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令和6年能登半島地震で被災しながらも、試練を乗り越え、明日への一歩を踏み出した地元企業の奮闘ぶりを紹介します。
「常連客がほとんどで、毎日のように来てくれる人もいる」。二代目の池田悟さんがそう話す通り、香華園川原町店は地元で長く愛されている「町中華」だ。一番人気は錦糸卵が乗った焼き飯。味のアクセントになっているのが、細かく刻んだかまぼこである。「手間暇かかるが、これを使わないとうちの味にならない」と悟さん。最近では、地元テレビ番組で紹介されたオムライスを注文する客も増えてきた。
そもそも香華園は、1951年に七尾市内で産声を上げた。悟さんの父、新作さんは1959年に15歳でこの店に弟子入り。住み込みで修業を積み、1971年に創業者から川原町店を買い取り、独立開業を果たした。今では悟さんとその息子2人が厨房の中心だが、新作さんは80歳の今も現役で中華鍋を振り、出前もこなしている。
ちなみに香華園は親戚や弟子によるのれん分けで店舗数を増やし、現在は川原町店を含め、輪島市、七尾市、羽咋市、氷見市に計5店舗が営業を続けている。
昨年1月に発生した能登半島地震では、エアコンやテレビ、水道管が破損するなどの被害を受けた。水が使えないため、しばらくは休業を強いられたが、保健所に相談の上、水質基準をクリアしている井戸水を確保。1月25日からメニューを5品に絞り、テイクアウト限定で営業を再開した。
水道の配管工事が終わり、通常営業を再開できたのは3月14日のことだった。待ちわびていた地元客が大勢押し寄せたほか、復興業務を支援する他地域の自治体の職員や土木・建築関係者も新たに加わり、売り上げは震災前を上回っているという。
震災後、ISICOが運営するよろず支援拠点のアドバイスを受けながら力を入れているのがSNSによる情報発信だ。InstagramやXを活用し、普段の仕事ぶりやおすすめメニュー、まかない、臨時休業のお知らせ、復興の様子などを投稿し、顧客との距離を縮めている。プレスリリースの作成、配布にもチャレンジした。
互いの投稿にコメントし合うなど、姉妹店同士の交流も盛んになり、悟さんの妻、昌代さんは「震災をきっかけに絆がさらに強くなった」と話す。
「息子たちにバトンを渡せば、創業100周年が見えてくる」と期待を寄せる悟さん。親子三代が守り続ける味は、これからも地域の人々に愛され続けるに違いない。
企業名 | 香華園 川原町店 |
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創業・設立 | 設立 1971年1月 |
事業内容 | 中華料理店 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.139 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.139より抜粋 |
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掲載号 | vol.139 |