ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 情報誌ISICO > 【巻頭特集】業務効率化や販路開拓に新基軸 第三者承継で新時代に挑む ~ダイエー食品工業(株)

本文

【巻頭特集】業務効率化や販路開拓に新基軸 第三者承継で新時代に挑む ~ダイエー食品工業(株)

印刷ページ表示 更新日:2025年3月26日更新

次世代へのバトンタッチを専門家が丁寧にサポート
石川県事業承継・引継ぎ支援センター

長年、情熱を注いできた事業を誰にどう託すかは、経営者にとって大きな悩みだ。いつか訪れるその日に向け、早めに準備を進めることが重要である。この際、頼りになるのが、国の委託を受けてISICOが運営する「石川県事業承継・引継ぎ支援センター」だ。同センターでは、経験豊富な専門家が事業承継に関するあらゆる相談に無料で対応する。今回の巻頭特集では、同センターのサポートを受け、未来に向けて力強く歩き始めた二つの事例を紹介する。​

70歳を区切り 社員と顧客を守りたい

千田昌利さんと谷沢鷹続さん

 健康食品や加工食品を製造、販売するダイエー食品工業は2024年10月、第三者承継によって新たなスタートを切った。28年にわたって会社を率いてきた千田昌利さんが、後継者として選んだのは、経営コンサルタントを営む谷沢鷹続さんだ。千田さんの不安を解消し、谷沢さんに挑戦の場を提供したこの事業承継は、ISICOが運営する石川県事業承継・引継ぎ支援センターの橋渡しによって実現した。
ダイエー食品工業の自社商品、サプリメントやだしつゆの写真 同社は、カシスやグレープフルーツの成分を配合し、女性の美容と健康をサポートするサプリメントや風味豊かな本格だしつゆなどを製造、販売する。長年培ってきた技術力と開発力を生かし、健康食品のOEMを受注するなど、事業は順調に推移していた。
 父親の跡を継いだ千田さんは以前から、2024年に70歳を迎えるのを区切りとし、経営から退く心づもりをしていた。しかし、当初後継者と想定していた親族は既にそれぞれ別の活躍の場を見つけ、次善の策と考えていた従業員も難色を示した。
 気力、体力ともに十分だったため、引退の時期を75歳まで延長しようかと思案していた矢先、千田さんのもとにM&Aを持ちかける電話が頻繁にかかってくるようになった。「もしも東京の会社しか譲渡先がなければ、社員や顧客を守りたいという自分の思いが新社長に届かないかもしれない」。そう不安を募らせた千田さんは、そんな状況になる前に、地元で信頼できる後継者を見つけようと、3年前に同センターに足を運んだ。

助言にとどまらず自ら事業を成長させたい

 一方、事業を引き継いだ谷沢さんは現在33歳。新潟県出身で大学を卒業後、薬剤師の資格を持ちつつも、薬局や製薬会社での仕事は自分に合わないと判断し、東京のコンサルタント会社に就職した。やりがいのある仕事ではあったが、「アドバイスするだけでなく、自ら実行役になりたい」という思いが次第に強くなり、2022年6月に独立。新拠点は、新潟と妻の出身地である京都の中間にあり、旅行で訪れて気に入った金沢に置いた。
 独立とほぼ同時に、谷沢さんが相談に訪れたのが同センターだった。「製造業のような形に残る仕事に憧れがあった」と谷沢さん。後継者不在の会社に出会うきっかけになればと「後継者人材バンク」に登録した。

マッチングで重視するのは経営者の人柄と相性

 両者を引き合わせたのは、同センターの北渡コーディネーターだ。数多い候補者の中から谷沢さんを選んだのは「薬剤師の資格を持っており、化学の素養が食品の製造、開発に役立つ。また、二人とも誠実な人柄で、相性がいいと思った」と話す。
 実際、計3人の候補者と面談し、谷沢さんを選んだ千田さんも北コーディネーターと同様の印象を感じていた。加えて「中小企業診断士の資格を有し、コンサルタント業を営んでいるので、当社の財務状況や事業内容を客観的に分析して、成長に導いてくれると思った」と話す。
本社工場に隣接する同社の工場内部の写真 谷沢さんも「千田さんは誠実で、会社への愛情も深く、堅実に経営していた。事業内容にも将来性を感じた」と話し、承継を決意した。
 谷沢さんはM&Aの実務経験が豊富だったことから、株式譲渡契約書などの素案を自身で作成。従業員と顧客を守るという条件を含め、千田さんと合意形成した後、同センターで不備がないか詳細に確認し、弁護士によるリーガルチェックを受けた。最終的には、千田さんが100%保有していた同社の株を、谷沢さんが自己資金と借入金で買い取り、事業承継が成立した。
 承継を終え、「支援センターのおかげで、安心して任せられる後継者に出会えた。ストレスなく、スムーズに事業を引き継ぐことができた」と話す千田さん。支援する立場ではなく、当事者として臨んだ谷沢さんは「決算書はいくらでも良く見せられるし、引き継ぎ前に会社の実態を完全に把握することはできない。だからこそ、経営者の誠実さが重要と感じた」と話す。

機能性表示食品や医薬部外品の開発も視野に

だしつゆを手に談笑する千田さんと谷沢さん

 その後、千田さんは約3カ月間常勤し、実務的な引き継ぎを行った。今年1月から非常勤の相談役を務めている。
 承継後、谷沢さんがまず進めたのが業務のIT化やDXだ。例えば、有給休暇の取得申請書など、各種書類を電子化してペーパーレス化を推進。タイムカードに代えて、デジタル勤怠管理システムを導入し、集計作業の負担を軽減した。また、文書作成にAIを活用。ビジネス版LINE 「LINE WORKS」やグループウェア「Google Workspace」を導入し、情報共有やコミュニケーションの円滑化、決裁の迅速化につなげている。
 谷沢さんがコンサルタント時代に培ったウェブマーケティングの知識を生かした販路開拓にも注力し、既に問い合わせや売り上げアップにつながっている。従業員のアイデアを取り入れた新商品開発にも積極的に取り組み、将来的には機能性表示食品や医薬部外品の商品化も視野に入れる。復興支援の意味を込め、能登の特産品を生かした商品展開にも意欲を見せる。
 第三者承継によって若きリーダーを迎えたダイエー食品工業。前社長の思いも乗せ、新たな時代へとこぎ出した。

企業情報

企業名 ダイエー食品工業株式会社
創業・設立 設立 1972年9月
事業内容 健康食品、だし等の加工食品、食品原料などの製造、販売

企業情報詳細の表示

関連情報

関連URL 情報誌ISICO vol.140
備考 情報誌「ISICO」vol.140より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.140


月間アクセスランキングへのリンク

月間アクセスランキング
DGnet 企業情報/バーチャル工業団地/情報誌ISICO


ViVOサイトへのリンク

活性化ファンド・チャレンジ支援ファンド商品開発ストーリー集サイトへのリンク

じわもんセレクトサイトへのリンク

DGnetサイトへのリンク