水やり不要の屋上緑化基盤材「建設技術審査証明」を取得

明日へのチャレンジ

建設総合サービス業の(株)トーケンは、厳しさを増す建設業界にあって、躍進を続けている元気企業である。そんな同社が、事業の新たな柱として力を入れるのが環境事業だ。核となる屋上緑化基盤「グリーンビズ-G」は昨年12 月、国土交通省が所管する(財)都市緑化技術開発機構から「建設技術審査証明(都市緑化技術)」を取得。環境分野は注目度が高く、今後も成長の見込める市場だけに、国のお墨付きを得て、販路開拓にますます拍車がかかっている。

国のお墨付きで販路開拓に追い風

　「グリーンビズ-G」とは、微細な気孔を持つ「超微多孔セラミックス材」に土を盛り、セダム類などを植栽した屋上緑化基盤である。このセラミックス材には0.1ミクロンから数ミリ大の気孔が無数にあるため、優れた吸水性や保水性、断熱性を有する。屋上に敷設すれば雨や夜露を気孔にため込み、乾燥や気温の変化に強いセダムなどの植物を植えておけば、水やりをしなくても生育が可能だ。
　超微多孔セラミックス材は小松精練（株）（能美市）と（株）アースエンジニアリング（金沢市）が開発、製造。（株）トーケンが植物を育成して屋上緑化基盤に仕上げ、販売、施工する。
　今回取得した建設技術審査証明では、保水性や水の拡散性、断熱効果など、右記の5点について審査を受け、証明書を交付された。
　この証明は民間企業が開発した新技術を学識経験者らが客観的に審査するもの。審査には石川県工業試験場、石川県立大学、金沢大学、金沢工業大学が実施した試験結果が用いられた。
　平成9年からスタートした審査証明事業で、都市緑化技術の認定は全国で8件目、屋上緑化事業では2件目となる。北陸では第一号の認定で、セラミックスを利用した技術の認定も初めて。平成22年度には石川ブランド認定製品にも選ばれた。
　（株）トーケンの根上健正社長は「ハードルの高い公的な審査証明を取得できたことは大変な喜び」と笑顔を見せ、「国や地方自治体、民間企業に安心して採用してもらうための大きな追い風となる」と販路拡大に向けて腕まくりする。

染色工場の廃棄物を利用　基盤材の機能をアップ

　そもそも「超微多孔」のベースとなった発泡セラミックス材は（株）アースエンジニアリングがISICOなどの支援を受けながら開発してきたもので、粘土や能登産の珪藻土、鋳鉄スラグなどを1,000℃以上の高温で焼成し、出来上がる。
　平成20年からは、中小企業基盤整備機構の新保善正地域資源支援プロジェクトマネージャー（当時）の橋渡しで小松精練（株）との共同開発がスタート。同社が微生物を用いて工場排水を処理する際に発生する廃棄物「余剰バイオマスケイク」を原材料に混ぜることで、気孔の密度が高まり、強度が1.5～2倍にアップ。製造コストも従来品に比べ約10％低減した。
　小松精練（株）の関連企業である（株）トーケンが参画し、販売を本格化したのは平成21年のこと。（株）トーケンでは小松市鶴ヶ丘町に常設展示場をオープンさせると同時に、ビニールハウス5棟で緑化用植物を栽培。建設業で培ってきたネットワークや技術を生かして、販路開拓や屋上への敷設を行う。
　屋上を鮮やかなグリーンに変えてくれるだけでなく、優れた断熱性で夏の暑さや冬の寒さをやわらげ、省エネやCO2の排出削減に役立つとあって、北陸を中心に販売は順調に伸びている。首都圏や関西圏でも営業を強化するため、昨年2月には東京・銀座に拠点を設け、今年2月には大阪・梅田に常設展示場を備えた事務所を開設した。
　今後は超微多孔セラミックス材を屋上緑化だけでなく、室内緑化や壁面緑化にも応用する計画。新たに県内で排出される廃棄物を混ぜて強度を2倍にすることに成功しており、道路や歩道、駐車場の路面材などとして、緑化以外の用途での販売も見込む。
　「環境ビジネスには大きな可能性が広がっており、社会貢献にもなる」と話す根上社長。平成23年度には前年度実績の約2.5倍となる4億円の売上目標を掲げ、将来有望な事業の柱として期待をふくらませている。