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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
ハンドメイドの時計を企画、製作するシーブレーンでは、3年前から伝統的な技術を取り入れ、日本の美意識を表現した腕時計「はなもっこ」シリーズを新たに展開し、好評を博している。
同シリーズの文字盤は、大きく二種類に分けられる。一つは日本画を描く際に用いられる岩絵の具で彩色した文字盤だ。これは日本画家としても活動する同社の社員の手によるもので、薄手の手すき和紙に、接着剤の役割を果たすニカワと混ぜた岩絵の具を幾重にも塗り重ねて製作する。岩絵の具は主に鉱物を砕いて作られており、その粒子がきらきらと独特の輝きを放つ。
もう一つは漆塗りを施した文字盤である。漆塗りは輪島塗や山中塗器の職人が手がけ、つやのある呂色(ろいろ)仕上げとなっている。
これらをベースに、和紙や蒔絵(まきえ)、螺鈿(らでん)で図柄を描いたり、金箔をちりばめたりして多彩なバリエーションを生み出している。
ベルトにはシンプルな革製に加え、最高級の絹糸を使った草木染めの組紐を採用。腕時計は簡単にベルトの交換ができるようデザインされており、ファッションや季節に応じてコーディネートを楽しめる。
価格は22,995円から53,025円。現在、銀座三越や文具専門店の伊東屋銀座本店、古美術を専門に展示する根津美術館(東京)など、首都圏を中心に19店舗で販売しており、じわじわと人気が広がっている。
そもそも同社は、中学校で使われる技術家庭科の実習用教材を製作、販売している井波人哉代表が「手作りの良さを多くの人に広めたい」との思いで設立した。創業以来、ファッション性に優れたオリジナル腕時計を製作し、約15年で6万個以上の販売実績を有する。
はなもっこシリーズは「伝統工芸の世界観や日本古来の美意識を優しく、美しく伝えたい」(井波代表)との考えから製作をスタート。いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)の支援を受けて、商品開発や販路開拓に取り組み、平成22年度には「石川ブランド優秀新製品」銅賞、「金沢ブランド優秀新製品」大賞にも選ばれた。
文字盤を彩るのはどれも日本古来の色であり、井波代表は「今の時間を確認するために腕時計を見て、いにしえの時に思いを馳せてほしい」と笑顔を見せる。
これまで女性用だけを製作してきたが、現在は、今春発売に向け、大ぶりな男女兼用タイプを開発している。また、九谷焼の絵付けの技術を取り入れた文字盤も試作中だ。
井波代表は「ハンドメイドは一部の人が趣味で買うというイメージが強いが、普段づかいできる“はなもっこ”を手始めに多くの人にその良さを感じてもらい、伝統工芸への興味も深めてもらえれば」と期待を寄せている。
企業名 | 有限会社 シーブレーン |
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創業・設立 | 創業 平成6年11月 |
事業内容 | ハンドメイドによる時計の企画、製作、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.56より抜粋 |
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掲載号 | vol.56 |