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マーケットインの発想で市場が求める新商品開発に挑む!

印刷ページ表示 更新日:2021年3月1日更新

九谷窯元 結窯(有限会社ミランティジャパン)

  バブル崩壊、リーマンショック.コロナ禍と、度重なる荒波を受け、産地規模が縮小している伝統産業・九谷焼の業界にあって、異彩を放つモノづくり企業が、加賀市にある有限会社ミランティジャパンである。そもそも電気機器の製造でスタートした同社が、いまや九谷焼の業界に新風を吹き込み、注目を集める存在に。個性的なビジネス展開に取り組む二山冨士夫社長にお話を伺った。

九谷の業界に新風を吹き込む

 大手電機メーカーの加賀市にある拠点の一期生として、管理・営業・調達部門を長く経験してきた二山氏は、48歳で早期退職し、2004年に創業。2011年、下請け事業の電気機器製造以外のモノづくりメーカーとして、新たな事業をスタートさせたいと考え、ガラスに彫刻を施すことから手がける。そんなタイミングで、次女が九谷焼業界に嫁いだことで、同業界の親戚ができ、自社の彫刻技術を応用した九谷焼の表札や花瓶に名入れをするなど関係性が高まる。そんな中、業界における後継者難や、型制作の業者が1社しかない現状を知る。こうした現実を不安視する声が聞かれたことから、他産業の型開発技術に着目し、CADや3Dプリンターを導入し、3次元での設計と型を削る型開発事業に着手する。ところが、分業制が主流の九谷業界では、他産業から参入した当社にとって新規型と製造面での技術的課題の壁が多く、それを克服するためには、自社内で一貫して手がけることが必須と判断し、一貫生産体制ができるメーカーを志すことを決意する。もちろん、祖業である電機事業の柱があればこそ、ここまで思い切れたことは言うまでもない。   

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九谷焼の新たな可能性に挑む

 九谷焼業界では、マーケットインの発想に基づいたモノづくりが乏しいと痛感した二山社長は、この分野に特化していくことで、まだまだ可能性があると考え、九谷焼の技術を継承しながら、付加価値や創造性のある新しいモノづくりにチャレンジする。水を吸い込む珪藻土のコースターが市販されているが、同社では、珪藻土とは全く異なる磁器でありながら、配合と焼き方を工夫することで、水を吸い込む陶磁器のコースター等を九谷焼技術センターと共同開発。陶磁器なので、手描きはもちろんのこと転写でも絵付けが可能で、さまざまな分野への展開が見込める。九谷焼の世界は素人同然でのスタートだったため、窯元や県工業試験場、ベテラン職人や作家に教えを請い、日々の研鑽を積み重ね技術力に磨きをかけてきている。

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瓢箪から駒を出す

 2019年のISICOブースでギフトショーに出展した会場で、ワイヤレス充電器メーカーが、充電器に被せるプラスチックシートに、いろんな柄をプリントしたものを壁面に飾っていた。それを見た二山社長は、『和』のデザインがないことに違和感を感じ、「九谷焼の和のデザインに興味はありませんか」と声をかけ、のちに商談の場を持つこととなる。陶磁器業界では、歪みを理由として、これまで薄い板状の陶板を手がけるところはなかったが、ガラスのフォトフレームに彫刻していた時、この薄さの九谷焼のフォトフレームができないかと思い立ち、敢えてその薄さに挑戦し、3mm、4mm、5mmの陶板試作品が完成する。

 のちの商談時に、当初九谷焼のデザインをプラスチックシートに施す提案をする予定だったが、たまたま持参していた試作陶板を充電パットに載せ、スマートフォンが充電できるか試したところ、5mm・4mmはできなかったが、3mmは磁力が透過し、充電できることを偶然発見する。それを機に、デザインの提供から『九谷焼ワイヤレス充電器』の開発に方向転換。陶板はさらに強度を加味した限界値で2.3mmまで薄くすることに挑む。ここまで薄くして焼くと、焼成過程でどうしても歪みやソリが発生し、なかなか平らに焼き上がらなかった。そこで、歪みが出ることを型づくりの段階から想定し、何度も何度も試行錯誤を繰り返し、3ヶ月あまりで平らな状態で焼き上がる型と成形方法を発見し、商品化にこぎ着ける。当初は、フォトフレームの外枠に使えないかと開発した陶板だったが、思わぬところから予期せぬ新商品が誕生する。

