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復興目指し、地域に希望の火をともす 生産性向上や海外への販路開拓にも注力 ~(株)高澤商店

印刷ページ表示 更新日:2025年3月27日更新

フロム・ユーザーズ

高澤商店は和ろうそくの製造、販売で日本一のシェアを誇る老舗だ。能登半島地震では、国登録有形文化財の店舗の下屋根が崩れ落ちるなど大きな被害を受けたが、昨年3月に仮店舗で営業を再開。ISICOの支援を受け、生産性向上や海外市場向けの商品開発に取り組むなど、新たな挑戦を続けている​。​

仮店舗で営業再開 体験メニューが好評

高澤商店の和ろうそくの写真

 高澤商店の仮店舗は、元の店から200メートルほど離れた場所にある一本杉通りの空き店舗を活用してオープンした。地震の被害を免れた什器を運び込み、仏壇用のろうそくや華やかな絵ろうそく、菜種油を使った菜の花ろうそくなど、多彩な商品を販売する。
 「仏壇に供えるろうそくがなくなってしまった。どこかで売っていますか」。そんな電話が相次ぐようになったのは、能登半島地震の発生から2週間ほどたった頃だった。「余震が続く中で火をともすのは危険だし、仏壇にお参りする気持ちの余裕もないだろうから、お客様がろうそくを使い始めるのはもう少し先のことと考えていたが、地域の皆さんはいつもの習慣を大事に続けていた。信仰心にあつい土壌があるからこそ、私たちも商売させていただいていると改めて感じた」。同社の高澤久社長はそう話し、一日でも早く店を開けようと物件探しを急いだ。
一本杉通りにある仮店舗の店内写真。 仮店舗は元の店よりスペースが広くなったため、昨秋から新たな試みとして和ろうそくの制作体験や絵付け体験をできるようにした。幅広い客層から人気を集め、震災ボランティアも大勢参加してくれるという。「どのように和ろうそくが作られるのか、実際に体験してもらうことで知識と愛着を深めてもらえる。店の再建後も続けていきたい」と高澤社長は話す。
 元の店舗は、2027年秋頃の営業再開を目指し、今年5月から工事に取りかかる。耐震性を高めつつ、使える部材を再利用しながら、以前の姿をできるだけ復元する計画だ。

手作業中心の工場 省力化や標準化を推進

 一方、店舗とは別の場所にある工場は地震の被害が少なく、昨年1月末から製造を再開した。伝統的な製法を守り続ける中で、長年の課題となっていたのが作業の効率化だ。その解消に向け、同社ではISICOが派遣する専門家の協力を得ながら、ボトルネックとなっていた着色工程の省力化に取り組み、成果を上げている。今後は効率アップを目指し、工場内のレイアウトや道具の見直しにも着手する。
 また、作業の標準化にも取り組む。「仕事のやり方をそろえたり、職人一人一人のよいところを共有して取り入れたりすることで、生産性の向上や品質の安定につなげていきたい」(高澤社長)。職人技をマニュアルとして残し、技術の継承にも役立てる。

北米で売り上げが伸長 ヨガや瞑想時に活用

 伝統を守りながら時代の変化に対応するため、新たな販路の開拓にも力を注ぐ。和ろうそくの用途は古くから仏事が中心で、それは今も変わらないが、同社では約20年前から暮らしのさまざまなシーンに取り入れてもらおうと、百貨店や雑貨店にも販路を拡大してきた。
海外での商談風景の写真。 これと並行し、パリの展示商談会に出展したのを契機に海外市場へも進出した。和ろうそくの原料が植物由来で環境負荷が低い点、日本の伝統的な製法で作られている点、すすが少なく室内での使用に適している点を強みとしてPR。香りのするアロマキャンドルが主流の欧米市場に向け、料理の香りを邪魔しない明かりとして食卓での利用を提案した。
 ヨガや瞑想など、心を落ち着かせる際に用いるという思いがけない需要もあった。特にコロナ禍で「おうち時間」が増加した際には、売り上げが急増。現在はアメリカとカナダが主な輸出先で、同社の売上高の約10%を占めるまでに成長している。
 2023年にはISICOの成長戦略ファンドに採択され、販路拡大や新商品開発を加速させた。アメリカ西海岸で展示商談会への出展や販売店への営業活動に取り組み、受注につなげた。特にヨガや瞑想をする際の利用を見込んで開発した試作品が高く評価され、「すぐにでも仕入れたい」との声も挙がっている。

能登の特産物生かし新シリーズ展開へ

 同社では今年1月、新たな企業スローガン「心に、いつか希望の火を灯ともすもの」を発表した。
 「能登半島地震の発生により、多くの困難に直面したが、全国各地から寄せられる支援物資や温かいメッセージ、ボランティアの姿に触れるたび、一人ではないという希望を感じ、再び立ち上がる勇気が湧いてきた。私たちが作っている和ろうそくもまた、困難な状況にいる誰かの心に寄り添い、希望の火をともす存在でありたい」。高澤社長はスローガンにこめた思いをそう話す。
高澤久社長の写真 地域との結びつきをさらに強くし、和ろうそくを通して能登を感じてもらいたいと、珠洲市の職人が作った炭を混ぜ込んだろうそくを開発するなど、能登の特産物を生かしたシリーズ展開も構想する。
 創業から130年以上にわたって能登の地を照らし続ける高澤商店のともしび。そのともしびは、震災という試練を経てもなお消えることなく、人々の心に光と温かさを与えてくれている。

企業情報

企業名 株式会社 高澤商店
創業・設立 創業 1892年
事業内容 和ろうそくの製造、販売

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.140
備考 情報誌「ISICO」vol.140より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.140


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