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エコロジーな「エコ・ア漆器」と「らぶ・あーす」の開発
<21年度活性化ファンド採択事業>
◇事 業 名
最先端技術で生成されたバイオマス樹脂と山中漆器の近代技術を融合し、
「使い易く、エコロジーな売れる商品」の開発と販売
◇キャッチコピー
地球環境と人に優しいエコな山中漆器
忘れしゃんすな!!「エコ&らぶ・あーす」♥
◇開発の背景
遡ること14年前、環境問題にまだ世間の関心が向いていない頃に、NHK教育テレビの番組「おもしろ学問人生」で、当時まだほとんど認知されていなかったバイオマスの液化技術を用いた「バイオマス樹脂の成型原料の研究と開発」をしている京都大学の白石信夫教授(現名誉教授)の取り組みが紹介された。そのシリーズ番組を毎週見ていた打出社長は、放送の翌日、京都大学の白石教授の研究室に電話し、自らの仕事を説明し、将来的に山中漆器産地も環境問題は避けて通れない課題になるだけに、環境に優しい漆器づくりに取り組みたいとの熱意を伝え、共同の研究開発がスタートする。白石ゼミの卒業生が滋賀県にある樹脂工場に就職していたため、その会社への協力依頼と援助をし、実用化に向けての研究開発に取り組む。いかんせん実験と実用化のレベル差(特にコスト面)が大きいことから、なかなか思うような樹脂ができず試行錯誤を繰り返した。ようやく現在の液化樹脂の製造メーカーと混練メーカー大手2社の技術提供を受け、長年の歳月を経て製品化にこぎつけた。そのエコロジーの材質に山中漆器産地に代々伝わる成型・塗装・蒔絵といった伝統の技術をプラスして新たな漆器を開発する点が評価され、平成16年/21年:石川県リサイクル認定製品、平成18年:中小企業経営革新支援法認定、平成19年:経済産業省・地域資源活用法認定企業、平成20年:いしかわ産業化資源活用推進ファンドの認定を受けている。
◇新規性
白石教授にこの話をもちかけた時、「開発半ば、活用利用には時期尚早ではないかと言われました」と述懐する。新素材の開発には何年もかかるだけに、早すぎると思う頃から手がけないと、実験室で樹脂の板材ができたとしても、実用されている商品金型での成型性と強度がないと実際の製品に使えず、そこまでの素材に仕上げるまでには10年ぐらいはかかるつもりで取り組んだことが奏功した格好だ。しかも、そのバイオマス樹脂を漆器の材料に使うことを最初に考えたのが打出社長その人である。現在では、植物由来の木質バイオマスの液化技術は、広い分野で応用されているが、その第一人者である白石教授に白羽の矢を立てた打出社長の先見性には驚かされる。と同時に、熱硬化性バイオマス樹脂を原料に製品を作り、それを販売して利益を出すまでに至っているのは、いまのところ同社だけである。
◇こだわり
バイオマス樹脂には2種類あり、可塑性樹脂(アグリウッド樹脂)を使った製品は「らぶ・あーす」、硬化性樹脂(エコ・ア樹脂)を使った製品は「エコ・あーす」(エコ・ア)の商品名で販売している。熱可塑性樹脂は大量生産向き(インジェクション成型)、熱硬化性樹脂は少量多品種生産向き(コンプレッション成型)と、用途や商品によって使い分けている。何よりもこのものづくりの根本は、地球環境に優しい、人に優しいものづくりであり、それプラスより安価で、使う人が使い易い商品を心掛けている。この使い易さを検証すべく、エコ・ア樹脂製の食器を22年4月からこまつ木場潟道の駅と同市内の割烹料理店で業務用食器洗浄機を使って実証試験を続けてきている。家庭用食器洗浄機対応をメーカーとして謳えることにより、全ての顧客に対して使用実績を示すことができ、同社としても自信をもって勧めることができる。既に同社の塗装技術を施すことにより、百貨店の商品基準の中でも最も高い基準を持つ東京の有名百貨店からも「食器洗浄機対応基準をクリアした」とのお墨付きを得て、販売もスタートしている。
バイオマスマーク認定/石川リサイクル製品認定と食品衛生法適合
(塗装前の成型品/塗装後の漆器製品共に食品衛生法適合)
バイオマスマーク認定機関/(社)日本有機資源協会(主務官庁:環境省/農林水産省)
石川県リサイクル認定製品認定機関/石川県環境部廃棄物対策課
食品衛生法検査機関/(財)石川県予防医学協会
◇これからの方向性
成型時の諸条件はあるが、いずれの樹脂も金型さえあれば、概ねどんな商品でも作ることができ、山中漆器の商品として販売されているものなら、全てこの樹脂に置き換えていくことが可能である。つまり、あとは産地企業のエコ意識次第であり、環境に配慮したものづくりに積極的に取り組む企業が増えれば増えるほど、これらのバイオマス樹脂を原料とした山中漆器が世の中に広がっていくわけだ。例えば、エコ・ア樹脂を成型する過程で、これまでゴミとして捨てられていた山中漆器の木地を削る際に出ていた木くずや搾った後のお茶っ葉等を乾燥と微粉化することで、混練することができ、従来までゴミとして処理されていた有機物を有効に活用できる(マテリアル/ケミカルリサイクル)。プラスチック漆器対木製漆器の比率が約7:3(メーカー値)という現状を鑑みると、化石燃料を原料とする7割の部分をこの樹脂に置き換えていくことで、地球環境にも優しいエコな産地へと転換していくことができる。ここへきて、地元の同業者や越前漆器の業者の中にもエコ・ア樹脂を原料とした成型品を使用したいとの要望が多数出始めてきており、原料使用量の増加による更なる原料価格の低下と成型時の素地肌のレベルアップに向け、より一層の試行錯誤を重ね、産地全体がエコを指向する先導役として邁進する心意気である。
◇発注単位 小ロット対応
◇希望小売価格 ウレタン系塗装の汁碗類 1,200円~
うるし系塗装の汁碗類 2,000円~
◇配送方法 宅配便、送料別途
◇返品対応 不良品のみ送料当社負担で対応
◇事業所名 株式会社ウチキ
加賀市柏野町イ-61
TEL0761-77-1616
FAX0761-77-1618
◇担当者 打出 浩喜社長