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看板商品のリブランドで自社の販売チャンネルを開拓 ~ケンコー食品(株)

印刷ページ表示 更新日:2025年12月2日更新

フロム・ユーザーズ

ケンコー食品は、大豆を加工した冷凍食品を製造し、主にOEMとして供給している。従来までのOEM専売から脱却するため、ISICOの支援を受けて主力商品のリブランディングを進め、自社の販売網を新たに確立した。​​​

独自の強み生かし業界で定位置を確保

餅いなりの写真。学校給食で愛された味を家庭でも味わえるよう改良した。 ケンコー食品が製造するのは、総菜いなりや高野豆腐、豆腐のしんじょなど、大豆を原料にした総菜の業務用冷凍食品で、自社の販売網を持たずOEM受託に特化している。
 主な流通先は、学校給食や企業の社員食堂、病院、介護施設、コンビニ、外食チェーンなどで、その流通は大手から中小まで数十の冷凍食品メーカーが担っている。
 多くの冷凍食品メーカーが、同社にOEM生産を委託する理由は、同社の看板商品でもある総菜いなりにある。餅いなりや肉いなりなど、いなりの中に具を詰める巾着は工場での大量生産が難しく、それを可能にしている同社が製造を一手に引き受けているのだ。さらに、独自の手法で実現した冷めても柔らかいままの餅いなりの存在も、同社へ依頼が集中する理由になっている。

コロナ禍で見えた新たな課題

 こうした強みを背景に、同社は創業以来、順調に業績を伸ばしてきた。しかし、2020年、新型コロナの大流行によって成長曲線は途切れてしまう。
 コロナの蔓延によって、同社の主要な取引先である各業界で商品の消費量が大きく減少した。学校は休校になり、飲食店は営業を自粛し、リモートワークの奨励によって企業の社員食堂も休業を余儀なくされた。コンビニに関しては、巣ごもり需要という追い風も一部にあったが、都市部のオフィス街に立地する店舗が多く、結果として販売は大きく落ち込んだ。
 コロナによる需要の激減を受け、同社への注文も急降下した。工場の操業を停止し、従業員を自宅待機させる時期が続き、20年の売り上げは前年比で3割も落ちた。
 こうした状況を、本城社長は「冷凍食品業界はコロナで明暗が分かれた。巣ごもり需要を捉えた会社もあったが、当社には売り先も売る商品もなかった。そのことに悔しさもあった」と話し、苦しい状況を「どうにか打破したいと、ISICOへ相談に行った」と振り返る。

市販向けに商品改良 発売前から手応え

 こうしてISICOの事業計画策定支援を受け、2022年に同社が新たに打ち出した経営方針が、OEM専売を脱却するために既存商品をリブランドし、市販化することだった。具体的には、看板商品である餅いなりを市販向けに改良することである。
 そのため、ISICOから派遣されたブランディングの専門家とともに、「美味しい給食体験」+「簡単調理の利便性」というコンセプトを立てた。従来は業務用のため味付けはせず、スチームコンベクションで大量に調理することを前提としていた。新コンセプトに基づき、大野醤油を用いて給食風の甘口調味液を氷膜にしていなりに付着させ、電子レンジで1個ずつ調理できるようにした。
 加えて、ISICOからデザイナーの紹介を受け、商品ロゴとパッケージも新たに作成した。
クラウドファンディングサイトMakuakeでの同社のプロジェクトページの画像 こうしてリニューアルした「学校給食の味付け餅いなり」は、発売前から注目を集めることになる。23年9月の大阪インターナショナル・ギフト・ショーに出品したところ、来場者の投票を基に審査員が選考する審査員特別賞を受賞し、全国紙や全国放送で紹介されたのだ。
 この波に乗って、23年12月にクラウドファンディングサイトMakuakeで注文を募ると、1カ月半で目標の10万円に対し、140万円余りもの受注を集めた。
スーパーマーケット・トレードショーでの同社の出展プースの写真 「クラファンは、お客様の反応をダイレクトに知ることができ、評価の声が従業員のモチベーションにもなった」と本城社長は話す。
 とりわけ、手応えを感じたのが、25年2月のスーパーマーケット・トレードショーへの出展だった。「4日間でバイヤー約800人に試食してもらいヒアリングしたが、当社の商品を食べたことがある人は1人もいなかった。ブルー・オーシャンを感じた」(本城社長)。 ​

市販向けは高級市場から 海外展開にも着手する

 本城社長が感じ取ったように、同社の販路開拓は大きなハードルに突き当たることなく順調に進んでいく。さらに、ラグジュアリーマーケットでの反応も良かった。
 今年4月に三越伊勢丹の会員向け定期宅配サービスでの取り扱いが始まると、11月には高島屋と石川県のアンテナショップでも販売を開始した。さらに、業務用も、ディズニーランドの和食レストランや、ISICOのマッチングで全日空のプレミアムクラスでの採用が決まった。
 商談は他にも進行中で、販路拡大の視界は良好だ。とはいえ、自社販売の割合はまだ売り上げの2~3%に過ぎず、本城社長は「10%、20%と育てて事業の柱にしたい」と目標を掲げる。
本城宏樹社長の写真 そして、もうひとつ目標に設定しているのが海外市場の開拓だ。こちらは、ジェトロ主催の国内商談会に参加し、すでに好感触を得ている。「以前から、和総菜を世界に知ってほしいと思っていた。2026年中に輸出までこぎ着けたい」と本城社長は意欲を見せる。コロナ禍を追い風にすることはできなかったが、同社は今、確実に上昇気流を捉えている。

 

企業情報

企業名 ケンコー食品 株式会社
創業・設立 設立 1980年10月
事業内容 大豆調理冷凍食品の製造、販売

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.144
備考 情報誌「ISICO」vol.144より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.144


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