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九谷焼の白素地に活路を見出し 白九ブランドで市場に新風を
<平成24年度活性化ファンド採択事業>
◇事業名
花坂陶石を活用した「白九(SHI-RO-CK)」の新ブランド化と「白九」の技術とデザインを応用した新型ワインカップ等の商品開発と販路開拓事業
◇商品名
白九AROMA
◇キャッチコピー
「九谷のワイングラスもありでしょ!」
◇開発の経緯
九谷焼と言えば豪華絢爛な色絵の皿や器を誰もが思い描くように、それが従来の九谷焼のイメージである。そんな中、九谷焼の製造・卸を商いとする伊野正峰(株)の四代目にあたる伊野功一専務は、「花坂陶石を使った九谷焼の素地のデザイン性を高め、素地の価値や魅力をアピールできるこれまでにない白素地の九谷焼を作ってみたいと思った」と、白九シリーズ誕生の経緯を語る。
最初に取り組んだのは、ウイスキーのロックグラスである。白九のブランド名は「白素地」「九谷焼」「ロックグラス」→SHI-RO-CKに由来する。このロックグラスを購入した顧客から「ワインカップが欲しい」との要望を受け、従来にないステムレスの九谷焼ワインカップ「白九AROMA」の商品開発並びに販路開拓事業に取り組むべく申請し、平成24年度石川県産業化資源活用推進ファンドの認定を受ける。
◇新規性
ワイングラスと言えばガラス製が主流であるが、オリジナリティーの高いワイングラスの開発を目標に掲げる。足のないステムレスのワイングラスの人気を調査したところ、楽天で第4位、ワイングラスの世界的ブランドであるリーデルにおいても第2位にランクインしている点に着目。
九谷の高度なろくろ技術を応用し、ワイングラス特有のふくよかな丸みとカーブを持たせた上質な素地づくりに徹底してこだわったこれまでにない磁器製カップである点が新しい。なおかつステムレスのため、安定感があり、グラスが倒れる心配もなく、収納も従来のワイングラスのように場所を取らないのが特徴だ。
◇こだわり
先述のとおり、小松市の花坂陶石を原料とする坏土で成形し、焼成することで表現される灰釉の持つ渋い白素地の魅力を最大限に引き出すことに細心の注意を払っている。何よりも職人の技術力の高さと丁寧な仕事による手作りの味わいや質感に徹底してこだわっている。と同時に、適度な重量感が手に馴染み、ガラスのカップに比べると耐久性や堅牢性があるだけでなく、白い素地はワインの色をより一層引き立てる。
「長期的な視点でのモノづくりが九谷焼にとって重要なブランド構築に不可欠であり、既成概念に縛られることなく、新しい発想や視点でのモノづくりに邁進していきたい」と伊野専務は力をこめる。
◇希望小売価格
白九AROMA 5,000円~50,000円(税別)
◇販売方法
百貨店、各種専門店、カタログやネット通販ならびに同社ホームページでの通販を予定(送料別途)。
◇課題と方向性
現在はまだ試作段階で、グラスの形状、重さ、口当たりの薄さ、ワインカップの外観デザイン、加飾等々について各方面の意見を聞き、最終的な完成型に導くべく検討作業を進めている。平成25年5月に開催された九谷茶碗まつりに試作品を出品したところ、なかなか反応が良かったようだが、白生地で1個5,000円からだと夫婦で使おうと思うと1万円と少々値が張る。
販売価格を3,000円程度と手頃にするため、職人が1個ずつ手作業で入れているカップ外側の縦方向の飾り模様を、ろくろの回転を利用して簡単に入れられる横線に変更することで、価格が抑えられると同時に、カップを持った際の滑り止めの役割も果たすのではと試行錯誤に余念がない。25年9月に開催される東京国際ギフトショーに出展予定で、間に合えば絵付けを施したワインカップも展示し、来場者からの反響を集約し、25年12月頃をめどに本格販売をスタートさせたい考えである。
伊野功一 専務
◇会社概要
・商 号 伊野正峰株式会社
・住 所 能美市末信町イ61
・TEL (0761)57-0121