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【巻頭特集】CASE 01 デジタルとアナログを融合 現場目線取り入れ効率化 ~(株)サンエー精機

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現状維持から脱却せよ 事業を飛躍させる変革のメソッド

激動の時代を生き抜くには、変化を恐れず挑戦する勇気が必要だ。
今回の巻頭特集では、デジタルとアナログを融合させ、独自のアプローチで生産性を向上させた企業や海外へと販路を伸ばし事業を飛躍させた2社を紹介。その変革のメソッドから、現状を打ち破るヒントを探った。​

ミクロン単位の加工精度に厚い信頼

山本 伊智郎社長の写真。 サンエー精機は、工作機械に組み込まれるスピンドルやテーブルといった部品を製造する。これらは工作機械の精度を左右する重要部品であり、ミクロン単位の加工精度と多品種小ロット生産への柔軟な対応力で顧客から厚い信頼を得ている。
 同社の売り上げの約5割を占める工作機械向けのほか、射出成形機、繊維機械向けの部品も手がけ、近年では需要が拡大する半導体製造装置向け部品の受注も伸びている。
 同社を率いる山本伊智郎社長は大手工作機械メーカーに勤めた後、2013年に入社し、1年間は現場で従業員と共に汗を流しながら、自社の強みや弱みを分析した。先に述べたような優位性が競争力となる一方、仕事のやり方の中にはアナログの手法が多く残されていて効率化の妨げとなるなど、課題も散見されたことから、翌年から経営改革に乗り出した。

二次元コードを使い進捗状況や書類を管理

指示書の2次元コードを読み込んでいる様子の写真。 経営改革の一手として、2014年に山本社長は生産管理システムを導入した。導入の効果は多岐にわたっている。例えば、1,000点にも及ぶ部品の進捗管理をリアルタイムで把握できるようになったこともその一つだ。
 「取引先から進捗状況の問い合わせがあると、以前は工場内を走り回って確認するような状況だった。システム導入後は、工程ごとに作業の開始と終了の時刻を現場で入力しているので、事務所のパソコンから全製品の進捗状況をリアルタイムで確認できるようになった」と話す山本社長。入力と言っても、作業指示書の二次元コードをハンディスキャナーで読み取るだけ。現場の目線を重視し、無理せず導入できる仕組みを採用している。
 また、従来は手作業で入力していた受注データもEDI( 電子データ交換)システムを使って取り込むようにした結果、作業時間は約8割も削減され、入力ミスもなくなった。
 一方で、図面や作業指示書など、紙の方が現場で使いやすいと判断したものは、あえてデジタル化せずにそのまま残した。2021年からは、こうした書類をPDFとして保存し、企業名や品番などで検索できるようにして利便性をアップさせた。
 「図面には加工時に手書きした情報が記載されていることもあり、後で別の部品を加工する際のヒントになる場合もある。書類が検索しやすくなったので、探す手間が大幅に減った」と山本社長は話す。

従業員の経営参画へ データを毎月共有

 効率化の次のステップとして、2015年からは、生産管理システムに日々蓄積されていくデータの活用に力を入れた。
 受注状況をはじめ、材料費や外注費といった変動費、部署ごとの生産額、不具合件数など、さまざまな指標を抽出し、経営判断に役立てるほか、全社員が参加する月次方針説明会でもこうした情報を共有する。
 山本社長は「毎月同じ指標を確認するのは、人で言えば体重計に乗るのと同じ」と説明する。体重の増加に気づけば、食事を調整したり運動したりするのと同じように、例えば売り上げと変動費のバランスが悪化していれば、急ぎでない材料の購入を翌月に見送るなど、現場レベルで迅速かつ的確な判断が可能になった。
社内SNSにタブレット端末から写真や文字を投稿している様子の写真 また、2022年には現場のタブレット端末からさまざまな情報を投稿できる社内SNSを導入。現場からの改善提案やフィードバックを写真付きで気軽に投稿できるようになり、品質や効率の向上に役立っている。
 今年に入り、会社のビジョンとこれに基づく社員一人一人の成長目標を見える化した「My Wayシート」を作成。四半期ごとの面談で振り返りと方向性の確認を行うことで、会社と従業員の目線を一致させる取り組みも始まった。
 このようなデータや情報の共有、活用が、全社員の経営への参画意識の向上につながっている。

さらなる成長目指し拠点を新工場に集約

 次の大きな一手として、同社では2026年5月、現在かほく市内3カ所に分散している工場を、同市高松地区に建設中の新社屋へ集約、移転する。工場の面積は現在の約1.75倍に拡張され、1カ所にまとまることで、生産性の大幅な向上が見込まれている。これにより、今後さらに需要増が見込まれる半導体製造装置向けのスピンドルの新規受注を積極的に取り込む考えだ。
新工場の完成イメージパース また、この新工場を活用して、デジタル化による効率化や組織力の強化、そして「My Wayシート」による人材育成と、これまで積み上げてきた改革の成果を最大化することで、「2、3年後には生産能力を現在の1.5倍にまで引き上げたい」と山本社長は意欲を見せる。
 デジタルとアナログを融合させながら、データを活用して経営と人材を磨き上げる同社の取り組みは、多くの中小企業にとって実践的なヒントとなりそうだ。

企業情報

企業名 株式会社サンエー精機
創業・設立 設立 1973年3月
事業内容 工作機械部品、射出成形機部品、繊維機械部品、半導体製造装置部品などの製造

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関連URL 情報誌ISICO vol.142
備考 情報誌「ISICO」vol.142より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.142


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