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商工業を営む企業と農林水産業を営む生産者が協力して新たな商品やサービスを開発する「農商工連携」の取り組みが注目を集めている。単に農林水産物を売るだけでなく、企業が持っている技術開発力や経営ノウハウを取り入れることは、新商品開発や販路開拓などにつながり、地域経済を活性化させる効果がある。また、生産者にとっては生産効率の向上や担い手不足の解消につながるほか、企業にとっては新たなビジネスチャンスの可能性が広がる。
平成17年には改正農業経営基盤強化促進法が施行され、それまで制限されていた企業の農業参入が解禁されたほか、今年5月には生産者と企業が協力した事業展開を支援する農商工連携促進法が国会で可決されるなど、環境も整ってきた。ISICOでも、地域の産業化資源を生かした新ビジネスの創出を支援する「いしかわ産業化資源活用推進ファンド」を創設し、農商工連携による取り組みをサポートしている。
こうした状況の中、石川県内でも農商工連携の動きが本格化してきた。今回の特集では、建設業者としてはじめて農業参入を果たした(株)上野組と(株)麝香(じゃこう)重機建設、昨年から農業事業をスタートした(株)スギヨの挑戦を紹介する。
魚肉練り製品の加工・販売を手がけるスギヨでは昨年5月、七尾市能登島で農業事業を本格的にスタートした。平成17年に施行された改正農業経営基盤強化促進法による農地貸し出し解禁に伴う参入企業の県内第1号で、1年目はキャベツやニンジン、タマネギ、カボチャ、サツマイモ、ジャガイモを合計約70トン生産した。2年目となる今年は、農地面積を昨年の4.5haから11.5haに拡大し、ゴボウやアズキの試験栽培にも取り組んでいる。
6月には、能登野菜「沢野ごぼう」を生産する沢野ごぼう事業協同組合とオーナー契約を結び、約40キロを収穫する権利を取得しており、付加価値の高い商品開発に生かすと同時に、組合の生産ノウハウを自社の野菜栽培に反映していく方針だ。
農場長で野菜ソムリエの資格を持つ同社の半澤咲子係長は、「保水性とある程度の硬さを持つ能登島の赤土のおかげで、野菜が少しずつ育つので甘みが高い。農薬の使用も極力控えている」と、品質に自信を見せる。
収穫した野菜はすべて自社の製品に活用している。「新鮮な野菜をスピーディーに加工するため、昨年、自社工場内に野菜カット設備も整備した」と話すのは、農業事業での商品開発を担当する川上和孝課長だ。自社内でカットしているため、野菜そのものを販売する場合に比べて、大きさや形で区別されることがなく、生産したものを無駄なく商品化につなげられるメリットもある。
今年1月には、魚肉に野菜を加えて揚げた人気商品「加賀揚」の材料に、栽培したキャベツやニンジンを使い、北陸地域限定で3カ月間販売した。パッケージには、「能登島野菜」の使用を示すシールを張り、産地をアピールしたところ、通常時よりも20%近く売り上げが伸びたという。地元でとれた野菜を加工し、地元の消費者へ届ける取り組みは、まさに地産地消のモデルケースとも言える。今後は既存の商品に使用するだけでなく、安全性と健康面にこだわった新商品の開発も進めていく。
順調な滑り出しを見せたスギヨの農業事業は、生産から加工、販売にいたるまでトータルにかかわることで、より安全・安心でおいしい食品を消費者に届けることが目的だ。
さらに、農業事業を通した地域振興も大きな狙いのひとつで、農業事業を統括する室屋雅啓取締役は、「当社のコアとも言える練り製品事業は世界的に展開している事業だ。一方で、地域に根ざした取り組みも当社では重要だと考えている」と強調する。例えば、パッケージに張った「能登島野菜」使用を示すシールもその一環で、加賀野菜や能登野菜のように能登島産をブランド化していく取り組みだ。
加えて、同社では5年以内をめどに、能登島だけでなく、奥能登にも20ha規模の農地を整備する方針。現在、スギヨの野菜年間使用量に対して約14%程度となっている自社栽培の比率を高め、ゆくゆくは農業事業を本社から切り離し、若手をトップとした農業法人の設立も視野に入れている。
生産・加工から流通・販売まで1次から3次までをカバーした6次産業の確立は、魅力ある雇用の場の創出につながる。若手人材の都市部への流出に歯止めがかかれば、地域活性化にも一役買うことになる。農業事業を核とした世界戦略と地域戦略を両翼に、スギヨでは、さらなる上昇気流をつかもうとしている。
企業名 | 株式会社 スギヨ |
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創業・設立 | 設立 昭和37年1月 |
事業内容 | 水産練り製品・加工品製造販売、冷凍魚塩干魚等の販売、惣菜類の製造販売、菓子製造販売など |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.41より転載 |
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掲載号 | vol.41 |