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しっとり甘い中に、ほんのり酒粕香る 上品な大人のフィナンシェ
<令和元年度いしかわ中小企業チャレンジ支援ファンド採択事業>
◇事業名
ひゃくまん穀米粉と能登の酒粕を使用した和の味フィナンシェ開発事業
◇商品名
金沢ひゃくまん穀フィナンシェ
黄色い建物にブルーのラクダの看板で、石川県民にお馴染みのコーヒーショップ「キャラバンサライ」。石川県のブランド米である「ひゃくまん穀」の米粉と、能登の地酒で原料に県産米「百万石乃白」を使った松波酒造の大江山のふな搾り酒粕を生地に合わせ、アーモンド風味とコーヒー風味からなる新商品「金沢ひゃくまん穀フィナンシェ」を開発。二つの地域ブランドを活用した新商品開発が評価され、令和元年度いしかわ中小企業チャレンジ支援ファンドの認定を受ける。 商品開発のストーリーを菅健 同社武蔵店長に伺った。
◇開発の経緯
同社では、能登の海洋深層水を使ったアイスコーヒー、加賀紅茶を使ったブランデーケーキを開発するなど、地元の地域ブランドを活用した商品開発に取り組んできている。今回その第三弾として、石川県産米のひゃくまん穀の米粉を使って何か作れないかと思い立つ。とはいえ、小麦粉の代わりに米粉を使ってフィナンシェを作っただけではアピール力が弱いことから、以前、海洋深層水の勉強会で能登の松波酒造と縁があり、機会があったら一緒に商品開発をやりましょうと話していたことを思い出す。よくよく考えると、日本酒の原料はお米であり、米粉のフィナンシェの中に酒粕を混ぜることで、石川県らしいお菓子になるのではという発想からこの事業がスタートする。
◇開発段階での苦労
早速試作してみると、酒粕の香りがほんのりとしてまずまずの仕上がりだった。それでも、敢えてベストなマッチングを探すべく、県内に数ある酒蔵の酒粕をいくつか取り寄せ、何種類か試作してみたところ、癖の強い酒粕が多く、なかなか美味しさの点で合格ラインに達するものがなかった。そうした結果、最初に作った松波酒造のふな搾り酒粕が、しっとりとしていて、酒粕特有の癖がなく、フルーティーな香りだけが留まり、ベストマッチングだったことから、この組み合わせに決まる。自社に製造部門があることも商品化の早さに奏功している。
◇ふな搾り酒粕と米粉のマリアージュ
松波酒造では、昔ながらの製法で日本酒を製造しており、木の桶に酒袋を並べ、袋の自重のみで時間をかけ、自然にぽたっぽたっと落ちるのを待つ搾り方なのに対し、大手メーカーは機械で搾るため、強くつぶされてお酒の個性が変化してしまう。それをやらない松波酒造の酒粕は、見た目もしっとりとしていて、一般的な板酒粕のようにパサパサしていないのが特徴。それをただ混ぜても十分美味しくはなったが、さらに一工夫したのは、原料の米粉も酒粕の中に入れて醗酵させてみたところ、甘酒のように甘みがより強く出た。この製法により、ただ米粉で作ったフィナンシェとは、味も風味も大きく異なるキャラバンサライならではの、ひゃくまん穀と百万石乃白のダブル百万石の石川県らしい商品が誕生する。
◇コーヒー豆にもこだわる
店頭で30種類あまり販売しているさまざまなコーヒー豆を順に試し、深煎り豆を入れると焦げ臭さが気になり、試行錯誤を繰り返した中から、酸味があってフルーティーなキリマンジャロの豆に目星をつけ、その後焙煎にも工夫を重ね、よりキャラクターが活きるように浅く焙煎したものを入れたところ、香りが残って美味しく仕上がる。酒粕の香りにコーヒーの香りが負けることなく、とてもバランスのいい風味で、お客さんからも好評とのこと。和のものと洋のものからできていることから、和洋菓子と表現することに。
◇さまざまな用途にも重宝
ひゃくまん穀フィナンシェは、1箱6個入り(コーヒー味3、アーモンド味3)で1、000円(税別)と手頃な価格のため、ちょっとした手みやげになるのはもちろん、1月初めは年賀の熨斗をつけた年賀のあいさつ用を販売するなど、一年を通して使い勝手がよく、自家用にも贈答用にも使える重宝な商品。ちなみに店頭ではバラ売りもしており、1個160円で販売している。
◇これからも地域ブランドで商品開発を
石川県には、加賀野菜やルビーロマンに代表される果物、食品製造や醤油・味噌の製造にかかわる企業も数多くあり、幅広いマッチングの可能性が見込めることから、「コーヒーに合う」をキーワードに、様々なマッチングを試しながら、石川の地域ブランドを活用した次なる商品開発に向け、日々アンテナを張り巡らせ情報収集に余念がない菅店長である。
菅健 同社武蔵店長 本社外観
◇会社概要
・商 号 キャラバンサライ株式会社
・創 業 昭和55年
・本 社 金沢市保古3-47
・代表者 西岡 憲蔵
・TEL (076))240-4151
・URL http://www.caravanserai.co.jp/