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輪島塗の骨筒「そうじゅ」で温もりのあるご先祖供養を提案!

印刷ページ表示 更新日:2021年12月1日更新

漆の郷交流館

   石川県の伝統工芸品を代表する輪島塗。1991年のピーク時に180億円あった生産額は、2020年は86%減の25億円に、輪島塗に関わる工房数は前年比1割減の431カ所、塗り・蒔絵職人は16%減の1100人と、厳しい環境下にある輪島塗産地。そんな中、コロナ禍の影響もほとんどなく、堅調な商いで元気を発信しているのが、漆の郷交流館を運営する(株)大藤漆器店。これまでありそうでなかった輪島塗の骨筒を開発し、令和3年度のプレミアム石川ブランドに認定される。漆の郷交流館代表兼大藤漆器店専務取締役の大藤清氏にお話を伺った。                               (出典:令和2年刊行 輪島市統計書)

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はじまりは父親の葬儀

 大藤さんの父親が十数年前に他界した際、火葬されたあと骨箱に骨を入れると、少し入りきらない骨が。そこで、火葬場の人に「この入らずに残った骨はどうするのか」と尋ねたところ、「一般ゴミとして処理します」との返事に愕然とする。「亡くなった人の骨がゴミ!!!」と言葉を失う。その後も友人の葬儀で同じ場面に直面し、家族がそれぞれにハンカチなどで、遺骨を小分けにして持ち帰る姿を目の当たりにする。それ以来、何か遺骨を粗末にしなくて済むいい方法がないものか。そんな思いを抱き続けていた時に出逢いが。たまたま東京の粉骨業者が、輪島塗で骨壺を作れないかと、何軒か廻ったものの、どこにも相手にされず、逆に「輪島塗に骨を入れるなんて!!」と叱られ、諦めかけていた。その後、偶然にも漆の郷交流館の前を通りかかり、その名前に導かれるように中に入り、大藤さんに事の経緯を語る。大藤さんも「実は私もそうしたものができないかと思っていたところです。」と意気投合。それまでステンレスの容器を作っており、それが輪島塗の一輪挿しと形状が同じだったことから、先方が一輪挿しを参考品として購入して東京に戻ったのち、「是非、この形で作って貰えないか。」との依頼を受け、2019年に輪島塗の骨筒制作がスタートする。

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                     粉骨見本   

試作品づくりは試行錯誤の連続

 一輪挿しは、円筒形の原木を上から3分の1の深さまでしか削っていないのに対し、骨筒にする場合は底に近いところまで削らなければならない。しかも遺骨はパウダー状にし、何CCという細かな単位で納めるのに対し、塗り物である輪島塗は木に布着せをすることもあって薄く作るには限界がある。それでもミリ単位で微調整を繰り替えし、ようやくこれなら商品になると思える試作品ができるまでに2年あまりの歳月を要する。筒を削れる業者は輪島に1軒しかなく、しかも職人でも均一に底部分まで削ることは至難の技であり、唯一そうした削りができる1台しかない機械で、何度も何度も試作を繰り返し、失敗を繰り返した中からようやく完成した労作。漆を塗る職人の手によって漆の厚みが微妙に異なることから、どこまでの厚みなら大丈夫かを見極め、ぎりぎりのラインをミリ単位で設定し、仕上げ作業が行われている。

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樹木葬だけでなく、自宅でも飾れるものに

  当初は、樹木葬で土の中に埋める設定で、縦で使用する場合は、蓋が取れなければ問題ないが、横にして埋める場合は、蓋の部分から雨水が入らないように、ぴったりと密閉できる蓋にする必要から、リングを2つ付けることで、水が入らない密閉状態を実現する。また、近年都会の人たちが、田舎の墓参りに行けないからと、墓じまいをするケースが増えていることに着眼。そうした遺骨を自宅のリビングに置いても違和感なく飾っておける商品であることに気付く。これまでありそうでなかった輪島塗の新たな用途開発であり、高齢化が進む日本にあって、これから需要が伸びる一方の商品に成りうる可能性を痛感し、石川ブランド商品に応募することに。亡くなった親がいなかったら今の自分はいない。先祖を大事にするのは当たり前のこと。そう思い続けてきた大藤さんの熱い思いが形として結実する。しかも、天然木、天然漆を使用しているため、樹木葬で土に埋めても自然環境によく、何百年後には土に還るSDGsな商品でもある。

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輪島塗は高い。この先入観の打破

 もう一つ、大藤さんがかねてから大きな課題として悩んでいたのは、「輪島塗は高い、高くて買えない。」この先入観を打破すること。従来の輪島塗は、車に例えると、いろいろオプション装備を供えた高級車しか販売していない。そうではなく、軽自動車から販売し、お客さんの意志で、オプションを付けることで、いくらでも高級車に仕上げられるという逆転の発想だ。それを実現すべく、この骨筒は、黒または朱の漆を塗っただけの基本商品の価格は3万円(税別)に設定。そのかわり、蒔絵や沈金といった加飾をオプションでいくらでも追加でき、人間国宝に依頼すれば、それこそ100万円を超える高価な商品にもなる。この実に合理的で分かりやすい価格設定こそが、これまでの輪島産地に欠落していたことである。

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プレミアム石川ブランドとして順調な滑り出し

 販路について伺うと、「葬儀チェーンの本社、お寺の本山を廻って骨筒を紹介することで、全国のチェーン店、全国のお寺に広まり始めています。中には、この骨筒を納骨堂に飾ったところ、お参りに来た人たちに好評で、骨筒がワインのようにずらりと並んだ納骨堂もでき始めています。」と笑顔に。販売開始からの1年あまりで、既に350本あまりを販売。樹木葬と自宅に飾る人と半々の比率とか。NHKのTVで中部地方に紹介された際には、県外から問い合わせが多数入り、来春にはBSNHKで骨筒の製造工程が紹介される予定で、そうなれば全国に知れ渡ることに。宗派によっては、四角い箱で統一されているところもあり、輪島塗で同サイズの箱を作るオーダーメイドにも対応し好評を得ている。「あちこちに営業する際、何か付加価値を付けられないかと思っていた時に、プレミアム石川ブランドの認定をいただき、県がお墨付きを下さった商品として、営業しやすくなりました。」と感謝することしきり。この筒を塗るには高度な技術が求められることから、この商品を伝承していくことで、若い職人が練習を重ねて腕を磨くことにつながることも視野に、職人の後継者成にも余念がない。

漆の郷交流館 大藤清専務    

漆の郷交流館             大藤 清 氏

会社情報

 
社名 漆の郷交流館  
代表者 大藤 清
住所 石川県輪島市河井町24部11
TEL 0768-22-3800
URL https://urushinosato.jp/​

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