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練乾漆技法を駆使し、輪島塗にサプライズをプラス
<平成24年度活性化ファンド採択事業>
◇事業名
経年変化で素地の風合いが変化する練乾漆酒器の商品化
◇商品名
練乾漆の酒器「KOKEMUSU」
◇キャッチコピー
「自分だけの サプライズカップで 乾杯!」
◇開発の経緯
輪島塗職人として修業を積んだ引持力雄氏は、独立以来10年あまり茶道具一筋にモノづくりに取り組んできていたが、バブルが崩壊し市場環境が激変したことから、問屋に納める仕事から自分で作ったものを自分で売る、直販へ転換していくことの必要性を痛感する。
そこで、茶道具づくりで培ってきた練乾漆技法(麻布に漆を染みこませたものを巻き付け、木地を一切使わず、素地の形にとらわれずに立体造形ができる技法)を活かし、今の時代に売れるモノづくりを模索し、自らの仕事の見せ方を少し変えてみる試みの中から生まれたのが、麻布の素地に漆を盛りつけ、ごつごつとした岩肌に苔がはえているように見える味わいが特徴のカップである。輪島塗の伝統的な技法を用いて開発された新しい商品として24年度のいしかわ産業化資源活用推進ファンドに認定される。
◇新規性
従来から輪島塗の酒器やカップ類は数多く作られてきているが、意匠的にデザインされた漆のごつごつとした風合い・色合いが、経年変化によってその表情を変え、文字通り世界に一つしかないサプライズのあるカップとして、強烈な個性をアピールできる商品であることがこれまでにない新しい魅力となっている。同じ輪島塗でも乾漆で作られているため、見た目の重量感とは異なり、実際に手にすると意外と軽いのが特徴だ。このシリーズは、ごつごつとした漆の塊の下に溜塗の技法で緑を置くことで苔むす感じを見事に表現している。この色を変えることで表情豊かなバリエーション展開も可能だ。
◇こだわり
練乾漆のモノづくりは、梅雨時に漆を染みこませた麻布で原型となる型をとっておき、それがしっかり乾燥したところで、麻布に漆を染みこませたものを何重にも重ね、あたかも木地が中にあるかのような堅牢な練乾漆ができあがる。型ができている段階からでも完成まで2ヶ月を要する緻密な作業が職人の手によって日々繰り返される。
この気が遠くなるような手間暇を徹底してかけることこそが輪島塗のこだわりである。当然の事ながら輪島塗の器であるため、中性洗剤での手洗いは問題ないが、食洗機や電子レンジはNG。冷温いずれの飲み物にも対応し、冷たい飲み物に氷を入れてもガラスのように結露してテーブルが濡れることもなく氷も溶けにくい、一方熱い飲み物の場合はガラスのように熱くて持てなくなるようなことがないのも輪島塗の特徴である。
◇希望小売価格
ぐい呑み 21,000円(税込)<口径約5.5cm×高さ約5.5cm>
タンブラー 42,000円(税込)<口径約7.0cm×高さ約8.0cm>
ロックカップ 52,500円(税込)<口径約8.5cm×高さ約9.0cm>
◇販売方法
Nipponismのネット通販(送料別途)。
◇今後の方向性
奥さんの引持玉緒さんは、売れる輪島塗を作るために何が必要なのかを学ぶため、北陸先端科学技術大学院大学の「石川伝統工芸イノベーター養成ユニット」に参加し、四画面思考法を学び、輪島塗の強みを商品に落とし込むヒントを持ち帰ると共に、売れる商品開発のアイデアを提案している。それを職人である力雄氏が自分なりに咀嚼しモノづくりに反映させる。まさに夫婦二人三脚でこれまでの輪島塗にないサプライズを提案すべく邁進している。
さらに玉緒さんは「石川の伝統工芸を愛でる会」にも参加し、異業種の若い人たちとも積極的に交流し、様々なヒントや刺激を吸収している。このカップシリーズは、苔むす色合いをテーマとしていることから「MOSS」と命名したが、商標権取得の際に支障をきたすことから、「KOKEMUSU」という新たなブランドで自社ホームページを開設し、本格販売をスタートさせる考えだ。漆は顔料を加えることで様々な色を表現でき、カラーバリエーション展開も試作中。さらに、練乾漆の技法を額縁の縁の部分にだけ、あるいは家具の一部分に使いたいといった顧客からの要望が多くあることから、インテリア分野への展開も視野に入れている。これからも行動派で好奇心旺盛な玉緒さんと職人気質で実直な力雄さん夫婦のサプライズのあるモノづくりから目が離せない。
◇会社概要
・名 称 輪島塗 ぬり工房楽LaQue
・住 所 輪島市三井町市の坂ニの59
・TEL (0768)26-1346
引持 玉緒さん