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【巻頭特集】CASE 01 生産と産業観光を融合した複合施設 多岐にわたるプラスの効果 ~カジグループ|カジナイロン(株)/カジレーネ(株)/カジニット(株)/(株)梶製作所

印刷ページ表示 更新日:2025年10月1日更新

ブランド戦略に磨きをかけ、企業の成長の推進力に

企業の成長において重要な役割を果たすブランド戦略。自社の技術や製品に込めた思い、ものづくりの背景にある物語を顧客と直接分かち合うことができれば、信頼関係を強くし、競合との差別化を図ることが可能だ。ブランドの価値が高まれば、価格競争から脱却でき、利益率の向上にもつながる。魅力的なブランドイメージは優秀な人材の獲得にも寄与する。今回の巻頭特集ではブランド戦略の強化によって、さまざまな成果を挙げている県内企業2社を紹介する。​

ショップやカフェ、体験も 5カ月で3万5,000人が来場

庭園の写真。、樹 齢1,000年を超えるオリー ブの木などが植えられている。高品質な製品の特 徴を学べる見学ルートの写真。北陸各地の逸品を購入できるショップの写真。カジ グループが展開する2ブラ ンドの製品のショップもある。

 繊維製造のカジグループは今年4月、かほく市大崎に「KAJI FACTORY PARK(カジファクトリーパーク)」を開設した。ここは工場機能と産業観光機能を併せ持つ複合施設だ。敷地面積約3万3,000平方メートル、延べ床面積約1万1,200平方メートルの施設には、160台の織機が24時間、年間343日稼働する工場をはじめ、自社ブランド商品初のフラッグシップショップ、北陸各地の特産品を扱うセレクトショップ、地元食材を使ったカフェが入る。館内は一般客が工場見学をできるように整備されており、同社のテキスタイルでアートなどを作るワークショップも開催する。屋外には庭園や遊具も整備されている。
 開設から5カ月弱で、KAJI FACTORY PARKにはかほく市の人口と同規模の約3万5,000人が来場。単なる生産拠点ではなく、カジグループの将来を見据えてブランド力を強化し、企業価値を高める役割を果たしている。

コロナ禍経て計画見直し 本質的な自立目指す

 KAJI FACTORY PARKの建設計画が持ち上がったのは2018年にさかのぼる。当初は既存の工場だけで対応できない受注増に対応するため、生産能力を増強することを目的としていた。また、欧米の一流ブランドが取引先を選定する際、環境・人権対応を重視する傾向を踏まえ、より環境に配慮し、働く人に優しい工場を建設したいとの考えもあった。
 この計画は、新型コロナの流行により受注が激減したことから一旦凍結されたが、2021年にアウトドア市場が急回復したのを機に再始動。この際、産業観光の要素を盛り込むよう、計画を見直した。
梶政隆社長の写真 その理由について、梶政隆社長は次のように話す。
 「コロナ禍の苦境を通じて、商社や問屋に依存するのではなく直販比率を上げ、本質的な自立を果たさなければ生き残れないとの思いを強くした。そのためには、私たちがどのような土地で、どのような情熱を持ち、どのような仲間たちと製品を生み出しているのかを、取引先や消費者に直接伝える必要があり、その手段が産業観光だった」。
 その判断は、カジグループが製造する高付加価値のテキスタイルの価値を市場に適正に評価してもらい、戦略的な価格設定によって収益性を高め、ひいては従業員の待遇改善へとつなげるための、極めて実践的な経営戦略と言えた。

生産能力、平均単価がアップ 採用や従業員の意識にも変化

 KAJI FACTORY PARKの開業以降、その効果は着実に表れている。生産能力は1.6倍にアップ。太陽光発電の活用や水処理の適正化など、国際的なリサイクル基準をクリアする「GRS認証」の取得や地域社会との共生を象徴する庭園などによって、特に海外の取引先が企業の持続可能性を評価し、指名買いが増加した。社会的な値上げムードも追い風となり、テキスタイルの平均単価も上昇している。
 自社のテキスタイルの魅力を、最終製品を通して伝えたいとの思いから展開しているトラベルギアブランド「TO&FRO(トゥー&フロー)」と超合理的セットアップブランド「K-3B(ケースリービー)」の直営店は、従来は東京のみだったが、地元客との新たな接点を生み出し、売り上げを伸ばしている。
「KAJI FACTORY PARK」の外観写真。 また、オープンイノベーションのハブとしての役割も果たしており、繊維業界以外との共同開発も始まっている。梶社長は「お互いが持つ匠の技術を掛け合わせると面白いものができる」と今後の展開に期待を寄せる。
 採用面でも成果が出ている。意欲的な若者の応募が増え、その効果はグループ全体に波及している。
 従業員の意識も変わった。見られる環境が、あいさつや身だしなみ、整理整頓といった面で、自発的な改善につながっている。

繊維業界の活性化へ イベントや連携も続々

「KAJIフェ ス」での世界一薄い生地を使ったたこ作り体験の様子の写真。 カジグループでは「日本の繊維を元気にする」とのミッションを掲げるだけに、産業全体のイメージアップにつながるような取り組みにもチャレンジしている。
 その一つが今年5月と8月に開催した「KAJIフェス」だ。世界一薄い生地を使ったたこ作り体験のほか、繊維メーカーによるマーケット、飲食ブースなどが出展し、多くの来場者でにぎわった。
 デニム産地である岡山県やウール産地である愛知県尾州地域など、他産地の業者と連携したファッションショーや展示会の企画も進行中だ。
 単なるイメージアップにとどまらず、生産機能の強化や平均単価の向上、若手人材の獲得、そして地域社会や他産地との連携など、多岐にわたってプラスの効果をもたらしているKAJI FACTORY PARK。その開業を弾みとして、カジグループのブランド戦略は新たなステージにステップアップし、企業の未来を切り拓く原動力となっている。

企業情報

企業名 カジグループ
創業・設立 創業 1934年4月
事業内容 糸加工、織物・ニット生地製造、自社ブランド製品の製造・販売、繊維機械の製造

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関連URL 情報誌ISICO vol.143
備考 情報誌「ISICO」vol.143より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.143


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