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プレミアム石川ブランドに認定

 伝統工芸・九谷焼と、日々の生活や仕事に不可欠なスマートフォンを充電するワイヤレス充電器がドッキングした、新たな九谷焼の商品開発が高く評価され、令和2年度のプレミアム石川ブランドに認定される。「おかげさまで新聞やテレビの取材を受け、それがニュースになることで、世間から注目してもらえ、当社の知名度アップにつながったことが何よりもありがたい。」と顔をほころばす。認定を受けたおかげで、セッション石川にも参加することができ、当社のモノづくりにさまざまなアドバイスをもらえるだけでなく、ビジネスマッチングのチャンスも増えるなど、新たな可能性の広がりにも感謝することしきり。

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自社一貫生産の強み

 現在、角型陶板の裏側に柱構造のリブを入れ、表側に反り返ろうとする力を逃がす試作にも取りかかっており、こうしたことが全て自社内できることが同社の強みに他ならない。そのおかげで、このような課題にぶつかった時も、比較的スムーズに対処でき、商品開発の期間短縮に貢献している。CADによる型設計・NC加工、デジタルスキャナによる設計、3Dプリンターによる原型製作といった、三次元のモノづくりやデジタル製版・特殊印刷の技術を駆使し、さらに彫刻技術や電装技術を融合した自社一貫生産体制を構築し、なおかつISO9001も取得済み。職人がいないことで、モノづくりを平準化するため、誰でもができる仕組み作りの必要性を感じ、ISO9001を基盤とした陶磁器の開発、製造、販売で、業界トップを目指す。

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販路開拓に腐心

 九谷焼はカタログ販売が主体だが、同社の商品は食器でも置物でもないため、従来の食器を主とした販路とは異なる新たな販路を開拓することが、最大の難関である。九谷焼スマートフォン充電器は、雑貨やギフトの販路となるため、新たなルートの開拓に奮闘中。丸型タイプのものが6000円(税別)~、スタンド型タイプは7500円(税別)~。九谷焼でこんな商品ができることを多くの人に知ってもらいたいとの、同社の情熱価格であることを強調したい。日々使うものに、九谷焼の加飾という付加価値に魅力を感じる年代がターゲットとなりそうだ。九谷焼が美術的価値の高い嗜好品であるとの位置づけをいかにうまくアピールできるか、ここが成否の鍵を握っている。ネット通販に注力すると同時に、ホテルや旅館の客室やフロントに、顧客サービスの一つとして設置してもらい、お客さんが使ってみて気に入れば、売店で購入できるような流れを提案営業していくことも検討している。

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地球環境に優しいモノづくりに邁進

  もちろんこの陶板は、建築資材として壁面に貼ることもでき、お香を焚く置き台としても使える。九谷焼だから器という固定観念から離れると、さまざまなものに応用できる。近年、盛んに提唱されているSDGs(持続可能な開発目標)も同社の取り組みに追い風に。脱プラスチック、プラスチックのものを陶器に置き換えていく、多少価格がアップしても、地球環境を守るためには大切なこと。そのことを自社の商品開発を通して世の中に発信、アピールしていくことを、これからの企業活動の大きな指針に掲げる二山社長。社名のミランティは、タイ語で「幸せの花」の名前の意とか。企業活動を通して、九谷焼産地に、社員に、取引先に、幸せの花を咲かせてもらいたい。

ミランティジャパン 工場外観     二山社長

工場外観                         二山社長       

 

会社情報

 
社名 有限会社ミランティジャパン  
代表者 代表取締役  二山 冨士夫
住所

石川県加賀市打越町と73番地(開発・事務所)

石川県加賀市打越町と1番地1(工場)

TEL 0761-74-2888(代表)/ 0761-75-7151(九谷結窯)
URL

https://yui-koubou.com


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