を冷凍するメリットだ。
「温暖化の影響か、近年では、以前はアニサキスが見られなかった白身魚にも寄生するようになった」と話すのは同社の春木直人社長だ。アニサキスはマイナス20度以下で24時間以上冷凍すれば死滅する。同社の超低温冷凍庫はマイナス60度で保管が可能で、顧客に安心して利用してもらえる体制を構築している。
特に首都圏の顧客からはアニサキスを心配しないで済む冷凍した魚介類への需要が高く、既に売り上げの30%を占めるまでになり、事業の新たな柱となっている。
ISICOのバイヤー招へい事業を通じて設備を視察した東京のケータリング会社等の担当者も、解凍したブリやサワラ、アオリイカの刺し身の味に目を丸くし、今後の取引を検討中だ。
年初には能登半島地震に見舞われたが、真新しい社屋の耐震性は高く、大きな被害は免れた。しかし、断水の影響で約2カ月間は水が使えず、冷凍済みの在庫や一次加工をする前の鮮魚のみを販売してしのいだ。その後は通常営業を再開し、七尾港で水揚げされた鮮魚を急速冷凍し、販売している。
今後は最先端の設備を生かし、より高価格帯の顧客への販路拡大を目指す。そのためにISICOの専門家派遣事業を活用し、国際的な食品衛生管理手法であるHACCPの認証を取得するため、取り組みを進めている。
春木社長は「専門家の指導を受け、より高いレベルの衛生管理体制を構築し、ゆくゆくは輸出にも挑戦したい」と今後の展望を語り、県内で水揚げされる魚種に最適の輸出先の調査、選定に取りかかる予定だ。
企業名 | 株式会社 魚春水産 |
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創業・設立 | 設立 1999年7月 |
事業内容 | 鮮魚の卸売り・小売り |
関連URL | 情報誌ISICO vol.138 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.138より抜粋 |
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掲載号 | vol.138 |