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令和6年能登半島地震で被災しながらも、試練を乗り越え、明日への一歩を踏み出した地元企業の奮闘ぶりを紹介します。

西脇水産の原点は、輪島の朝市にある。創業者の西脇義彦さんは、能美市で資材商社を営んでいたが、仕事で訪れた輪島で行商人「とめばあちゃん」の干物のおいしさと出会い、「この味を広めたい」と水産加工業の道へと踏み出した。現在は娘の美保さんが社長を務め、輪島の工場を拠点に、とめばあちゃん直伝の味を受け継いでいる。
看板商品は、金沢・大野の醤油を使った「赤魚の醤油漬け」だ。また、一夜干しを厳選して詰め込んだセット「わじまの朝」は、全国の百貨店やギフト市場で高い評価を得てきた。
そんな西脇水産を、能登半島地震が襲った。被災後、輪島の工場に足を運んだ美保さんは、惨状に言葉を失った。「屋根が落ち、床は割れ、固定していた大型の機械も壁を突き破るように動いて壊れていた。ショックで涙も出なかった」と振り返る。さらに、震源地から130キロメートル離れた能美市の自宅も、深刻な液状化の影響で住めなくなった。追い打ちをかけたのが、震災から約2カ月後の義彦さんの急逝だった。美保さんは一時、廃業を真剣に考えた。
再建への思いを呼び覚ましたのは、被災で住まいや家族を失った従業員の言葉だった。「社長と話せる時間が唯一の楽しみ」と涙ながらに語る様子に、心を打たれた。
工場再建の資金を確保するため、県のなりわい再建支援補助金の申請に着手した。書類の作成は不慣れだったが、「県の担当者やISICOの相談員が丁寧に教えてくれて、なんとか申請にこぎ着けた」と美保さん。そして同年11月、工場は完成し、再稼働を果たした。「休憩所で、従業員が笑顔で食事をしている姿を見たとき、建て直して本当によかったと実感した」と語る。
社員は震災前の半数に減った。それでも美保さんは先頭に立って、全国各地の商談会に足を運び、積極的にPRを続けてきた。努力が実を結び、売り上げも上向きだ。
輪島市内のレストランで開いた今年の新年会は、決起集会の意味を込めた。普段は作業着姿の従業員がフォーマルウェアで集い、成長を誓い合った。「補助金で工場を再建させていただいた以上、しっかりと利益を上げ、社会に恩返ししたい。10年後、また皆と笑顔で乾杯できるように」。そう話す美保さんの目は、力強く輝いている。
| 企業名 | 株式会社 西脇水産 |
|---|---|
| 創業・設立 | 設立 1985年 |
| 事業内容 | 干物の製造・販売 |
| 関連URL | 情報誌ISICO vol.146 |
|---|---|
| 備考 | 情報誌「ISICO」vol.146より抜粋 |
| 添付ファイル | |
| 掲載号 | vol.146 |