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| 事業名 |
障碍者車椅子の座面アップグレード事業開発 |
|---|---|
| 商品名 | zAAkix(ザーキックス) |
| キャッチコピー | オーダーメイドの快適をあなたに |

金沢市内で生まれ育った織田さんは、坂道を自転車で駆け抜けるスピード感がたまらなく好きな少年だった。免許を取得するや民間の自動車競技クラブに所属し、金沢大学で自動車部にも入部、公道ラリーの大会で優勝経験も。そんな車いのちの織田さんだったが、先輩が経営するシステムエンジニアの会社に就職。就職してからも公道ラリーへの熱は冷めず、二足の草鞋で突き進み、35歳で独立して(株)InterGateを立ち上げる。

5年余り前、カスタム車いすを製造する知人から、車いすのシートに関する悩みや問題点を聞かされる。障害のある人は臀部の皮膚が薄く、背骨も直立していない場合が多く、体形に添わせるために加工に適したウレタンを削ってクッションを作っていたが、この加工しやすいウレタンは、雨に濡れる、水をこぼす、失禁して尿で濡れると、変質して型崩れをおこし、品質を保てなくなる問題があった。また、冬は暖かいが、夏は暑くて快適性が低い。汗をかくため、ウレタンが変質することを嫌い防水カバーを装着すると、今度は汗で水たまりが出来てしまうジレンマが。ラリー経験者で人一倍シートへのこだわりの強い織田さんは、本業とは異なる福祉分野ではあったが、新規事業の柱を何か作りたいと思い始めていたこともあり、作ることは素人だが、ウレタン一択の車いす座面業界に今までにない選択肢の可能性を感じ自作してみよう、と思い立つ。

ウレタンではない素材でクッションを作れないかと取り掛かってみたがとても難しかった。石川県工業試験場に問い合わせ、3Dプリンターを使ってクッションを製造する相談をしたところ、「1グラムで150円ぐらいかかり、採算が合わないからやめなさい。」と忠告される。作りたいクッションは1kg以上あるため、15万円になってしまう。本当にそんなにかかるのかと疑念を抱き、ネットで検索してみたところ、確かに東京に1g150円ぐらいで試作する会社があった。次に材料はどれぐらいするのか調べると、1kg5千円ぐらいで販売されていた。なぜ1g5円の材料が、試作すると1g150円に化けるのだろうか。そこで、3万円程度の安価な3Dプリンターを購入し、実際に試作してみると、滅茶苦茶時間がかかることがわかった。これは材料費が高いのではなく、プリンターの使用時間・減価償却費・作業手間賃が上乗せされているのだと知る。
そこで、国の事業再構築補助金を活用し、保温箱付の3Dプリンターを6台購入し、1日でクッション1個ができあがるように、4分割して製作することに。これで簡単にクッションが作れると思ったが、最初は柔らかいエラストマー素材にも関わらずカチカチなものが出来上がってしまい、クッションにはならず、プラスチックの塊ができた。建築に使われるラティス構造・ジャイロイド構造で、空気を通す穴は一杯あいているから、柔らかくさえできればクッションになると、諦めずに試行錯誤をさらに繰り返す。柔らかくなり過ぎると今度はフニャフニャ過ぎて使い物にならないなど、最初の失敗から1年余りの月日をかけて、ようやく写真の青い見本の最適な柔らかさのものができあがる。ところが、障害のある人は皮膚が弱く薄いため、この形状では網目が大きすぎて跡が付いて皮膚が荒れると指摘され、最終的に写真一番右の細かい模様の形状のクッションに辿り着く。

次なる課題は、福祉用品における縫製の壁。クッションは障害のある方一人ひとりのオーダーメイドで、クッションの形状が全て異なるため、クッションカバーは量産できず、現物を見ながらベテランの職人さんが手縫いするのが、この世界の常識だった。全てハンドメイドのため2週間から3週間を要する。この工程を簡略化できないかと考えた織田さんは、3Dスキャナーを導入し、三次元で図面を描き、それを展開図すなわち型紙を作り、縫製工場にそのデータを送る仕組みを確立する。型紙があれば、現物に合わせて手縫いするベテラン職人でなくても縫製することができるようになり、スピードアップが可能となった。ISICOのR4いしかわ次世代創造ファンド(デジタル化技術開発支援)に縫製研究が採択され、研究費用が捻出出来たことも後押しとなった。

この商品「zAAkix」が出来上がった際、石川県リハビリテーションセンターからバリアフリー社会推進賞に応募することを薦められ、応募したところ福祉用具部門で最優秀賞を受賞する。TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)という原料は同じだが、3Dプリンターの設定をいろいろと工夫することで、出来上がりの柔らかさを調整できる。3Dプリンターは下から順に原料を積み上げていくため、いきなり天井は作れず、中も空洞のままではクッションにならないことから、中のインフィルを細かく埋めていくことで、上面もきれいに仕上がることを、自らの果てしない試行錯誤の日々の取り組みの中から見つけ出したのである。

令和5年に成長戦略ファンドの認定を受けてから、この3年あまりの間に、形の大小はいろいろあるが、トータルで400個近くを販売。福祉施設や病院もさることながら、最も成約につながるのは展示会への出展とのこと。先般も東京での展示会「キッズフェスタ」に出展した際に、他県の同業者から首の座らない子供用の通気性の高いヘッドサポート(ピロー)の制作を依頼され、OEM製品として販売中。枕の上だけでなく底面にも穴が開いているこの製造手法は、誰も真似ができない織田さんが独学で開発した企業秘密でもある。

一人ひとりのからだの状態や症状を細かく分析し、何度も何度もやり直す試行錯誤を繰り返し、最終的に使う人にベストフィットするクッションに仕上げる、まさに痒い所に手が届くモノづくりに邁進し、多くの人たちから感謝されている。しかも最初の細かな測定から最後の納品まで、全て織田さん一人の手で責任を持って完遂されるため、使用する側も信頼して使うことができる。そう考えると、文字通り自分の体系や体質に合せて3Dスキャンしたデータを基に制作されるクッションは、自分のためだけのクッションであり、ジャストフィットするのである。

福祉分野の商品は、一般向け商品と異なり、そんなに数が出ないのが難点で、なかなかコストダウンを図ることが難しく、販売価格も割高な商品になってしまうことは否めない。元々システムエンジニアである織田さんは、自ら製作した自社ホームページにアクセスしてくる人たちの検索キーワードを解析したところ、「耳褥瘡(みみじょくそう)」が圧倒的に多く、それに対応した枕が世の中になかったため、クッションの真ん中に丸い穴の開いた専用枕を商品化する。福祉分野に限らず、デスクワークで長時間座っている人、バス・タクシー・トラックのドライバーなど、自分専用のクッションがあれば、日々の仕事が格段に快適になること請け合いのため、自分専用のオーダーメイドで価格は高くなるものの、そうした潜在的なニーズは確実にあることから、そうした新たな市場をいかにして開拓していくか、次なる商品開発のテーマであり、織田さんの挑戦はまだ始まったばかり。


織田 岳郎 社長
| 商 号 | 株式会社 InterGate |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役社長 織田 岳郎 |
| 本 社 | 金沢市四十万町イ151 |
| TEL | 076-298-6266 |
| URL | https://intergate-j.com/ |