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業界を問わず淘汰の波が本格化するこれからの時代、経営者には逆境に負けない力強さが必要だ。
バイタリティーあふれる企業トップの素顔に迫り、経営哲学や新たな一手を聞いた。
佛田 利弘
株式会社ぶった農産 代表取締役社長
野々市町内に広がる約24ヘクタールの田畑で、米や野菜を有機栽培する。農業に携わるようになって24年。直営店やインターネットを通じた販路拡大、新規学卒者の雇用など、一貫して農業のビジネス化に取り組んできた。自家製みそを使用した漬物など加工販売にも熱心だ。平成13年には全国で初めて農業生産法人の株式会社化に踏み切った。
最近では、農作業以外の仕事にも精を出す。例えば、代表取締役副社長を務める(株)ジャパン・アグリ-カルチュア・マーケティング&マネジメント(JAMM/本社・東京)では、農産物のブランディングや販促支援など産地と消費者を結ぶためのソリューションビジネスを手がけ、全国各地を飛び回る。移動のため飛行機に搭乗する回数は、年に約100回だ。
こうした取り組みの背景には、このままいけば産業としての日本の農業が、ひいては私たちの食卓が大きなダメージを被るという危機感がある。
「今のところ、海外の農産物は安い人件費に支えられてコスト競争力を維持しています。しかし、その国だって経済発展とともに人件費は上がる。そうすれば農産物の価格も上がるし、自国での消費が増え、輸出量も減るでしょう。いずれ、中国産の枝豆が買えなくなって、代わりに安いシリアルをおつまみにビールを飲まなきゃいけないなんてことにもなりかねませんよ」。
そうならないために喫緊の課題となるのが農業の経営基盤の強化なのだ。おいしく安全な農産物づくりはもちろん、日本の農業が抱えるさまざまな課題の解決に向けて、日々、新たな構想を練る。消費者から出資を募り、事業資金を調達する農業ファンドもその一つだ。
それにしても、自社にとどまらず、日本の農業界全体に刺激を与えようとするパワーの源はどこにあるのか。「決してビジネスに対するモチベーションが高いわけじゃありませんよ。ただ、おいしいものを食べたいだけなんです(笑)。自分ですべてを作ることはできませんから」。
この9月には、石川県立大学の隣接地に建設された「いしかわ大学連携インキュベータ(i-BIRD)」への入居を予定している。ここは、産学官連携によってバイオテクノロジーや食品分野の新事業創出に取り組む企業が低賃料で利用できるインキュベーション施設である。
取り組む研究テーマは二つ。一つは北陸先端科学技術大学院大学や筑波大学などと共同で取り組む「農業経営の評価モデルの開発」だ。将来的には農業ファンドでの活用を想定している。もう一つは石川県立大学と取り組もうと考えているコメの食味の研究だ。
さらに、i-BIRDへの入居を機に考えているのが、学生を巻き込んだ産学官連携だ。「学生はもっと社会と接点を持つべき。そうすることで起業や雇用に結びつく可能性も大いにあります」。学生をパートナーとして起用することで、農業ビジネスの次世代を担う人材育成にも一役買う考えだ。
企業名 | 株式会社 ぶった農産 |
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創業・設立 | 設立 昭和63年3月 |
事業内容 | 水稲・野菜などの栽培、農産加工・販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.29より抜粋 |
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掲載号 | vol.29 |