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地域の資源を活用し、手造りの独自商品で堅実な商い ~ 吉市醤油店

印刷ページ表示 更新日:2025年3月17日更新

地域の資源を活用し、手造りの独自商品で堅実な商い​​ ~ 吉市醤油店​

<令和3年度 いしかわ中小企業チャレンジ支援ファンド採択事業>​

事業名

K菌によりフルーティーに醸す甘酒と発芽大豆味噌などの開発と販売

商品名

焼酎白麹甘酒、発芽大豆全量麹味噌、手造り発酵キット

開発の経緯

1900年の創業以来、醤油、酒、味噌といった発酵食品の製造販売を生業としてきている吉市醤油店。5代目店主の吉田昇市氏は、得意技の発酵技術を応用したユニークな商品開発に積極的に取り組んできており、地元の剣埼なんばを原料にした辛み調味料「太古楽」は知る人ぞ知るオリジナル商品。同店は醤油も味噌も、麹菌づくりから自前でやることが他にない特徴。なおかつバリエーション展開を増やしたいと考えた吉田氏は、様々な麹菌を使った甘酒づくりに取り組む中で、焼酎の白麹菌であるK菌と焼酎の黒麹菌等、麹菌を替えることによって出来栄えが全く異なるものができあがることに興味を抱く。見た目は異なっても、実は使用している麹菌が違うだけで、他の原材料や分量は全て同じ。しかし、実際に麹菌を替えるだけで写真のようにこれだけの違いが。見た目だけでなく風味も全く異なる。そういう麹の個性、麹や発酵の奥深さを吉田氏は商品で表現したかった。

◇失敗は成功のもと​

今回の取り組みの一つである発芽大豆味噌は、自社で試作してみたところ、大豆が発芽する際の独特の癖のある発芽臭が強すぎて、味噌の風味が台無しになってしまったことから、商品化を断念する。もう一つの発酵トライアルキットは、試作品を作ってみたものの、製造過程において1年余りの期間を要し、家庭で求められている時短ニーズに逆行すること、一般家庭に定温で長期保管できる機器がないこと等から、売れる商品にするのは難しいと判断し取り止める。それでも、そうした取り組みがきっかけとなり、新たに粉末麹の商品化に取り組み、一部商品として販売し始めている。文字通り失敗は成功のもとなり。

◇141年の発酵のプロが成せる技​

醤油の麹は大豆と小麦、味噌の麹は米と、培地となる麹菌の種類を替えることでバラエティー化を図れることを表現したかったとはいえ、麹菌は生き物のため、麹菌からできる酵素をコントロールすることは並大抵ではなく、非常に難しい。同じようにやったはずなのに、同じように仕上がらないケースは多々あり、正に試行錯誤の繰り返しであったことは言うまでもない。それでも125年間の長きにわたり、発酵食品づくりに取り組んできている経験の蓄積があったからこそ商品化できたのである。

                     

◇ファッション系インフルエンサー長屋なぎさ氏との縁​

発芽玄米の麹甘酒を作るにあたり、自社で玄米を発芽させることにチャレンジしてみるも、なかなか上手くいかなかったことから、発芽させるプロであるもやしメーカーに相談を持ち掛ける。自社では上手くいかなかったが、発芽のプロだけに見事に発芽させてくれた。その時に、もやしメーカーから同社とコラボしていたインフルエンサーの長屋なぎさ氏を紹介される。この麹甘酒シリーズの商品を見せたところ、強い関心を示し、長屋氏がプライベートブランド商品として販売してくれることに。さらに、商品展開を充実させるべく、チャレンジファンドの支援を受けて一連の商品開発に本格的に取り組み、このシリーズは順調に軌道に乗り、発売から3年余りで3万個近く販売している。

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◇新たな商品化に取り組み中​ 

同社が提供したK菌の麹を使って、金沢市の菓子店が小豆を入れたドリンクを商品化している。その取り組みを見た吉田氏は、自社の甘酒に小豆を入れて、いわば赤飯のような見た目の甘酒ができないかと試作中であるが、まだ商品化には至っていない。「絶えずいろんな可能性を追求し、試行錯誤を繰り返してきているものの、商品として完成し、日の目を見るのはほんの一部ですよ。」と苦笑する。創業以来、醤油の商いをしてきているが、麹から自前で作っている醤油屋は全国的にみても数少なく、酒造を明治・大正と営み、親戚にも味噌屋もいただけに、発酵と醸造のプロを自負している。

◇自分の名前で商いせず

楽天、アマゾン、ヤフーのショッピングページを見ると、吉市醤油店の商品がいろいろ販売されている。てっきり、同社が出店販売しているものと思っていたが、実は全て同社の商品を仕入れた会社が、それぞれのショップで販売しているのが実態で、吉市醤油店としては一切大手通販サイトでは販売していないとのこと。創業から百年以上経過しているが、自分の名前で商売してきていないという独自の商い手法に驚かされる。それにもかかわらず、同社の売上の約9割を醤油類が占める。「醤油の小売りは積極的にはやっていません。自分の名前を売って商売してこなかったから。原料の販売、食品メーカーにタンクローリーで納品、食品製造会社にオリジナルの調合をした専用醤油を納品する、他のブランドのラベルを作って卸すなど、いずれも自社の名前を売ることをやってきていません。だから問屋との取引も最近まではありませんでした。そのため、うちには営業は一人もいないし、醤油のセールスをしたこともありません。」と独自の商いを披歴する。

◇懐かしい鯛の醤油入れも製造

昔からお弁当に入っている鯛の形をした醤油入れがあるが、なんと同社ではプラスチック成型機を導入し、容器から自前で製造し、自前の醤油を入れて販売してきている。全盛期は多くの売上があった鯛の醤油入れだが、時代の流れ、コストカットの中で、スーパーのお寿司を買っても醤油が付いていないのが当たり前となり、必要のないモノは添えなくなり、需要が急減してきており、今では全盛期の5分の1程度とのこと。「いつ止めてもいいかなと思案し始めている。」とポツリ。醤油屋が全てやっている鯛ポリは恐らく日本で同社が唯一の存在だけに、何とか続くことを願ってやまない。​

◇六代目就任間近!?

大手醬油メーカーでの修業を経て、吉田氏の長男が次期6代目を継ぐべく入社し、今は配送業務に就いている。「私自身がそうだったけど、子どもの頃から大きくなったら家業を継ぐものと思っていたから、敢えて意識したことはないし、私から後を継ぐことを頼んだわけでもないが、自然とそうなりました。」と父親の顔に。地道ではあるが、原料から製品になるまで、全て自分たちの手作りで、納得のいくモノづくりに徹している吉市醤油店のまっすぐな商いが、多くの小売店や百貨店のバイヤーの目に止まり、自社の名前を売らずして安定した商いで125年目を迎え、ホームページにて予告されている2020年代に6代目就任予定の表記が、あと5年以内に就任と書き換えられる日が楽しみである。

     吉田 昇市 店主

事業者概要

 ・商 号 吉市醤油店
 ・代表者 吉田昇市​​ 下谷内 充
 ・本 社 白山市安吉町78番地
 ・TEL 076-275-0908

 ・URL http://www.4c1.jp


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