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業務用市場から小売市場へ 「JFS-B規格」取得とともに実店舗も拡大 ~三幸食品(株)

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フロム・ユーザーズ

三幸食品は、かつお節や各種魚介を素材とするだしパックを主に業務用として製造販売している。従来までの業務用に加え、進出先の小売市場でブランド力を向上するため、ISICOの支援を受け、食品安全マネジメント規格「JFS-B規格」を今年4月に取得した。​​

プロ市場から高い評価も先行きに不安

三幸食品の「だしシリーズ」の写真。家庭で手軽にプロの味を楽しめると、人気。

 三幸食品が製造販売するだしパックは、かつお節やたい、のどぐろなどの魚介系はもちろん、野菜やキノコなどを使ったものなど豊富なラインアップを用意している。「どれも上質な国産天然素材だけを使用するなどしており、クオリティには自信がある」と長浩行社長は話す。
 実際、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」に選ばれた多くの宿泊施設が、同社の製品を利用するなど、マーケットからの評価も高い。
 もともと業務用専売だった同社が、小売市場に力を入れるようになったのは、業務用市場の先行きに陰りを感じているからだ。「当社の主な取引先であるホテルや旅館では、団体旅行の減少に加え、コロナ禍の影響もあって、飲食の取り扱い量が減り続けている」と、同社の置かれた状況を長社長は説明する。
 そのため、同社では2018年に七尾市の能登食祭市場に出店し、2019年にはホームページをリニューアルしてECサイトを拡充するなど、少しずつ小売部門の売り上げを伸ばしてきた。

ISICOに相談の結果規格の取得を決める

調合しただしの材料をパックに詰める製造現場の写真。 そうした中、小売部門の売り上げをさらに伸ばすためISICOに相談したところ、薦められたのが「JFS-B規格」の取得だった。「JFS規格」は2016年に農林水産省の主導で策定された日本発の食品安全マネジメント規格で、A・B Plus・B・Cと4段階がある。
 「業務用市場と同じくらい一般の消費者も安心・安全を重視するので、JFS-B規格を取得することに決めた」(長社長)。
 規格の取得に向けて、2024年6月からISICOの専門家派遣事業を活用し、長社長は「予想以上に細部にわたるアドバイスを受けた」と振り返る。
 JFS規格の構成要件には、食品衛生管理プログラム「HACCP」が含まれている。同社では認証こそ取得していなかったが、HACCPに準拠した形で工場を運用していたため、当初はそれほど細部まで指導を受けるとは思っていなかった。

記録を残し会社で管理 仕入れ先にも文書化を要請

長 浩行社長の写真。 「本来なら、古い設備を入れ替えて、動線も組み直すのが望ましかったが、ISICOからの指摘は、中小企業にとって現実的な予算と労力で対応できるよう工夫と配慮があって、ありがたかった」(長社長)。
 アドバイスの多くは、記録を取って、その記録を会社で管理するというものだった。例えば、始業前の設備の正常動作チェックは、終業時も実施するようにし、誰が確認したかまで記録に残すようにした。これまで口頭で伝えていた社員教育の内容も、すべて文書化した。
 とはいえ、ハードルがなかったわけではない。JFS規格では、トレーサビリティ(生産流通履歴)やサプライヤーの管理を求められる。例えば、仕入れ選定用のサンプルと実際に仕入れたものに差異があった場合、仕入れ先には書類での記録と保存が求められる。
 ただ、同社の仕入れ先には、家族経営の小規模事業者が多い。そのため、こうした要求に応じてくれるか、応じてくれたとしても実行できるかが懸念された。しかし、結果的にはすべての仕入れ先がJFS規格の要求事項を受け入れ、同社は2025年4月にJFS-B規格を取得した。

首都圏郊外に積極進出 東南アジア市場も見据える

 こうしたJFS-B規格の取得と並行して、同社は実店舗の拡大にも力を注いでいる。既存の七尾店、富山店、八戸店(青森県)に加え、2024年2月に黒部店と金沢百番街店をオープン。さらに、2025年にはファッションビルを展開する丸井グループ(東京都)が手がける郊外型ショッピングセンター・マルイファミリーにも出店。4月に溝口店(川崎市)、5月に海老名店(神奈川県)、6月に志木店(埼玉県)と、3カ月連続で新店舗をオープンしている。
 現在、能登半島地震の影響で観光客が減少した七尾店を除き、いずれの店舗も好調だ。長社長は「JFS-B規格が今後、小売部門の好調を下支えする存在になってほしい」と期待を寄せる。
マルイファミリー志木にオープンした「ダシの三幸志木店」の写真 その期待は海外にも広がっている。例えば、タイ向けの食品輸出では、JFS規格が衛生基準適合の証明として活用されている。台湾では、昨年から現地の食品安全マネジメント規格とJFS規格の相互承認プログラムがスタートするなど、JFS規格の国際的な認知度は上昇傾向にある。
 「JFS規格は東南アジアに強く、国際規格ではないJFS-B規格にも一定の信用力があると聞いている。具体的な取り組みを進めているわけではないが、将来的には東南アジアへの進出を目指しており、JFS-B規格取得をそのとっかかりにしたい」と話す長社長。三幸食品の新たな挑戦が始まろうとしている。

企業情報

企業名 三幸食品株式会社
創業・設立 創業 1957年5月
事業内容 だしパック、高級珍味、焼物・煮物・揚物・蒸物の半製品の製造販売

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.142
備考 情報誌「ISICO」vol.142より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.142


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