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里山の空気感、癒しを醸す能登仁行和紙
<平成26年度活性化ファンド採択事業>
◇事業名
土壁の質感を持つ壁紙用「土入り手漉き和紙」の開発と販路開拓
◇商品名
土入り手漉き和紙
◇キャッチコピー
里山の空気感、癒しを醸す能登仁行和紙
◇開発の背景
能登の里山の自然に恵まれた輪島市の山間地・三井町仁行地区に、祖父の代から能登仁行和紙として知られる手漉き和紙づくりを継承する遠見家がある。手漉き和紙と言えば、便せん、封筒、ハガキ、名刺、しおり、ランチョンマットなどの身近な日用品だけでなく、近年ではインテリア商材として壁紙や天井クロスなどにも用途を広げている。
そんな中、三代目にあたる遠見和之氏が取り組んだのは、能登仁行和紙の特徴を前面に打ち出した新しい壁紙の開発である。能登半島・珠洲市で産出される珪藻土に調湿作用や空気清浄作用があることに目をつけ、和紙を漉く際に珪藻土を混ぜ込んでみることから始まり、能登各地に点在する様々な種類の土を、紙を漉く際に混ぜ込むことで、その土ならではの様々な風合いが和紙に表現され、なおかつ表面に土の粒子が生み出す独自の突起模様が土壁の風合いを感じさせ、能登の里山の空気感を醸し出す土壁の質感を演出する「土入り手漉き和紙」が誕生した。
土壁のような風合い
◇新規性
能登仁行和紙の特徴は、自然にある枝葉を混ぜた和紙や杉皮を漉いた和紙など、他の産地にない独創的な手漉き和紙づくりにある。
そうした自然の素材を使用する延長線上で今回の和紙を漉く際に土を混ぜ込むという斬新な発想が生まれた。土が入るために和紙の重みが増し、道具も傷みやすくなることから、土の配合量と仕上がった時の風合いとのバランス調整に試行錯誤を重ね、他にない土壁の質感を持つオリジナリティーの高い壁紙が完成する。
しかも、同じ土でも採集した場所によって含有する成分が異なるため、漉きあがった紙の色は全て異なり、着色料を入れていないにもかかわらず、何種類もの自然界の色合いが表現される。もちろん、染料を加えることで好みの色に染めることもでき、色については好みの色に対応できる点もインテリア商材として魅力的である。
◇こだわり
和紙を漉く際に混ぜ込む土は能登の里山で採集したものであり、遠見氏が精魂込めて漉き上げた文字通りメイドイン能登のこだわりの壁紙である。
「この壁紙が貼られた空間にいるだけで、能登の里山の自然に包まれているかのような癒しを感じてもらうことのできるモノづくりにこだわっていきたい」と熱く語る。
行きつけの店で目にした土入り手漉き和紙の壁紙の風合いに惚れ込んだ大阪の蕎麦屋の主人から制作依頼を受けた遠見氏が、自ら大阪まで出向き、蕎麦屋の壁と天井に土入り手漉き和紙を施工して来た事例もあり、土入り手漉き和紙に包まれた空間で食事をしたお客さんから好評を得ているとのこと。
土入り手漉き和紙の壁紙が貼られた店内風景
◇課題と方向性
漉き上がった和紙のサイズは、タテ62cm×ヨコ98cmの大きさだが、これを30cm四方程度にカットし、ホームセンターなどでパック詰め販売したい考えで、一般の人にDIY感覚で手軽に貼ってもらえるユニット壁紙として商品化することが目標だ。
商品化に向けて、県工業試験場を活用して堅牢度や難燃性などのテストや全国組織の壁紙の検査機関での検査等を経て、JIS規格にも対応した商品にすることで、建築関連業者が安心して使える商材にすべく、これから取り組むところである。
販売価格は、1平方メートルあたり1万円~1万2千円程度を予定しているが、販路開拓が最重要課題であり、石川県産業創出支援機構のサポートを得て、売り込み先を開拓していく予定だ。土入り手漉き和紙は、その質感を写真ではなかなか伝えにくい面があり、どのような見せ方がいいのかも課題の一つ。冷水の中で紙を漉き、水分を抜き、乾燥させ、商品が出来上がるまで約一週間。能登仁行和紙の魅力を一人でも多くの人に知ってもらい、使ってもらうべく、今日も紙漉き作業に精を出す遠見氏である。
◇会社概要
・商 号 能登仁行和紙
・住 所 〒929-2367 輪島市三井町仁行青谷前239番地
・TEL (0768)26-1566
・FAX (0768)26-1314
能登仁行和紙 工房 遠見和之氏