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誰もが気持ちよく排泄できる社会を目指し適切なケアを提供する専門家を養成 ~(同)プラスぽぽぽ

印刷ページ表示 更新日:2025年2月3日更新

フロム・ユーザーズ

便や尿の漏れ、便秘などに悩む人は多いが、気軽に相談できる場所がないことから、排泄ケアの拠点を作ろうと設立されたのが「プラスぽぽぽ」である。榊原千秋代表が立案したビジネスプランはISICOのコンテストで優秀起業家賞を受賞。その後、ISICOの伴走支援を受けながら、適切なケアを実践できる人材の育成などに取り組んでいる。​

全国で約900人を認定 被災地支援にも尽力

 看護や介護の現場では、便が出ない場合は下剤や浣腸、摘便(※)によって、強制的に排便を促すことが一般的で、苦痛を伴う。寝たきりの高齢者が、夜間に排泄物で寝間着を汚してしまい不快感を感じているケースも多い。
 プラスぽぽぽは、そんな現状を改善し、赤ちゃんから高齢者まで、誰もが気持ちよく排泄できる社会を目指し、2015年に設立された。事業の核となっているのが、“便育”活動に取り組む「うんこ文化センターおまかせうんチッチ」である。
オリジナルグッズの写真。おなかを温めるホットパックや便秘解消の壺の位置を示したシートなど。 便育とは、体や心の健康を整え、気持ちよく排便できる生活習慣を育むこと。これを推進するため、同社が注力するのが「POOマスター」と名付けた排泄ケアの専門家の養成だ。榊原代表が考案した独自のカリキュラムに基づく研修会は、座学だけでなく、ワークショップや事例検討、そして職場や地域での実践を通して、即戦力となる人材を育成する。
 受講者は看護師をはじめ、医師や介護士、薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士など幅広い。現在、高知県を除く全国46都道府県に、合わせて約900人のPOOマスターが誕生し、医療や介護の現場で活躍している。
能登半島地震の避難所でセルフケアの方法を伝えている様子の写真。 また、毎週月曜には小松市内の拠点で「おなかの保健室」を開設し、予約制で地域住民からの相談に無料で応じている。快便を促すオリジナルグッズも販売する。
 災害発生時、避難所では水分摂取を控えたり、環境の変化でストレスを受けたりして、極度の便秘になる人もいる。そのため、榊原代表は能登半島地震の被災地に何度も足を運び、「快うん体操教室」を開催し、セルフケアの方法を伝えている。
(※)肛門から指を入れて便を輩出させるケア

エビデンスの確立へ 大学に入って研究

 榊原代表が排泄ケアに強い関心を持つようになったのは、保健師として寝たきりの高齢者の自宅を訪問した時の経験がきっかけだった。冒頭で紹介したような状況を目の当たりにし、何とか改善できないかと考えるようになった。
 その後、排泄ケアを支援するNPO法人日本コンチネンス協会(東京都)と出会って対応法を知り、北陸支部を立ち上げ、講師活動を始めた。
 転機が訪れたのは40歳の時だ。保健師の役割を見つめ直そうと、金沢大学医学系研究科保健学専攻に入学した榊原代表は、世界にはまだ排泄ケアのエビデンスがないことを知り、研究に没頭した。そして「研究の成果を発表しているだけでは人の心は動かない。広めるには、現場での実践が大事」と考え、排泄ケアを軸にした起業を決意した。
 排泄状況の評価・分析をはじめ、快便に必要な栄養素、腸の動きを促すマッサージ法など、POOマスター養成研修会のカリキュラムも、当時、大学で書き上げた博士論文の内容がベースになっている。

POOマスターの養成研修会の様子の写真。ワークショップでの演習風景の写真。

ISICOの伴走支援で事業化を加速

 榊原代表が起業の準備段階で相談に訪れたのがISICOだった。スタッフの勧めに応じて2015年にISICOが主催する「革新的ベンチャービジネスプランコンテストいしかわ」に出場すると、優秀起業家賞を受賞。「自分のやりたいことを認めてもらって、背中を押された感じがした。続けていいんだと思った」と榊原代表は当時を振り返る。
 その後も事業計画の策定や資金調達など、さまざまな面でISICOからアドバイスを受けた。専門家の助言を基に「おまかせうんチッチ」「POOマスター」の商標登録も行った。「時には愚痴を聞いてくれたり、励ましてくれたり。ISICOのスタッフに相談すると前向きになれた。何より、賞をもらって支援を受けていることが社会的な信頼につながった」と榊原代表は話す。
 また、2023年にISICOが開催した「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ」で最優秀起業家賞に輝いたイントロン・スペース(株)(東京都)の今井茂雄社長とも連携する。同社は尿失禁や尿漏れの悩みを解決する外付け人工膀胱(ぼうこう)を製造しており、榊原代表は商品開発や販促活動に協力している。

快便を促すケアを看護や介護の標準に

 榊原代表は適切な排泄ケアを教育にも取り入れてもらおうとPOOマスターに認定された看護大学の先生と共に、学生用のカリキュラム案の作成にも取り組んでいる。
 2021年には学際的な研究、教育、交流の場として、一般社団法人日本うんこ文化学会を立ち上げ、年1回のペースで学術集会を開催している。
榊原千秋代表の写真。 今後は、医療・介護分野だけでなく、例えば発酵食品のメーカーや専門家など異業種とも連携し、便育活動のすそ野を広げていきたい考えだ。
 「適切な排泄ケアを施し、便秘や下痢が解消すると、それまで表情に乏しかった高齢者が笑顔になり、活動的になる。病気は治らなくても、快便をきっかけとして、人生やその人らしい生活を取り戻す“リカバリーケア”を目指している」と話す榊原代表。誰もが気持ちよく排泄できる社会の実現に向け、便育活動をさらに活発化させようと意欲を燃やしている。

企業情報

企業名 合同会社 プラスぽぽぽ
創業・設立 創業 2015年8月
事業内容 排泄ケアのための人材育成、訪問看護・介護ステーション、居宅介護支援事業所の運営など

企業情報詳細の表示

関連情報

関連URL 情報誌ISICO vol.139
備考 情報誌「ISICO」vol.139より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.139


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