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石川県小松市を発祥の地として、世界企業へと飛躍を果たしたコマツ。
そのコマツが現在、来年1月の本格稼働を目指して、金沢港大浜地区で金沢工場の建設工事を急ピッチで進めている。
そこで、コマツの執行役員兼産機事業本部長の山田浩二氏に、新工場の特徴や金沢港の利用、協力企業への期待などについて語っていただいた。
金沢工場は、敷地面積が約115,000平方メートル、延べ床面積約15,000平方メートル。自動車メーカー向けの大型プレス機械の生産拠点として、70人体制で操業をスタートさせ、平成19年度は、100億円の売り上げを見込んでいる。
新工場の建設は、自動車ボディ用の大型プレス機械の増産対応を目的としている。これまでは、小松工場でまかないきれなかった量を海外企業に外注してきたが、金沢工場では、その量を受け入れると同時に、さらなる増産に応える体制を整えている。
コマツグループにとって、11年ぶりとなる国内新工場の建設にあたり、3つのコンセプトにこだわった。
一つは、納期の短縮である。人件費の高い日本が世界を相手にするためには、品質はもちろんだが、スピードが大事になることから、工数の低減などによって納期を従来の半分にまで縮める。
もう一つは、環境への負荷の軽減である。CO2やVOCなどの排出量を抑えて地球環境に配慮するほか、高さ24mにもなる工場を完全空調するなど、作業環境も改善される。
最後は、工場の「見える化」、「見せる化」である。見える化とは、ITを駆使して設備の稼働状況などを一目で把握できるようにすること。また、見学者が安全に製造工程を見て、視察できるスペースを設けて見せる化も図る。山田本部長は「地域の子どもたちにモノづくりの現場をぜひ見に来てほしい」と力を込める。
今回、コマツが金沢港の隣接地に進出した理由の一つは、当然、その立地にある。
金沢工場で製造された製品は、チャーター便を運航して、金沢港からアメリカやヨーロッパ、南アフリカ、タイなどに輸出するほか、内航船を使用して、名古屋港(愛知県)などに納入する。
金沢港では現在、水深13mの大水深岸壁の整備が進められており、平成20年10月には、水深12mでの暫定供用が予定されている。これによって、3万トン級の大型貨物船が入港可能となり、今後は、輸送の利便性が向上する。
これに合わせて石川県では、金沢港の航路拡充に取り組んでいる。山田本部長は「諸外国と定期航路を持つのが難しければ、国際的なハブ港となっている韓国・釜山港との定期便を増やすことも一つの手」とした上で、「地域の企業が利用しないと利便性は向上しない。そのために、コマツとしては100%活用していく」と使命感を燃やすと同時に、「他の地元企業にも、金沢港を最大限に活用してほしい」と支援を呼びかける。
物流面でのメリット以上に金沢進出を後押ししたのが、県内に集積している協力企業の存在である。
新工場の建設候補地としては当初、国際物流港として整備された常陸那珂港を抱える茨城県が挙がっていた。しかし、山田本部長は「私たちの仕事は協力企業がなくては成立しない」と話し、「石川県内に部品工場のクラスターが形成されていたことが最大の決め手だった」と進出の背景を明かす。
もちろん、県内の協力企業にとっても、コマツの存在は大きい。これまで協力企業は、KES(コマツ・エンジニアリング・スタンダード)と呼ばれるJISよりも厳しい品質要求に応え続けることで、技術力や生産管理能力を向上させ、販路を拡大してきた経緯がある。現在も、コマツの好況を追い風に、設備投資を活発化させている。
協力企業に対して、山田本部長は、「私たちはどこよりも高精度な加工を可能にする世界でナンバー1の大型プレス機を製造している自負がある。QCD(品質・コスト・納期)はもちろんのこと、それぞれの技術分野で世界一を極める一流の企業になってほしい」と期待をふくらませる。
一方で、「部品単品を賃加工するだけでなく、前後の工程を含めて請け負ったり、さまざまな提案も増えてきた」と協力企業の開発力に対しても、さらなる期待をかけ、単なる上下関係でなく、パートナーと呼べる関係を、今後も強化していく考えだ。
現在、コマツの生産拠点は、国内では1府7県にまたがり、海外にも多くの工場を構える。山田本部長は、「その中でも石川県には特別なアドバンテージを感じる」という。それが、モノづくりの精神を大切にする地域性である。
石川県は歴史的に見ても、さまざまな工芸を繊細な技術で、丁寧に作り込んできた土地柄だ。それだけに、いかに独自の技術を編みだすかというモノづくりの文化が、広く根付いている。
こうした精神を持った優秀な人材を受け入れられる大学の多さも、メリットが大きいと指摘する。当然、このことは、コマツや協力企業への人材供給においても、大きな意味を持つ。
こうした環境をバックに、モノづくりのメッカとして石川県がさらに発展するには、「付加価値をつけたインフラ整備が不可欠」と山田本部長は強調する。
「例えば県下に4校ある産業技術専門校は、即戦力となる技術者を養成するのに役立っている。こうしたものを、工業団地の中心に整備し、技能教育した人材を企業に供給するシステムが構築できれば、石川県内の各工業団地に進出を考える企業も増えるはず」と提案する。石川県に対しては、産業集積に向け、より一層のバックアップに期待をかけている
企業名 | コマツ(登記社名:株式会社 小松製作所) |
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創業・設立 | 創業 大正10年5月13日 |
事業内容 | 建設機械、産業機械などの製造 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.31より抜粋 |
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掲載号 | vol.31 |