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県とISICOは11月30日、石川ハイテク交流センター(能美市)で「第2回石川テックプラングランプリ」を開催した。これは県内の高等教育機関の研究成果を基に、新産業を創出する目的で昨年からスタートした取り組みだ。今回はファイナリスト9チームがプレゼンテーションに臨み、産業用酵素の高機能化について発表した「QualitiZyme(クオリティーザイム)」が最優秀賞に輝いた。
大学など高等教育機関の集積率が全国一位。そんな石川県の強みをスタートアップの創出につなげようと県とISICOが企画したのが石川テックプラングランプリだ。審査は県内外の企業の代表者ら10名が担当した。
最優秀賞を受賞したQualitiZymeは、石川県立大学生物資源工学研究所講師の松崎千秋さんが発表した。テーマは「産業用酵素の迅速な高機能化」だ。
工業や食品、医薬、飼料といった産業では、原料の合成や分解に、さまざまな酵素が使われている。一般的な酵素の場合、すぐに機能が低下してしまうため、一回しか使われないが、松崎さんらが開発した技術によって耐熱性や安定性を高めることで、何度も使えるようにする。これによって、製造時の生産性を向上させ、コストや環境負荷を低減する。酵素を高機能化するため、分子モデルを用いて構造を設計し、シミュレーションによって精度を向上させる点に独自のノウハウがある。
審査員からは「サステナビリティに貢献できるポテンシャルの高い技術」「子どもの世代に美しい地球を残したいという思いに共感した」と評価する声が挙がった。
当日はこのほか、パートナー企業などからQualitiZymeを含め7チームに社名を冠した賞が贈られた。ISICOでは入賞者の今後の事業化に向け、共同研究に取り組む企業とのマッチングや事業計画の磨き上げを支援する。
発表チームのパネル展示を見学し、開会に先立ちあいさつした馳浩知事は「現代社会の困りごとを解決するには科学技術の最先端の取り組みが必要だ。いいものは今後のビジネスの種として、世界を変える発明として支援していきたい」と述べた。
また、石川テックプラングランプリの運営を担い、審査員長を務めた(株)リバネス(本社/東京・大阪)の高橋修一郎社長COOは「この場を通じて、面白い技術が社会に出て、課題を解決する一歩目を作り、素晴らしいビジネスが立ち上がるための出会いを生み出したい」とあいさつした。
この日の午前には、『世界を変えるビジネスはたった1人の「熱」から生まれる~知識製造業の新時代~』と題して特別講演会を開き、高橋社長COO、(株)ビーイングホールディングスの喜多甚一社長、環境微生物研究所(株)(石川県立大学発ベンチャー)の馬場保徳社長が意見を交わした。
ファイナリストのプレゼンテーションの前には、合成生物学を発展させ、希少有用成分を微生物発酵によって生産するファーメランタ(株)(石川県立大学発ベンチャー)の中川明CTOがロールモデル起業家として基調講演した。
加藤 裕介 (北陸先端科学技術大学院大学)
Reversible Arrest of Life
動物の自己輸血のための血液製剤凍結保存サービス
石田 元彦 (石川県立大学)
スマートシープケア
障害者による牧草生産用機械利用とヒツジ生産の支援技術開発
フォーカスシステムズ賞
松崎 千秋 (石川県立大学)
QualitiZyme
革新的理論設計技術による産業用酵素の迅速な高機能化
最優秀賞 / みずほ銀行賞 / 三谷産業賞
小田 忍 (金沢工業大学)
InterfaceBIOTECH
界面バイオプロセスによるファインケミカルズの探索と生産
ビーインググループ賞
西脇 ゆり (金沢大学)
セルソル
バイオマス溶解技術を利用した植物由来のシート
小松マテーレ賞 / BIPROGY賞
大塚 作一 (国際高等専門学校)
写真の肉眼化計画
夜間の視覚特性を応用した視認性改善ソフトウエア
アイ・オー・データ賞 / PFU賞
友水 豪志 (北陸先端科学技術大学院大学)
SofRobo
視覚触覚センサを応用したTactile Bedの開発
リアルテックファンド賞
金道 敏樹 (金沢工業大学)
VOID
判断根拠を提示できる病理画像診断人工知能技術
大坂 侑吾 (金沢大学)
KU Energy Guardians
工場のエネルギーマネージメントシミュレータ
JR東日本賞 / QRインベストメント賞
企業名 | 公益財団法人 石川県産業創出支援機構 |
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創業・設立 | 設立 1999年4月1日 |
事業内容 | 新産業創出のための総合的支援、産学・産業間のコーディネート機関 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.139 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.139より抜粋 |
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掲載号 | vol.139 |