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石川を感じられる地元食材+甘糀入り生地の中華まんじゅう
<平成30年度いしかわ中小企業チャレンジ支援ファンド採択事業>
◇事業名
米糀を練り込んだもっちり皮に海山の惣菜を詰めたおやき風中華まんじゅう(剣先なんばのピリ辛いかまんじゅう等)の開発販売事業
◇商品名
黒毛和牛 能登牛まん
加賀ほうじ茶の栗きんまん
剣先なんば使用 金沢辛レーまん
白山市には、左党にはたまらない酒の肴である、海産物の干物や粕漬け、糠漬けなどを製造販売する人気店が点在している。そんな中の1軒が、白山市倉部町にある(株)銭福屋である。
近年、若い世代にも人気のカレーいかまんまがヒットし、わざわざ遠方からも訪れる人気店に。その人気商品を開発した同社の西竹康生社長が、次なる新商品として、糀を生地に混ぜ込んだ中華まんじゅうを開発。地元の食材を使った新たな商品開発が評価され、平成30年度いしかわ中小企業チャレンジ支援ファンドの認定を受ける。商品開発の経緯を西竹社長に伺った。
◇開発の経緯
遡ること10年あまり前、たまたま残ったカレーライスをイカに詰めて煮込んでみたところ、子供たちに好評だったことがきっかけで、カレーいかまんまを商品化。従来までとは異なる若い客層の開拓に成功する。
これまで、魚の切り身を糀漬けにする際、同店オリジナルのレモン風味の糀、トマト風味の糀などで漬け込んだ商品を販売してきていた中で、次なる商品として、信州土産として知人からもらったおやきを食べた時に、何かこうした名物を作れないか、しかも自社の強みである発酵食品と組み合わせたもので、と閃き試作に取りかかる。
ところが、何度やってみてもおやきの食感を出すことが難しく、いろいろ試行錯誤した中から生地にいろどり糀を混ぜ、具材に地元の食材を使った中華まんじゅうが誕生する。
◇おやき風から中華まんじゅうに変化
おやき風に取り組むさらに前に、自社商品の海苔の佃煮を具材に入れたパンにもトライしている。トーストに海苔の佃煮をぬる人もいることから、面白いのではと考えチャレンジするも、商品として出せるレベルには至らなかった。そんな時に、焼き魚を作るためにスチームオーブンを導入したことから、これを使えばパンができるのでは、と試作してみたところ、思いのほかいいでき上がりに。そこで、イカのピリ辛煮などの魚の具材を入れて作ってみるも、試食してもらうと具材が何なのか判りにくいとの意見が多かったため、食べたらすぐ判る能登牛、栗きんとん、カレーの3種類で商品化することに。
当初は、おやきの食感を目指していたが、先述の通りなかなか難しかったため、ふんわりとした中華まんじゅうの生地に糀を入れた方が食感として生きると直感。いろいろと取り組んできた中の失敗や経験が、西竹社長の頭の中で、複雑に絡み合い、その中から導き出される形で、この商品が誕生する。
◇風味のこだわり
能登牛に関しては、肉の味をどう表現するかを考え、すき焼き風のたれで味付けし、生地の中に卵黄と糀を混ぜ、まんじゅう1つですき焼きが完成するイメージで仕上げている。カレーは金沢カレーを使い、アクセントとして生地に剣先なんばを入れ、皮でピリ辛を演出している。五郎島金時を入れるにあたり、生地には何が合うかと見渡したとき、加賀ほうじ茶がいいなと思いつく。
これら全ての商品化にあたり、一から全て西竹社長が手作りで、何度も何度も試行錯誤して完成させているだけに、商品に込めた思いは並々ならぬものがある。
◇脇役だった糀を主役に
近年、発酵食品である糀そのものに対する消費者の関心が高まってきていることから、従来は脇役であった自社オリジナルの各種糀をいろどり糀と銘打ち、いろどり糀シリーズとして商品化。甘糀・梅しそ糀・レモン糀・能登わいん糀・トマト糀・ゆず糀・生姜醤油糀の7種から成る。
せっかくここまでしたからには、加工食品メーカーとして、これらのいろどり糀を使った次なる加工食品の開発に取り組み、そんな中から、能登ワインの糀と豆乳を組み合わせたチーズ風味の豆乳クリームが次なる新商品として誕生する。
◇次代へつなぐ商いに邁進
昔から地元で食べられてきている食品を今風にアレンジし、若い人たちに故郷の味を再発見してもらえるような商品づくりをしていくことを商いのテーマとして掲げる西竹社長。昔はどこの家でも食べられていた料理が、時代と共に廃れていくのには、それなりの理由もあるだろうが、そうした長く地元の食品として親しまれていたものに光を当て、現代の生活に合うような形で復活させ、次代につなげていくことに大いなる使命感を感じている。
白山商工会議所と共催で開催している大根寿司教室もその一貫で、近年は、「おばあちゃんに作り方を聞くのを忘れてた・・教えてもらえば良かった。」という若い主婦や女性が多く参加してくれるとのこと。そうした実体験もあって、地域に根ざした伝統食を守り伝えたいという思いをより一層強くしている。
現在は、コロナ禍の影響で、業務卸が止まり、売上減は否めないものの、これまでの様々な試行錯誤で蓄積されたノウハウを持つ西竹社長の次なるチャレンジに期待したい。
本社外観 西竹社長
◇会社概要
・商 号 株式会社銭福屋
・住 所 白山市倉部町200
・代表者 代表取締役社長 西竹康生
・TEL (076)275-5931
・URL http://www.zenifukuya.com