本文
加賀友禅の華やかさ、優しさ、あたたかさを手のひらサイズにリーズナブルに凝縮!!
<平成26年度活性化ファンド採択事業>
◇事業名
手描き加賀友禅を使ったインクジェットによる量産型商品の試作から販売まで
◇商品名
加賀友禅文様スマートフォンシール
加賀友禅文様手まりコースター
◇キャッチコピー
あなたのスマホに 加賀友禅のおめかしを
◇開発の経緯
伝統工芸士・太田正伸氏は、1986年友禅作家・白坂幸蔵氏に師事し、11年の修業を経て、1997年に独立し、友禅工房「文庵」を開く。以来、加賀友禅の着物や帯の製作、展覧会への出品活動に精励。バブルが崩壊し、高価な着物の売れ行きが鈍り始めた。そこで、加賀友禅の小物類を作るようになり、そうした創作活動に取り組む仲間たちとグループ展を行い、お客さんに直接販売する試みをスタートする。加賀友禅の小物を作家自ら販売する試みが珍しかったこともあり、新聞やテレビで紹介され、多くの来場者に恵まれ、売上も好調だった。
それを受けて「平成友禅商店」というグループを結成。この販売活動を通して、手描き友禅の素晴らしさは認められても、価格が高いためなかなか売れないのに対し、インクジェットを使った安価な商品はそれなりに売れていく現実を目の当たりにする。その経験が、自らデザインした加賀友禅の文様をインクジェットで印刷し、繰り返し貼ったり剥がしたりできるスマートフォンシールの開発に導く。
◇新規性
貼ったり剥がしたりできる粘着シートは、ガラケーの画面を拭くワイピングクロスを携帯の裏に貼るために以前より使われていた。このシートを使って携帯の裏側全面にデザインしたものを貼れないだろうかと太田氏は思いを巡らせていた。その構想を周囲に話す中から、剥離糊の存在を知る。早速それを使って自らの手で試作品を作り、実際にスマートフォンに貼り、2-3回貼ったり剥がしたりしてみたところ、糊と布が剥がれてしまった。さらに1ヶ月貼ったままにしたものを剥がすと、糊がところどころ残ってきれいに剥がれない。そうした不具合が発生したことから、このままでは商品化できないという壁にぶつかる。
県工業試験場をはじめ様々な人に相談した中から、ワイピングクロスのメーカーが加賀市にあると聞き、電話で連絡を取ったところ、そこでは粘着シートは扱っていなかったが、東京にある粘着シートメーカーにワイピングクロスを納めていた。早速そのメーカーを紹介してもらい、自ら出向いて試作品づくりを依頼することにこぎつける。しかもそのメーカーが「ピタックリン」という商品名で製法特許を取得していたため、耐久試験等は全くする必要がなく、即試作品を作ることができた。この粘着シートを使ってスマートフォンの裏全面に貼るシートは、そのメーカーも手がけていなかったため、加賀友禅文様スマートフォンシールは、実用新案的な新商品と言える。
◇こだわり
太田氏の手描き友禅の文様をデザイナーがデータ化し、それを東京のメーカーに送り、色校正を重ね、インクジェットでプリントした布と粘着シートを張り合わせ、友禅文様のシールが完成する。完成した商品を知り合いに市場調査の意味合いも込めてまず使ってもらったところ、最初に出てきたクレームが「すぐ汚れる」だった。とりわけ白系統のデザインはそれが顕著で、よくよく考えてみるとワイピングクロスは汚れ拭きであり、汚れを吸着していたのだ。
そこで、さまざまな生地を試験的に貼り合わせてもらい、使ってみて、その中から一番汚れにくい生地を選び、さらに超撥水加工を施すことで、汚れのつきにくい商品が完成する。価格設定においても、ハードタイプの一般的なスマートフォンカバーが3,500円~4,000円で市販されているため、当初は3,500円ぐらいの価格設定をしたが、「高い」と言われ全く売れなかった。そこで、原価を下げることが不可欠と考え、粘着シートメーカーと交渉を重ね、原価を当初より安くすることができ、現在の1,500円という価格を実現。リーズナブルな価格にしないと売れないとの太田氏のこだわりが結実する。
◇販路の現状
現時点では、ひがし茶屋街の土産店、金沢百番街、県立美術館のショップ、加賀友禅伝統産業会館で販売されている。販路拡大の努力は重ねているものの、実際の売れ行きが悪いと返品の山になるのが悩みの種。1柄について最低300枚程度作らないとロット的に合わないため、20種類あまり作ると、その在庫もかなりの量になる。先般の東京ビッグサイトでのギフトショーに出展したところ、アマゾンのバイヤーの目に止まり、アマゾンの海外向けECサイトでの販売が予定されている。
金沢市内で商品が置いてある店は全て委託で、なおかつ30~50%ものマージンを取られるため、大変厳しいのが現状。その一方で、「東京ビッグサイトで成立した商談は全て買い取りで助かります」と太田氏。観光地の金沢では昔から委託販売の商習慣が根強く、そうした点も作り手にとっては大きなネックになっている。
◇今後の方向性
太田氏のモノづくりに興味を持った東京のメーカーの社長が金沢まで訪ねてきて、「加賀友禅の付加価値を付けることで、粘着シートをより高く売ることができる商品開発をしたい」とのオファーがきっかけとなって生まれたのが加賀友禅文様手まりコースターである。手描きの手まり柄をインクジェットで印刷し、その布とゴムを貼り合わせてコースターにした商品で、これがなかなか好評で、売上が少しずつ伸びてきているとのこと。ネット通販を考えた場合、商品価格が1,500円に対し、送料が700円かかると、買うのをやめるケースが多く、通販分野に取り組む場合は送料がネックになる。
そのため、品揃えの充実を図り、いろんな商品を買ってもらうことで、購入価格がアップすれば、送料分のウエイトが下がるため、そうしたバリエーション展開も課題である。「手描きのあたたかみのあるライン、雰囲気を大切にしながら、コストは可能な限り押さえ、より多くの方に加賀友禅の魅力を知っていただく、そんな商品づくりに邁進していきたい」と熱く語る太田氏である。
◇販売価格
・iPhone6用加賀友禅文様スマートフォンシール 1,500円(税抜)
・iPhone6 plus用加賀友禅文様スマートフォンシール 1,700円(税抜)
・加賀友禅文様手まりコースター6枚セット 2,700円(税抜)
◇会社概要
・商 号 加賀友禅工房・文庵
伝統工芸士 太田 正伸
・住 所 〒921-8152 金沢市高尾3-75-1
・TEL・FAX (076)298-9172