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震災による操業停止を機に5S活動を推進 持続可能な酒造りに向け、職場環境を整備 ~数馬酒造(株)

印刷ページ表示 更新日:2025年10月1日更新

フロム・ユーザーズ

数馬酒造は、創業から156年を数える老舗酒蔵だ。能登半島地震で一時、操業はストップしたが、これを機にISICOの専門家派遣制度を活用して5S活動に取り組み、業務の効率化や社員の意識改革につなげている。以前から働きやすい職場環境づくりにも力を入れており、持続可能な酒造りに向け、着々と歩みを進めている。​

損傷の激しい4棟を解体 2年後の完全復旧目指す

 昨年1月の能登半島地震で、数馬酒造は大きな被害を受けた。酒造りに関わる6棟の建物のうち、4棟が大きなダメージを受け、建て替えが必要な状況だ。残る2棟も津波によって汚泥が流れ込むなどの被害を受けた。
 当時、仕込み中だった酒はタンクローリーで移送して瓶詰め。断水時は準備していた酒米が無駄にならないよう、県内外の蔵元に醸造を委託した。
 昨年4月から自社での仕込みを再開。例年とは違う温かな時期でも醸造できるよう、冷却設備などを導入した。
 解体を余儀なくされた蔵にすみ着いていた微生物を、石川県立大学や石川県工業試験場と協力して採取するなど、目に見えない資産の継承にも取り組んでいる。工場全体の復旧は2年後をめどに完了する予定だ。

専門家からの指摘を一つ一つ改善

店舗の写真。以前から5Sが行き届いており、専門家からも高評価を得た。 震災によって生産活動が停止したことは、数馬酒造にとって事業を見直す機会にもなった。「普段は生産・出荷を維持しながらの改善活動となるため、どうしても部分的な最適化に留まりがちだったが、事業が止まったことで、全体最適を見据えた改革に取り組むことが可能となった」。こう話すのは数馬嘉一郎社長で、その一つとして注力したのが「5S活動」だった。
 5S活動の推進にあたっては、ISICOの専門家派遣制度を活用し、アドバイスを得るようにした。昨年9月に全社員で5Sの基礎を学んだ後、専門家による月1回の指導を受けている。事務所や仕込み蔵と呼ばれる建物を対象に、エリアごとに専門家からの指摘事項を付箋に書き出して貼り、デスクの引き出しの中の写真。文具を置く位置を細かに指定している。改善されれば剥がしていくという手法で、一つ一つ着実に課題をクリアしていった。
 例えば、事業スペース内のすべての物について、置く場所や方向、量を定め、表示・標識を取り付けたことも取り組みの一つだ。整理整頓が行き届くと物を探す時間が減り、生産性の向上にもつながった。

活動の定着、推進へ 部門ごとにミーティング

CAPミーティングの様子の写真

 5S活動が進むに伴い、社員の意識にも変化が表れた。「これまでは部分的にきれいにする意識はあったものの、それが全体の中で最適かどうかを考える視点や、将来にわたって使いやすいかという時間軸の視点が養われた」と醸造責任者は話す。社員自らが作業工程を見直して改善活動に充てる時間を確保するなど、組織全体で5Sに取り組む機運が高まっている。
 現在は5S活動を推進するため、部門ごとの「CAP(キャップ)ミーティング」を週に1回、開催している。は数馬嘉一郎社長の写真これはPDCAサイクルのうち、「Check(評価)」「Action(改善)」「Plan(計画)」について話し合う場で、5S活動を定着、継続するための重要な時間となっている。
 「建物を新しくするだけでなく、5Sや衛生管理など、中身で差別化できるようにこれからも注力していきたい」と数馬社長は今後の取り組みに意欲を見せる。

若者が魅力を感じる 働きやすい環境を

 数馬酒造では持続可能な経営のために、働きやすい環境づくりにも力を入れている。
 杜氏や蔵人は季節雇用ではなく、社員として通年雇用。工程を見直したり、新たな機械を導入したりして、早朝や夜間の作業もなくした。一昨年からは醸造スタッフも土日休みの完全週休2日制に移行した。
 酒造りのイメージを一新する働き方を実現することで、若手や女性の醸造スタッフも増えている。2024年には若者の採用・育成に積極的で雇用管理の状況などが優良な中小企業として、厚生労働省から「ユースエール認定企業」に認定された。奥能登地区では初の認定だ。
竹葉 能登大吟、竹葉 能登純米、竹葉 能登の梅酒の写真 ユニークなところでは、平均年齢31歳と若い醸造スタッフに、柔軟な発想で酒造りをしてもらおうと、タンク1本分を自由に醸造させる「責任醸造制度」がある。この制度から商品化される酒も多く、「竹葉 瓶内後発酵」というスパークリング酒は2023年に世界的な酒類品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」で最高位となるトロフィーを受賞した。
 震災という逆境を跳ね返して仕事を見つめ直し、未来に向けてより強固な土台を築き上げるための、またとない機会へと転換した数馬酒造。5S活動によって磨かれた現場力と、人が育つ環境づくり。その両輪が能登の地で、酒造りの新たな未来を切り拓こうとしている。

企業情報

企業名 数馬酒造 株式会社
創業・設立 創業 1869年
事業内容 清酒の製造、販売

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.143
備考 情報誌「ISICO」vol.143より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.143


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