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山への恩返し、森林再生に資する 能登ヒバの新たな可能性にチャレンジ
<平成28年度活性化ファンド採択事業>
◇事業名
県木の能登ヒバを材料にした生活用品の開発及び販売
◇商品名
エッセンシャルウォーター、ひばオイル、猫砂ほか
◇キャッチコピー
空間に 能登ヒバ香る 心地よさ
◇開発の経緯
「明治33年の創業以来、材木商を営んできている当社の増江世圭社長の『これまで恩恵を受けてきている木の源である山に恩返しをしたい』との強い思いがこの事業の原点です」と、開発責任者の横内海仁執行役員は強調する。その第一弾として、山に放置されている杉の小径木や根曲材を使った不燃木材の開発に着手し、金沢工業大学の協力を得て、10年余の歳月をかけスギ集成不燃材「もえんげんR」の開発に成功し、平成24年に国土交通大臣認定という厳しい基準をクリア。その生産拠点として、志賀町の能登中核工業団地内にのと里山工場を建設し、「もえんげんR」と能登ヒバの建材製品の本格的な生産体制を整える。
それに続いて、山の残材・製材所から出る端材・工場から出る端材・不良材・おが粉を有効活用した能登ヒバ材の一般消費者向け商品の開発に着手。とはいえ、これまで120年あまり木材を商ってきているものの、能登ヒバのエキスを抽出するのは初めてのため、まずは小型の抽出機械を導入し、実験することから始め、試行錯誤を繰り返しながら技術を習得。能登ヒバの成分であるヒノキチオールを活用したエッセンシャルオイルやエッセンシャルウォーターなどを「NOTO HI BAKARA」ブランドで商品化。商品名の「NOTO HI BAKARA」は、能登ヒバから抽出したということをダイレクトに商品名にしている。
◇自社でヒノキチオールを抽出
能登ヒバからヒノキチオールを抽出する作業は、のと里山工場において水蒸気蒸留法を用いて行われている。これは、特殊な水を沸騰させて発生した水蒸気を能登ヒバのチップや端材に通すことで、ヒノキチオールを含んだ水蒸気となり、それを冷やして液化することで油とウォーターが抽出される。
これまでボトリングも自社で行っていたが、障害者の就業をサポートする観点から、輪島にある社会福祉法人佛子園の輪島カブールに委託し、社会貢献活動にも寄与している。
のと里山工場外観
◇自然由来の除菌力を科学的に裏付け
自社で抽出したオイルの効能を裏付けることが商品化には不可欠との考えから、林野庁の補助金や県の活性化ファンドを活用し、(一財)日本食品分析センターならびに株式会社品衛生研究所に効能試験を依頼。エッセンシャルウォーターは、黄色ブドウ球菌を5分後には99%除菌(シャーレ内)し、大腸菌やウイルスにも有効性が確認され、オイルは虫の忌避に有効性が認められる分析結果を得て、本格的な製造販売をスタートさせる。
さらに、エッセンシャルウォーターやオイル等の自社製品については、クロマトグラフィーという成分分析機を導入し、社内基準を満たしていることを確認した上で出荷する念の入れようだ。能登ヒバは虫に対する忌避効果が高いことから防虫シートの開発を進めているところで、家庭における代表的な害虫であるゴキブリも寄せ付けないという。
◇販売面でのこだわり
平成29年4月から販売をスタートし、金沢に本社のあるセレクトショップ「アミング」の全店舗で取り扱われ、予想以上の売れ行きとのこと。そのほか、市内の金沢白鳥路ホテル山楽、エムザの黒門市場、東山のセレクトショップ、自社が運営するウッド・スタイル・カフェなど、ブランドを大切にしながら、こだわりを持ったショップで販売する方向性で販路を開拓中。
さらに、平成29年12月には、能登ヒバの通販サイトをオープンし、能登ヒバを使った枕や積木といったラインナップを加え「NOTO HI BAKARA」の全国展開に向けてのツールとして充実させていく考えだ。無添加、無香料の自然由来の天然成分100%で、人に優しいだけでなく、様々な菌の繁殖を阻止する除菌・消臭力を備えていることから、部屋にスプレーして空間をさわやかに、洋服の消臭に、キッチンや水回りの除菌に、お風呂に入れてリラックスなど、様々な用途に使用でき、商品展開の今後の広がり、可能性が大いに期待できる。
◇山への恩返し・・植林活動をスタート
「あくまでもこの事業は、日本の林業の衰退による山の荒廃、その影響で頻発する土砂災害や野生動物による農産物の食害の急増といった問題に直面し、何とか山をかつての健全な状態にするために、自分たちにできることはないかという増江社長の山への恩返しという熱い思いが根底にあります」と横内氏は力を込める。
木材の新たな可能性にチャレンジし、山・森・人の調和を取り戻すための未来を見据えた同社の大きな、大きな取り組みに他ならない。山からの恵みで人に優しい商品、日々の生活の中で森の豊かさ、木のぬくもりを感じてもらえる商品を作り、その販売益を山の再生のため植林に使い、山への恩返しを形にしていく考えだ。「能登ヒバは苗木を植林してから成木になるまで60~80年を要することから、今植えても伐採できるのは次の世代という長い年月を要する木のサイクルを確立させたい」と横内氏は増江社長の強い思いを代弁する。この植林作業には社員はもちろんのこと、社会福祉法人佛子園の園生も加わり、社会貢献活動・地球環境保全活動として、加賀木材株式会社の未来を見据えた山への恩返しプロジェクトである。
横内 海仁 氏
◇販売価格
・エッセンシャルオイル 5ml 2,000円(税込)
・エッセンシャルウォーター
100ml 1,000円(税込)
200ml 1,800円(税込)
携帯用10ml 500円(税込)
・動物パズル 2,300円(税込)
・ウッドクッション 1,512円~(税込)
・シューズキーパー&靴用スプレー 39,800円(税込)
◇店舗概要
・商 号 加賀木材株式会社
・〒920-0211 石川県金沢市湊2-21
・TEL (076)238-4131
・URL http://www.kagamoku.co.jp