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国内市場の変化や成熟により、単一の事業や取引先に依存する経営では持続的な成長は描きにくい。企業に新たな成長の芽をもたらしてくれるのは、長年培ってきた技術やノウハウをどう生かすかを見極め、新たな分野へ果敢に飛び込む決断だ。今回の特集では、主力事業の先細りに危機感を抱き、蓄積した技術力を武器に新市場を切り開いて、着実に成果を上げている県内2社の挑戦を紹介する。
溶かした金属を金型に高圧で注入し、高精度な部品をスピーディーに成形するダイカスト鋳造。本来この技術は大量生産を得意とするが、太陽キャストでは独自の特許技術「カセットシステム」による多品種小ロット生産を強みに、長年、国内大手電機メーカー向けの業務用映像機器部品を主力事業としてきた。
しかし市場の先細りを見越し、中小企業庁の事業再構築補助金を活用して医療・半導体分野へと大胆に舵を切った結果、新分野は着実に育ち、同社の成長を支える柱へと成長を遂げつつある。ISICOの継続的な伴走支援も、この挑戦を後押しした。

太陽キャストが開発したカセットシステムとは、金型のベースとなる部分を共通化し、「キャビティ」と呼ばれるアルミを流し込む空洞部だけを、鋳造する製品に応じて取り替える仕組みだ。金型全体を作り直す必要がないため金型代を最大50%低減でき、通常は量産向きとされるダイカスト工法でありながら、50個規模の小ロット生産にも対応できる。
設立以来、同社の売り上げの半分近くを占めていたのが、国内大手電機メーカー向けの業務用カメラやプロジェクター部品だった。1台のカメラに40点近いダイカスト部品が使われることもあり、新製品が出るたびに同社へ発注が寄せられていたという。
しかし中国製の低価格品の台頭やカメラの小型・簡易化が進み、市場が徐々に縮小した結果、この分野での売り上げは、今では10分の1にまで減少。市場の先細りを早期に察知した城岡正志社長は、危機感を強めると同時に、新たな成長分野への「攻めの事業転換」を決断した。

危機感を強めた同社が活路を見いだしたのが、透析機器や血液分析装置といった医療機器、半導体製造装置だった。
これらの分野では従来、切削加工やロストワックス、砂型鋳造などで製造された部品を多く使用していたが、太陽キャストでは営業を担う親会社の太陽パーツ(大阪府)と連携し、より短納期で安価なダイカストへの工法転換を積極的に提案。潜在ニーズの掘り起こしに成功した。
新分野開拓を加速させたのが、2021年度の事業再構築補助金の活用である。医療・半導体分野の顧客が求める高い寸法精度に応えるため、キャビティを削るマシニングセンタやフライス盤、部品の脱脂・洗浄を行う洗浄機などを新たに導入し、加工精度をミクロン単位で管理できる体制を整えた。従来は老朽化したフライス盤に頼っていたが、更新後は金型そのものの精度が向上し、後工程での負担も軽減された。
申請にあたってはISICOが支援した。城岡社長は「単に設備を入れるのではなく、自社がどのような課題を抱え、いかに強みを生かして新分野へ挑み、地域経済に貢献していくのかという一貫したストーリーを構築するなど、客観的な視点で伝わる申請書へとブラッシュアップしてもらったおかげで、採択を勝ち取ることができた」と振り返る。
旺盛な需要を背景に、今期の売上高は補助金の申請時に比べて約35%もアップする見込みで、当初の事業計画を大きく上回っている。医療・半導体分野は、一度採用された生産工程を安易に変更しにくいという特性があり、いったん取引が始まれば長期的な関係を築きやすいことも同社にとって追い風となっている。
医療機器と半導体関連の売り上げは、合計で同社全体の約半分を占めるまでに成長し、中でも需要拡大が続く半導体分野は今後さらに比率を高めていく方針だ。
一方で受注増に加工能力が追い付かない状況も生まれており、富山、長野、奈良などの協力工場との連携を強化しながら生産体制の拡大を図る。
国内外の同業他社が、自動車部品市場の縮小を背景に医療・半導体分野へ参入し始めるなど、競争も激しさを増しているが、同社はカセットシステムによるコスト優位性を武器に競争力を維持する構えだ。
「半導体関連の製造装置メーカーはまだまだある。そこをしっかり取りに行きたい」と意欲を見せる城岡社長。大手メーカー依存からの脱却という決断により、同社はより強靭な企業へと生まれ変わりつつある。
| 企業名 | 太陽キャスト株式会社 |
|---|---|
| 創業・設立 | 設立 2010年5月 |
| 事業内容 | アルミ合金ダイカスト、製品・金型の製造 |
| 関連URL | 情報誌ISICO vol.149 |
|---|---|
| 備考 | 情報誌「ISICO」vol.149より抜粋 |
| 添付ファイル | |
| 掲載号 | vol.149 |