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軟弱地盤の改良工事などを手掛ける田中建設では、これまで工事に用いる固化材を大手メーカーから仕入れていたが、内製化に踏み切った。さらに、産業廃棄物を主原料にした固化材の開発に成功しただけでなく、新たな環境保全型のビジネスモデルの確立にも取り組んでいる。

固化材とは、土に添加する安定材のことで、軟弱地盤の改良や土舗装に用いられるほか、河川ヘドロ、泥土、建設発生土の資源化にも使われている。
田中建設が開発した固化材は、環境にもコストにも配慮した点が大きな特徴だ。その秘密は、建物を解体した際に廃棄される石こうボードと水道水の浄水過程で生じる汚泥を主原料にしている点にある。
つまり、同社の固化材は、廃棄物の減量に貢献しているだけでなく、本来、処分費用のかかる産業廃棄物を活用しているため、原料費がほとんどかかっていない。従って、その分だけ割安に、大手メーカーの約65%の価格で提供している。
さらに、既存の固化材はほとんどがアルカリ性であるのに対し、同社製は中性である。そのため、植栽や魚類の生育への影響は比較的に小さいとされ、強度も従来品と同等以上の性能を有することが確認されている。
同社では、用途に合わせた性質の異なる3種の固化材を開発しており、粘土質に合うTN-1、砂質土に適したTN-2、ヘドロに用いるTN-3を展開する。いずれも、主原料は廃石こうボードと浄水汚泥だが、配合率と他に加える材料がそれぞれ異なる。ちなみに、売れ筋はTN-1で、全体の3分の2近くを占めている。
「固化材の自社開発に挑んだのには大小2つの理由がある。小さな理由から言えば、内製化で出費を抑えたかったから」と田中均社長は少し笑って説明する。
一方、大きな理由の説明には熱が入る。それは、「廃棄される石こうボードがこれから飛躍的に増大し続けるのが確実な中、新たな再資源化の道を作る」ことにあった。
1970年代から住宅などで利用が拡大した石こうボードは、その廃棄量を増やし続けている。しかし、そのまま埋め立てると、石こうに含まれる重金属のフッ素が溶け出すことによる環境への影響も懸念されているため、管理型最終処分場で処分する必要がある。
国立環境研究所によると、2016年時点で、廃石こうボードの72%が再利用やセメントの原料になるなど再資源化されている。これに対して残り28%、約34万トンは最終処分場で処分されている。さらに、将来的に処分量が大幅に増加するとの試算も示されている。
こうした背景から、廃石こうボードの「新しい再資源化の選択肢が必要」と考えた田中社長は、かねてより環境分野で交流のあった金沢工業大学の土佐光司教授、石川工業高等専門学校の重松宏明教授に声をかけ、2007年に廃石こうボードの固化材への応用の研究に着手した。
石こうボードを固化材の原料にするにあたってポイントになるのが、フッ素の溶出をいかに抑えるかだった。このため、不溶化材にもカキ殻やフライアッシュ、高炉スラグなど、さまざまな廃棄物利用を念頭に素材テストを行った。
そうしたなか、1年ほど掛かってたどり着いたのが、手取川水道事務所から入手した浄水汚泥だった。浄水汚泥を熱処理すると酸化アルミニウムが生成され、これを配合することでフッ素を不溶化できることを突き止めたのだ。
ただ、不溶化のハードルは想定より早く越えられたが、固化材に適した強度の実現には時間を要し、配合率の試行錯誤に7~8年もかかった。
ちなみに、同社は固化材の製造技術で特許を取得している。申請にあたっては、ISICOの専門家派遣事業を活用し、知的財産の専門家から技術内容の整理および出願戦略の構築までのサポートを受けた。
製造手法の確立後、各種環境テストを経て、実際に石川県建設発生土リサイクル事業協同組合を通じて県内事業者に販売開始したのは2019年のことだった。
こうして、製造を開始した同社の固化材は、地盤改良や能登の復旧復興など県内で広く用いられ、製造から販売経路までのエコシステムを構築している。しかし、同社が目指すのは、新商品の販売にとどまらない。
それは、固化材を軸にした新たな環境保全ビジネスモデルの全国展開にある。同社が固化材製造プラントの設計と建設を請け負って、事業の立ち上げから運営まで支援し、固化材の原料と販売先を全国建設発生土リサイクル協会(JASRA)が仲介する、スケール感のあるビジネスモデルである。
このビジネスモデルにより2025年10月、同社は一般社団法人産業環境管理協会が主催する「第51回資源循環技術・システム表彰」で産業環境管理協会会長賞を受賞。さらに、いしかわエコデザイン賞2025の金賞も受賞している。
すでに複数の事業者と商談が進んでおり、2026年春には長崎で第1号が稼働する予定だ。こうして新たな一歩を踏み出した同社の新事業について、田中社長は「災害復旧への迅速な対応のためにも、地方整備局計10エリアごとに少なくとも1つ、最終的には全都道府県に導入したい」と、高い目標を掲げている。
| 企業名 | 株式会社 田中建設 |
|---|---|
| 創業・設立 | 設立 1994年3月 |
| 事業内容 | 建設発生土リサイクル、固化材の製造・販売 |
| 関連URL | 情報誌ISICO vol.146 |
|---|---|
| 備考 | 情報誌「ISICO」vol.146より抜粋 |
| 添付ファイル | |
| 掲載号 | vol.146 |