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炭素繊維の新たな可能性を追求し、フレキシブルカーボンワイヤーを商品化!

印刷ページ表示 更新日:2021年12月1日更新

カジレーネ株式会社

   高度経済成長期、繊維王国と言われた石川県。バブル崩壊以降、下請け主体の本県繊維産業は厳しい環境が続いている。そんな中、いち早く自販に舵を切り、自社ブランド「TO&FRO」を皮切りに、TOMONE、K-3Bなど次々と自社ブランドを立ち上げているカジグループ。グループにおいて「織」を担うカジレーネ(株)が、炭素繊維の糸を加工したフレキシブルカーボンワイヤーを商品化し、令和3年度のプレミアム石川ブランドに認定される。同社のイノベーション事業開発室の本近俊裕さんにお話を伺った。

京都工芸繊維大学とカジグループのコラボで萌芽

 遡ること10年あまり前、カジグループの梶政隆代表が、次なる新製品開発につながるヒントを得るべく、京都工芸繊維大学工芸科学研究科先端ファイプロ科学専攻の仲井朝美准教授(現 岐阜大学工学部機械工学科教授)の研究室を訪れる。そこでスタッフの一人として研究に取り組んでいたのが、同大修士時代の本近俊裕さんで、この時がカジグループとの出逢いである。それから炭素繊維を使って新たな商品が開発できないか、カジグループとの共同研究がスタート。「とにかく前向きで、積極的に課題解決に取り組むチャレンジ精神旺盛な梶社長の人柄とリーダーシップに引っ張られ、研究者人生を歩むつもりでいた自分が、気が付いたら営業マン兼開発者としてカジグループの社員に転身していました。」と述懐する。現在は、カジレーネ(株)のイノベーション事業戦略室の炭素繊維関連領域の開発責任者を務める。

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加工工程で壁に直面

 CFRPという炭素繊維を織って樹脂で固めた強化プラスチックは、熱硬化性樹脂で、一度焼くと固まってしまうことから、同社は、あえて熱可塑性樹脂でCFRPを製造する研究に取り組む。炭素繊維に、樹脂繊維を混ぜ込んだり、フィルムで挟んで溶着させたり、樹脂の粉をまぶしたり、いろんな手法が行われているが、同社は糸を混ぜ込む手法を選択し、炭素繊維の加工糸を製造する。CFRPは既に様々な細かい技術が確立している。炭素繊維を使うことで軽くて強い部材を作る場合に、製造手順を教えれば、製品化はそんなに難しいことではないと本近さんは想定していた。ところが、いざ次の工程を担う現場に中間素材を納めてみると、それまでアルミを削っていた人、樹脂を削っていた人がCFRPを削ろうとすると、削り方が分からない、寸法をどう測ればいいか、塗装はどうしたらいいか等々の細かい問題が噴出した。これでは、同社が中間素材を提供しても、手の届かないところで問題が発生し、事業化が前に進まないという壁に直面する。

炭素繊維の糸+液状ゴム=フレキシブル

  そこで、一旦立ち止まり、自社内で最終製品に近いものが何かできないだろうかと再考する。炭素繊維の糸にバインダーとなる液状ゴムを染み込ませることで、フレキシブルになることから、そこに可能性を賭けて試行錯誤が始まる。炭素繊維はヨコの力にはあまり強くないが、長手方向の引っ張りにはかなり強く、その強度に対する試験評価は岐阜大学工学部の仲井教授の指導を賜る。炭素繊維の糸を使って何か最終製品ができないかと思い立ってから、約1年後にフレキシブルカーボンワイヤーが完成。炭素繊維の糸に液状ゴムを染み込ませ、乾燥工程を経て巻き取る一連のラインで生産される。

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ISICOを介して株式会社三ツ星と協力

 商品化第1号として、大手電線メーカー(株)三ッ星と協力し、電線ケーブルの芯に使用し、その周りに銅線を巻いた高強度のフレキシブルカーボンワイヤーを使用した電源ケーブルができあがる。この開発した商品は、中部経済産業局が主催する「コンポジットハイウエイアワード2020」の製品・評価技術部門において、CFRPを用いた製品としてグランプリを受賞。それに続き令和3年度プレミアム石川ブランドにも認定される。

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新たな可能性と驚きを市場に

 次なる商品として、同社が取り組み始めているのは、フレキシブルカーボンワイヤーが素材として代用できる分野として考えられる、建築用の耐腐食ロープ、水中ポンプの給電ケーブル、自転車のブレーキケーブル、釣りの電動リールのワイヤー等々、長手方向への引っ張り強度の強さを発揮できる分野への可能性をテストすると共に、さまざまなスポーツ、アウトドア、建築資材の大手メーカーへの営業もスタートさせている。鉄系ワイヤーと比較して引っ張り強度が2倍で重量は4分の1という、軽量で強靱、そして価格もリーズナブルをキーワードに、将来的には医療の分野でも代用できる可能性があるようにも思えてならない。繊維の分野に限らず様々な分野の企業と連携することで、これまでになかった、こんなことにも使えるんだという新たな可能性と驚きを市場に発信していってもらいたい。「とにかくスピード感を持って、来年度1年間で黒字化することを目標に、まっしぐらに邁進あるのみです。」と決意を新たにする本近さん。こうした商品開発を通して、石川発の炭素繊維の新たな可能性を全国に発信すると共に、合繊長繊維織物に次ぐ新たな繊維産業の柱に育っていくことを願わずにはいられない。

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水中ポンプ給電ケーブル          本近 俊裕氏

 

*CFRP は「Carbon Fiber Reinforced Plastics」の略。炭素繊維強化プラスチックの意。

会社情報

 
社名 カジレーネ株式会社  
代表者 梶 政隆
住所 石川県かほく市高松ノ75-2 
TEL 076-281-0118
URL https://kajigroup.co.jp

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