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地元産の食材・調味料、手作りにこだわり 安心・安全で美味しい商品をこだわりの分かるお客様に ~ 株式会社宮商
<令和2年度 いしかわ中小企業チャレンジ支援ファンド採択事業>
◇事業名
石川県産魚介(のどぐろ、たこ、がすえび、能登ふぐ)の旨みをさらに引き出す炙り昆布〆シリーズの開発と新たな販路開拓
◇商品名
炙り昆布〆シリーズ
◇開発の経緯
1979年に創業した海産物製造・販売の株式会社宮商は、2003年に画期的なオリジナル商品「鰤のたたき」を発売して以来、鰤のたたき本舗「逸味 潮屋」として、誰もが知る人気店に。
たたきと聞くと、かつおのたたきを連想する。それを鰤でもできないかと、商品化への試行錯誤を重ねる。炙り時間や手法をさまざま繰り返し、鰤のたたきを商品化する。魚を炙ることで、旨味と香ばしい香りがプラスされ、より一層美味しく食べることができる。
そうした商品開発の経験から、従来から販売している昆布〆シリーズにおいても、昆布で〆る前に、素材となる魚を炙ることで、旨み、香りがプラスされ、それを昆布で〆ることで相乗効果でより一層美味しい商品ができるのではないかと炙り昆布〆の商品開発に取り組む。
◇炙り昆布〆シリーズの商品化
2020年からコロナ禍になり、同社の売上で大きなウエイトを占める観光土産品の需要が危ぶまれる中、このタイミングで本腰を入れ炙り昆布〆の商品化に向けて始動する。能登で水揚げされた、のどぐろ、がすえび、たこ、能登ふぐ、甘えびを使って試作がスタート。魚を炙る作業は全て手作業のため、使う食材によって炙り時間をいろいろ変え、試行錯誤を繰り返し、焼き目がきれいに出て、なおかつ旨みが引き出される炙り時間を探り当てる作業に最も時間を費やす。
能登ふぐもタコも味が淡白なため、試食しながら下味付けの微調整を経て商品化。金沢で昆布〆と言えば、魚を昆布で巻いた形の商品が主流だが、同社の場合は観光土産品としての需要が多いことから、いわゆる変わり種として、白エビをおぼろ昆布で挟んだもの、がすえびを能登えびと命名した能登えびの昆布〆、小木の船凍イカは能登イカと命名し商品化。
他社に先駆けてこうした地元ならではのネーミングにもこだわっている。炙り昆布〆シリーズは、個食の市場ニーズに対応し、食材をスライスしたものを一回で食べきれる量だけパッケージし、手軽に買える価格帯に設定している。
◇食材の確保が課題
食材は地元石川県産の天然ものにこだわりたいところだが、自然が相手な上に、近年の地球温暖化の加速で、漁獲量が激減してきている。能登ふぐは輪島から仕入れていたが、能登半島地震で港が使えなくなったため、七尾港からの仕入れに変更。能登のタコとのどぐろも地震の影響で輪島港から入らなくなっている。以前は、蛸島港で水揚げされたがすえびのみを使っていたことから、能登えびという名称で商品化したが、炙り昆布〆では金沢港で水揚げされるがすえびを使用している。
食材である魚の確保面での苦労だけでなく、昆布〆に不可欠な昆布も北海道の収穫量が年々減少傾向にあることから、昆布の確保も近い将来難しくなりそうだ。天然ものの魚がなかなか獲れなくなってきていることが、原料確保の面で頭が痛い問題で、地元小木港の船凍イカはここ10年あまりで仕入れ価格が5倍以上に高騰している。
◇新工場を建設し、高まる需要に対応
コロナ禍が明け、北陸新幹線の敦賀開業効果で、観光客の増加も期待される中、現在の工場はフル稼働が続いている上に、設備が老朽化してきていたことなどを勘案し、西金沢駅近くに新工場を建設し、需要増に対応する。
同社の場合は、製造作業の大部分が手作業のため、新工場では作業スペースを拡張し、現在の1.5倍程度に生産能力のアップを図る。2024年夏から本格稼働する予定で、工場と合わせて本店と本社も移転する。本店は、現在の3倍程度の広いスペースになり、イートインコーナーも設け、近隣の方々にランチを提供する予定。生産能力がアップすることで、百貨店のギフト需要をはじめとした業務用卸の充実が可能となる。
◇能登半島地震で被災した能登を応援
能登半島地震が発生し、能登の仕入れ先が大きな被害を受けた。「能登のみなさんが復興するために、金沢で商売している我々が能登の食材を使用した商品を絶やすことなく製造・販売し、少しでも支えていくことが我々の使命だと思っています。首都圏の百貨店からも能登を応援するための物産展開催の要望が多く、各地の物産展等で能登の魅力を発信する一翼を担いたい。」と釜親専務は力を込める。
◇こだわりの商品をこだわりの分かるお客様に
可能な限り地元の新鮮な魚を確保し、調味料も地元ならではのもの、珠洲の揚げ浜塩田の塩、金沢の純米酒、大野の丸大豆醤油と、こだわるほどに価格は高めになるものの、納得できる食材、地元産の調味料、手作り、安全・安心、添加物不使用等々徹底したこだわりで作られた商品を求める客層をターゲットに、多少高くても品質と味が評価される商品づくりが同社の真骨頂。
『潮屋の商品は美味しいね』とお客様に言っていただける店であり続けるべく、「自信を持って提供できる商品をお客様にお届けするべく、商いに邁進していきたい。」と釜親専務は胸を張る。海外への輸出も石川県主催の商談会に参加し、少しずつ増えてきているとのことで、新工場完成で更なる飛躍が期待される。
釜親良裕 専務 新工場外観
◇事業者概要
・商 号 株式会社宮商
・代 表 代表取締役社長 宮元 崇
・住 所 金沢市西金沢2-168-1
・TEL 076-249-6989
・URL https://ushioya.com/