ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 情報誌ISICO > 【巻頭特集】“農商工連携”で見えてきた新ビジネスのきざし 軽量で手入れも簡単 防草、緑化用のコケを栽培

本文

【巻頭特集】“農商工連携”で見えてきた新ビジネスのきざし 軽量で手入れも簡単 防草、緑化用のコケを栽培

印刷ページ表示 更新日:2012年1月16日更新

巻頭特集

 商工業を営む企業と農林水産業を営む生産者が協力して新たな商品やサービスを開発する「農商工連携」の取り組みが注目を集めている。単に農林水産物を売るだけでなく、企業が持っている技術開発力や経営ノウハウを取り入れることは、新商品開発や販路開拓などにつながり、地域経済を活性化させる効果がある。また、生産者にとっては生産効率の向上や担い手不足の解消につながるほか、企業にとっては新たなビジネスチャンスの可能性が広がる。
 平成17年には改正農業経営基盤強化促進法が施行され、それまで制限されていた企業の農業参入が解禁されたほか、今年5月には生産者と企業が協力した事業展開を支援する農商工連携促進法が国会で可決されるなど、環境も整ってきた。ISICOでも、地域の産業化資源を生かした新ビジネスの創出を支援する「いしかわ産業化資源活用推進ファンド」を創設し、農商工連携による取り組みをサポートしている。
 こうした状況の中、石川県内でも農商工連携の動きが本格化してきた。今回の特集では、建設業者としてはじめて農業参入を果たした(株)上野組と(株)麝香(じゃこう)重機建設、昨年から農業事業をスタートした(株)スギヨの挑戦を紹介する。

土壌も肥料も不要 施工時の運搬も容易に

防草処理工事のモデル 写真 麝香重機建設では、河北潟干拓地に6,500平方メートルの土地を借り受け、スナゴケやハイゴケといったコケの栽培に乗り出した。育てたコケは、歩道の植樹帯などの防草用に利用するほか、将来的には屋上緑化や壁面緑化の資材として活用する計画だ。
 植樹帯は手入れを怠ると雑草が生えてくるため、定期的にそれらを刈り取る必要があるが、草花や樹木の周りにコケを植えておけば、雑草が生えにくくなり、メンテナンス費用の低減につながる。
 通常、芝やセダムが用いられる屋上緑化や壁面緑化についても、コケを用いれば水やりや雑草を手入れする手間が省けるので維持、管理が容易になる。
 また、屋上緑化用の資材は1平方メートル当たり60kgにもなり、既設の建築物に施工する場合、建物の強度を構造計算によって再度確認しなければならないケースがある。しかし、体全体で水分を吸収するため、土壌や肥料を必要としないコケならば、従来品の約1/10程度にまで資材を軽量化することが可能となり、構造計算しなくても済む上、施工時の運搬やり扱いも簡単になるという。コストは既存の緑化システムとほぼ同等の見込みで、もちろん、断熱効果など屋上緑化のメリットは、芝やセダムを使った場合と同様の効果を期待できる。
 同社の仕事の多くは公共工事によるものだが、公共工事の減少によって、売り上げこそ維持しているものの、利益は減ってきた。そのため、公共工事に依存しない事業の育成を急務としてきた。同社の麝香敏信社長は、「5年以内に1~2億円規模の事業に育て、将来は全国展開したい」とビジョンを描いている。

栽培技術は独自に研究 今夏、3,000平方メートルに植え付け

麝香社長(写真中央)と社員 写真 事業化のきっかけとなったのは、昨年初め、麝香社長がとある芝生の生産業者を訪ねたことだった。芝生を放っておいたら、コケに浸食されて困っている。そんな話を聞いた麝香社長は、コケは体全体で水分を吸収すること、根は体を固定するためにあり、土がなくても生育できることなどを知り、「芝生よりも強く、土もいらないのならば、コケを使った緑化ができるのではないか」という考えが頭に浮かんだ。
 全国を見渡しても、コケを大量に栽培している業者は見当たらなかったので、独自に育成することに決め、10種類以上のコケを試験栽培し、直射日光や乾燥に強く、管理しやすい品種を見極めた。かほく市や津幡町の協力を得て、公共施設内で試験を行い、防草効果を確認した。
 今年度は、3,000平方メートルの敷地にスナゴケやハイゴケを植え付ける計画にしている。今年植えたコケは、製品として活用できるまでに3年かかることから、かほく市内で数カ所、自生しているコケを確保した。当面の受注に関しては、自生しているコケを使って施工する。コケを活用した防草処理工事の施行例 写真当初は防草用の受注を取り込み、その間に自前のコケを育てると同時に、屋上緑化や壁面緑化のノウハウを蓄積する考えだ。
 まったくの異業種への取り組みに関して麝香社長は、「不安がないことはないが、じっとしているわけにはいかない。可能性があるものならば、何でも挑戦したい」と意気込みを見せる。コケの栽培そのものは初めてに違いないが、販路は土木や建設で培ったネットワークを生かすことができるのは強みだ。
 コケを使った緑化は全国でも例が少なく、石川発の新たな緑化システムの提案に期待が集まる。

企業情報

企業名 株式会社 麝香重機建設
創業・設立 設立 昭和26年3月
事業内容 土木建築業、とび工事業、土木・コンクリート工事業、コケを使った防草処理など

企業情報詳細の表示

関連情報

関連URL 関連URLを開く
備考 情報誌「ISICO」vol.41より転載
添付ファイル
掲載号 vol.41


月間アクセスランキングへのリンク

月間アクセスランキング
DGnet 企業情報/バーチャル工業団地/情報誌ISICO


アンケートフォームへのリンク

ViVOサイトへのリンク

活性化ファンド・チャレンジ支援ファンド商品開発ストーリー集サイトへのリンク

じわもんセレクトサイトへのリンク

DGnetサイトへのリンク