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【巻頭特集】CASE01.グルテンフリー醤油をてこにアメリカ市場の販路拡大へ ~直源醤油(株)

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持続的成長へ。独自の強みを生かし、新たな市場へ挑む

国内市場が成熟し、競争が激化する中、企業の持続的成長の鍵は自社ならではの価値を磨き上げることにある。慣れ親しんだ既存の枠組みにとどまるのではなく、商機の大きい舞台へ打って出る決断は、企業に新たな風を吹き込む。今回の特集では、培った技術やノウハウを現代のニーズに合わせて進化させ、未知の領域を切り開く県内企業2社の取り組みを紹介する。​

直源醤油が海 外に輸出する製品の写真。

需要減に危機感 海外展開に活路

シラ国際外食産業 見本市での商談風景写真。 醤油の名産地として知られる金沢市大野で200年以上の歴史を紡いできた直源醤油の製品が今、世界の食卓に進出し始めている。かつては北陸3県の市場に根ざしていた同社だが、現在はアメリカやフランス、ベルギー、アジア諸国など、世界16カ国へと販路を拡大。輸出額は同社の売り上げの5%弱を占めるまでになっている。
 この背景には、直江潤一郎社長の強い危機感があった。少子高齢化や食の洋風化に加え、減塩を好む健康志向が進む中、「国内市場で、これ以上醤油の需要が増えることはない」と判断。醤油ベースのドレッシングなどを開発し、製品ラインアップの多角化を図る一方で、活路を海外市場に求めた。
 本格的な展開は2012年、ISICOの活性化ファンド事業の採択を受け、メード・イン・ジャパンの人気が高い中国への輸出を開始したことから始まった。14年からは県が主催した輸出商談会を足がかりにアメリカのレストランにも製品を納めるようになっていった。
 15年の北陸新幹線金沢開業もこの動きに弾みを付けた。新幹線開業は観光客を取り込むチャンスであると同時に、大手メーカーが北陸市場へ流入する脅威にもなる。地元を守るためにも、外へ打って出る必要があると考えた直江社長は、開業当日にニューヨークを視察。日本食ブームの熱気と、現地シェフが抱く醤油への高い関心を肌で感じ、グローバル展開への確信を深めた。

国際認証が支える品質の信頼性

 海外展開を加速させる上で不可欠だったのが、国際的な衛生管理基準への適合である。
 大野地区では、醤油メーカー約20社が出資して大野醤油醸造協業組合を組織している。製品のベースとなる生醤油は同組合の工場で一括して造り、その後の味付けや加熱処理を各メーカーが個別に行うことで、品質の安定と個性を両立させている。同組合の工場では2018年に国際的な食品安全規格であるJFS-C認証を取得。2020年には直源醤油の自社工場もISO22000を取得することで、海外のバイヤーや流通業者が求める厳しい取引条件をクリアした。
直江社長と直源醤油のパートナー のトッド・マーチン氏の写真 また、同社では現地のニーズに合わせるローカライズにも柔軟に対応している。例えば、ユズの香りが豊かな醤油はフランスで絶大な人気を誇る。「CRYSTALLIZED SHOYU(結晶化させた醤油)」と名付けた粉末醤油は、ステーキやサラダに彩りと旨みを加えるスパイスとしてアメリカでヒットしている。
 このほか、アメリカではコロラド州デンバーのパートナー企業であるフレグラント・ハーバー社が考案したパッケージデザインの製品を立ち上げたり、現地の規制に合わせた成分表示を徹底するなど、現地パートナーと意見を交わしながら、メインストリームでの販路拡大を目指している。

小麦の代わりに有機玄米を活用

ものづくり補助金を活用して導入し た充てん機の写真。 さらなる市場拡大の鍵となったのが、欧米で高まる健康ニーズへの対応だ。
 欧米では、小麦に含まれるタンパク質で腸に炎症が起きるセリアック病患者だけでなく、健康や美容を目的に、グルテンフリー製品を選ぶことが一般的になっている。
 しかし、伝統的な醤油は大豆と小麦、塩を主原料とするため、こうした消費者からは敬遠されがちだった。小麦は醤油の芳醇な香りを形成し、アルコール発酵を助ける重要な役割を担う。その小麦を使わずに醤油を造ることは技術的な障壁が高かったが、大野醤油醸造協業組合では小麦の代わりに有機玄米を用いる独自手法により、グルテンフリー醤油の開発に成功。直源醤油でもこれを活用して製品ラインアップを拡充し、2025年7月から輸出を開始した。
 この新たな製品開発と販路開拓を支えたのが、ISICOの成長戦略ファンド事業である。公的な補助金による後押しが、老舗企業による新たなチャレンジを強力にバックアップした。

輸出倍増に向け業務用を拡大へ

 直源醤油の挑戦は、まだ通過点に過ぎない。同社は2030年までに輸出による売り上げを6,000万円、全体の10%にまで引き上げるという目標を掲げている。
 現在は一般消費者向けの小売用が中心だが、今後は加工食品メーカーや高級レストラン向けの業務用にも注力し、さらなるスケールアップを目指す考えだ。特に購買力の高いアメリカ市場を最重要拠点と位置づけ、さらなる攻勢をかける。
直江潤一郎社長の写真。 大野醤油の伝統と地域トップシェアの実績を武器にグローバル市場で成果を上げ、その果実を地元へ還元する。この循環こそが、老舗が次の100年を歩むための新たな礎となるに違いない。
 ISICOの支援もうまく活用しながら、同社は今、世界の食文化と融合しながら、日本の伝統的な調味料の新たな歴史を刻み始めている。

企業情報

企業名 直源醤油株式会社 
創業・設立 創業 1825年8月
事業内容 醤油、つゆ、たれ、ドレッシング等の製造販売

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.147
備考 情報誌「ISICO」vol.147より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.147


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