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県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
西野製作所では、世界で初めて「ニューラルネットワーク(NN)」と呼ばれる人工知能を搭載し、高度な学習機能を有するピッチングマシンの開発に取り組んでいる。
このマシンは三つの円盤状のローラーを使ってボールを送り出す仕組み。ローラーの回転速度を変えたり、投げ込む角度を上下左右に変化させることで球速や球種、コースを制御する。ちなみに球速は80~160kmで、ほぼすべての球種を投げられる。
最大の特徴は、希望する球速、球種で、投げてほしいコースに投球する高い精度だ。あらかじめ人の手でローラーなどを設定して数十パターンの球を投げさせておくと、その後は投げた経験のない球でも、これまでのデータを基に人工知能がローラーの回転速度などを自動的に計算し、投げてくれる。コントロールの誤差はボール1 個分にとどまるという。前もってプログラムしておけば、実在する投手の投球パターンや過去の名勝負の配球を再現することも可能だ。
NNについては金沢大学理工研究域機械工学系の酒井忍助教と連携。石川県とISICOが実施する「いしかわ次世代産業創造ファンド」事業の助成を受けて開発しており、今年5月に県産業展示会で開催される機械工業見本市「MEX 金沢」でお披露目する計画だ。
西野製作所は昭和50年代まで、木工機械メーカーとして自社製品を主力としてきた。近年は、設計から資材の調達、加工、組み立てまでを一貫して手がける技術力が評価され、工作機械や産業機械の受託製造が主流となっている。
一方で、自社製品の強化にも挑戦し続けており、このピッチングマシンの製造もその一環だ。同社は北陸実業団バスケットボール選手権大会で通算13回も優勝するなどスポーツに熱心な企業である。西野十治社長も元バスケットボール選手で、プロ野球観戦が趣味。スポーツ好きが高じてピッチングマシンの開発に乗り出したというわけだ。
プロ野球や高校・大学の野球チーム、バッティングセンターでの需要を見込み、1台300万円で年間10台の販売が目標。西野社長は、このマシンで練習した選手がいずれプロで活躍することを夢見て、開発を進めている。
Message from Another Side 金沢大学理工研究域機械工学系・バイオニックデザイン研究室では、知的ピッチングマシンの開発研究に取り組んでいます。 国立大学法人金沢大学 バイオニックデザイン研究室 |
企業名 | 株式会社 西野製作所 |
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創業・設立 | 創業 昭和24年6月 |
事業内容 | 工作機械、産業機械、木工機械などの製造、販売 |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.56より抜粋 |
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掲載号 | vol.56 |