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九谷焼の華やぎ・高級感をプラスし、日々の生活に贅沢気分と潤いを
<平成23年度活性化ファンド採択事業>
◇事業名
高級感のある九谷焼ソープボトルをはじめとしたサニタリー周辺商品や洗面台調度器トータルでの商品開発及び販売展開事業
◇商品名
九谷焼ソープボトル・洗面ボール
◇キャッチコピー
「使ってごらん 九谷焼だよ!」
◇開発の経緯
能美市内で親子二代にわたり九谷焼の製造卸を生業としてきている(有)山口陶業社の山口健次社長は、バブル崩壊以降の低迷する景況の中にあって、「他社がやっていない商品を開発することで、少しでも売上を伸ばすことにつなげたい」と思案し続けていた。
試行錯誤を重ねる中から、日々の生活において人が最も潤いや安らぎを感じる空間に置かれている備品を、九谷焼で製造することで、高級感や華やぎといった付加価値を創出できるのではないかと考えた。そんな発想から開発に取り組み製品化にこぎつけたのが、浴室に置く九谷焼のソープボトル、洗面所の洗面ボール、ソープディシュである。地元の伝統工芸・九谷焼の技術を応用して開発した新製品として、23年度の石川県産業化資源活用推進ファンドの認定を受ける。
◇新規性
これまで九谷焼の小皿をソープディシュ代わりに使うといった顧客サイドの発想はあったものの、九谷焼製のサニタリー周辺商品を開発したのは恐らく同社が初めてであろう。九谷焼は陶器であることから、落としたり倒したりすると割れるというリスクが付きもの。したがってかつてのタイル張りの浴室では残念ながら使用できなかった。
ところが、近年はユニットバスが普及し、プラスチック樹脂製の床が主流となったことで、九谷焼製とはいえ、倒れても割れる心配がなくなったことが開発意欲を後押しした。開発にあたって、プラスチックポンプのキャップ部分のネジ山と九谷焼のボトル口部分のネジ山をぴったりと合致させることが予想以上に難しかった。「九谷焼は焼成するため、素地の膨張や収縮を見込んで成型しなければならず、失敗の連続だった」と山口社長は振り返る。経験を積んだ職人の技術と勘、窯の中の焼成温度の調整など、試行錯誤を繰り返し製品化にこぎつけた。
また、近年は既存の洗面化粧台ではなく、陶器製やセラミック製の洗面ボールを洗面所に設置する家庭が増えてきていることに目をつけ、九谷焼製の洗面ボールを開発し、高級感と華やぎをプラスすることに貢献している。
◇こだわり
九谷焼ソープボトルのポンプ取り付け部分から中身が漏れることがないよう自社で度重なる試験を実施し、万全を期している。また、常に水が流れる浴室内に置かれることから、転倒防止の一助として、底面に滑り止めの樹脂製ピットクッションが取り付けられている。
九谷焼といえば九谷五彩に代表されるような華やかな絵付けが特徴であるが、そうした歴史と伝統ある九谷焼らしい絵付けの商品だけでなく、若い人たちの感性に受け入れられると同時に、戸建て住宅だけでなくマンションにも合うような銀彩や金彩を用いたスタイリッシュなデザインの商品までバリエーション豊富な品揃えが特徴。
◇販売価格
ソープボトル 3,800円~10,000円(税別)
洗面ボ-ル 30,000円~50,000円(税別)
ソープディシュ 2,200円~(税別)
◇販売方法
住宅設備機器販売会社のカタログ
◇今後の方向性
九谷焼は昔からカタログ販売で成り立ってきた歴史があることから、同社もカタログ販売を重視。近年のネット通販ブームで、同社の商品を取り扱わせて欲しいとの問い合わせが増えているが、同社の販売先は問屋であり、一般消費者ではないため、今後もそうした申し入れには応じない。
九谷焼のソープボトルにさらに高級感を出すためポンプ部分を金や銀製にして欲しいという要望もあるそうだ。価格的には高くなるが、世界に一つしかない作家ものを作ることも可能で、フルオーダーの注文にも対応できる。そこまでは必要ないにしても、日本を代表する伝統工芸である九谷焼をリーズナブルな価格で、日常生活の中で使える商品化を実現した山口社長は、「九谷の産地に受け継がれてきている技術・技法を活用することで、我々の生活の中に潤いや華やぎを演出できるものがあれば、これからも積極的に取り組んでみたい」と意欲的である。
山口健次 社長
◇会社概要
・名 称 (有)山口陶業社
・住 所 能美市寺井町レ131
・TEL (0761)57-1045
・URL http://yamagutitougyousya.bizcom-web.com/