本文
食の安全・安心に対する関心の高まり、あるいは食料自給率の低下などを背景に、「食」や「農」をキーワードとした事業が、将来有望なビジネス分野として注目を集めている。食品や農産物に関する地域資源に恵まれた石川県内でも、こうした取り組みが活発化してきた。農商工連携や新分野進出をサポートする「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」や「建設業複業化支援プログラム」を活用して、新事業にチャレンジしている2社を紹介する。
土木建設業などを手がける高田組では、能登ワインの原料となるブドウの栽培に乗り出す。今秋から来年2月にかけて、同社の村山隆社長が所有する1.5haの遊休地を整地、土壌改良した上で、白ワイン用のシャルドネ種1,600本を植え付ける。高田組の農業参入は、県が建設業者の新分野進出を後押しする「建設業複業化支援プログラム」に認定されている。
同社がブドウの栽培に取り組む理由の一つは公共事業の減少にある。公共工事による土木、建築の仕事は平成3年頃をピークに年々減っており、現在の受注高は当時の1/3~1/4 にまで落ち込んでいるという。「今すぐに農業を本業にしようと考えているわけではないが、余力のある今のうちに複業化に取り組み、ノウハウを蓄積していきたい」。村山社長はそう考えて、農業参入を決断した。
また、村山社長がワインを醸造、販売する能登ワイン(株)の社長を務めていたことも一因だ。
能登ワインは、赤ワインが全体の85%を占めており、白ワインが極端に少ない。白ワイン用のブドウは能登特有の赤土と相性が悪いと考えられていたこと、そして手間がかかるわりに収穫量が少なく、敬遠されてきたことが原因だ。
しかし、能登ワインが穴水町で醸造を始めて3年。白ワインの評判もよく、赤と白をセットで購入する消費者も増えてきたことから、次第に白ワインの増産が課題となってきた。
そこで、村山社長は平成14年から1haの畑で個人的に白ワイン用ブドウの試験栽培を始めた。ブドウの木がワイン醸造に適した房を付けるには4~5年かかることから、昨年初めて、約1tのブドウを収穫。この取り組みを企業全体に広げる。
「余分な水を逃がすための暗渠排水の設置などを除けば、土木建設業のノウハウが農業で生かされることは少ない」。村山社長はそう話すが、複業化する上で好都合なのは、それぞれの繁忙期がうまくずれている点だ。
土木や建設の仕事は公共事業が多く、それらが忙しいのは10月から翌年3月にかけてである。逆にブドウの栽培は4月から9月に手がかかる。それゆえ、年間を通じて、従業員を効率よく配置することができるのだ。
高田組では昨春から週に数日、2~3人の社員を農作業に従事させている。生育状況や天候を考慮し、風通しがよくなるよう余分な葉を取り除いたり、堆肥や消毒をまいたりと、自然が相手の仕事に最初はとまどいも見られたが、日々成長していく様子に面白みを感じてくれるようになったという。工事現場のように、その日の状況を写真付きの日誌で記録。ホームページを立ち上げて、こうした情報を消費者向けに発信する計画も進行中だ。
栽培が難しいだけに、白ワイン用のブドウは赤ワイン用に比べて買い取り価格が高く設定されている。とはいえ、面積当たりの収穫量はまだまだ低く、採算がとれる状態ではない。高田組では、1ha当たり8tの収穫を目指して、取り組みを本格化させる。
企業名 | 株式会社 高田組 |
---|---|
創業・設立 | 設立 昭和62年6月 |
事業内容 | 土木建設、水道施設、造園、管工事 |
関連URL | 関連URLを開く |
---|---|
備考 | 情報誌「ISICO」vol.48より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.48 |