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令和6年能登半島地震で被災しながらも、試練を乗り越え、明日への一歩を踏み出した地元企業の奮闘ぶりを紹介します。
能登半島地震で被害を受けた中小・小規模事業者の事業再開を後押しするため、穴水町が整備した仮設商店街「あなみずスマイルマルシェ」。その一角で昨年10月、営業再開にこぎつけたのが美容室「hair SAI」である。
同店はもともと、能登町出身の高秀壱さんが2003年に穴水町内でオープンした。店名は再会の「再」に由来し、何度でも足を運んでもらえる店にしたいとの思いがこもっている。起業時は不安もあったが、約20年にわたって営業を続ける中で多くのリピーターを獲得し、経営は順調に推移していた。
しかし、2024年1月1日に発生した能登半島地震で窓ガラスが割れ、壁が崩れるなど、店舗は甚大な被害を受けた。こうした被害状況を確認できたのは2日のことだ。店の状態以上に高さんが気にかけていたのが、預かっていた成人式用の振り袖のことだった。店は雨漏りしていたが、幸いにも振り袖は濡れることもなく無事で、高さんはほっと胸をなで下ろしたという。
2月中旬に水道が復旧すると、高さんは業者に依頼し、店舗内の危険な箇所に応急処置を施した後、カットやシャンプーのボランティアに取り組んだ。「避難生活が続き、ふさぎ込んでいたが、髪を切ってもらったら気持ちが晴れた」。客からの感謝の言葉に、高さん自身も勇気づけられた。「付き合いの長い方も多く、励ましの声をいただき、沈んでいた気持ちが前向きになった」と話す。あなみずスマイルマルシェへの移転後は客足も順調に回復し、店には震災前と変わらない活気が戻ってきている。
営業再開や今後計画している店の再建に向けては、ISICOが運営する「石川県よろず支援拠点」のコーディネーターから助言を受け、地元の商工会と連携し、県のなりわい再建支援補助金や小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)を活用している。美容師にとって命とも言えるはさみも震災で損傷したが、補助金を活用して一部を新調することができた。「はさみにも補助金が使えるとは思っていなかった。必要書類の準備や申請手続きなど、丁寧に教えてもらい本当に助かっている」(高さん)。
店舗再建の具体的な時期はまだ見通せない。それでも「いつかは元の場所で新しいチャレンジをしたい」と高さんはhair SAIの第2章に意欲を燃やしている。
企業名 | hair SAI |
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創業・設立 | 創業 2003年11月 |
事業内容 | 美容室の運営 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.140 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.140より抜粋 |
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掲載号 | vol.140 |