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<平成27年度活性化ファンド採択事業>
◇事業名
石川県産水引の改良・意匠撚糸等を使用した新商品の開発及び販路開拓事業
◇商品名
意匠撚糸を使用した水引原材料
◇キャッチコピー
華やかな 水引支える 黒子役
◇開発の経緯
石川県かほく市の高松地域は、全国的にも知られるゴム入り細幅織物の一大生産地で、現在でも約80社の関連事業所が集積している。その中の一社で、昭和25年創業の有限会社小山カバーリングの小山祐一専務は、自社の細幅織物用横巻ゴムならびにカバードヤーンに関わる製造技術の改良等に関し、数年前から石川県工業試験場と試験研究の取り組みを進めていた。
時を同じくして、株式会社自遊花人の廣瀬由利子社長から、「地元石川県で強度のある水引材料を製造できる企業がないか」との打診を受けた同試験場が仲介役となり、廣瀬社長に小山専務を紹介したのが縁で、平成27年度の活性化ファンドに採択された「水引に使用する意匠撚糸の製造事業」がスタートする。廣瀬氏は、2012年度のいしかわベンチャービジネスプランコンテストにて、これまで祝儀袋や結納飾り、アクセサリーに限定されていた水引を、照明器具、ドア、テーブル、パーティション、オブジェといった建築内装材やインテリア分野に広げ、水引の新たな用途と販路を開拓する事業を提案し、女性初の最優秀起業家賞を受賞した人物。そんな地元石川の水引作家と地元産水引材料によるコラボレーションが萌芽する。
◇製造過程での苦労
紙の芯に意匠糸を巻き付ける技術は、従来のゴム入り細幅織物で使っている技術のため、簡単にできるものと二つ返事で引き受けた小山専務だったが、実際に機械で巻き取ってみると、従来は伸びるゴム入り糸専用に作ってある巻き取り機のため、伸びない紐を巻き取ったところ、抵抗がないために部分的にすべったり、1カ所に固まりができたりと、平滑さが求められるにもかかわらず、細いところと太いところができ、それをどう均一の巻きの太さにするか、その点で苦戦し、試行錯誤を繰り返し、既存の巻き取り機に自社で改良を加え、伸びない紐を均一の太さで巻き上げられるよう修正し対応可能に。
これによって、水引用の意匠糸が県内で賄えることになったことから、この意匠糸を他社に販売しないことを条件に、自遊花人サイドが原料となる糸と紙芯を購入し、小山カバーリングが賃加工で製造を担当することに。これにより、自遊花人の作品に使用されている小山カバーリング製のオリジナル水引「四季の糸」全133色ができあがる。これまで使用してきた紙芯は、仕入れるメーカーによって太さにばらつきがあることから、今後は紙芯を製造するところから自社で手がけることも検討している。
◇新商品開発
この糸や紙芯に被覆する技術を応用した新商品の開発にも取組み始めている。その一例がランプシェイド。かつての白熱電球では、高温になるために紙や糸でできたシェイドでは火災になる心配があり、使うことができなかったが、ほとんど発熱しないLED電球の登場で、火災の心配がなくなり、そうした用途への展開も可能になった。また、難燃性を高めることで、壁面やパーティションといった内装材にも使えるようになり、新たな可能性が広がってきている。
さらに、紙芯にフィルムを細かく裁断したものを巻き付けることで、糸に通電性が生まれ、その糸を手袋の指先部分に使うことで、寒い冬に手袋をしたままスマートフォンの画面操作ができるというアイデア商品も生まれている。
◇課題と方向性
繊維業界は、バブル崩壊により、中国から安い縫製品が大量に流入し、価格破壊が起こり、大変厳しい環境下にさらされてきた。そこにリーマンショックが追い討ちをかけた格好だが、そんな厳しい状況の中で、いかに生き残っていくか、その一点に神経を集中し、いわゆるクイックレスポンス、短納期対応を徹底して実践してきたことで信頼を勝ち得てきたのが、小山カバーリングの商いの信条である。
小山専務曰く、「お腹が空いている時は何を食べても美味しいですが、満腹の時にステーキが出てきても食べられない。どんな仕事にも絶妙のタイミングがあり、相手が欲しい時にすぐ納品できる体制を整えています」と力を込める。これからの新しい時代に対応したビジネスの在り方を真摯に模索する小山専務は、現在自社ホームページのリニューアルに取り組んでおり、今春中には新しいホームページをアップする予定とのこと。「新しいホームページを見てもらえば、当社の技術力や製品開発に取り組む姿勢、新たなビジネスの芽を見つけてもらうヒントなど、時代に合った形で積極的に情報発信し、自社の魅力をアピールしていきたい」と、ますます意欲的な小山専務である。
<記事中に掲載した写真提供 株式会社自遊花人>
◇会社概要
・商 号 有限会社小山カバーリング
・〒929-1215 かほく市高松エ13
・TEL (076)281-0335
・URL http://www.koyamacovering.com/
小山祐一 専務