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経済産業省が実施する地域産業資源活用事業に認定された企業にスポットを当て、農林水産物や伝統工芸品などを活用した、商品開発や販路開拓を紹介する。
合繊織物の製造販売を手がける角出合繊では、「地域産業資源活用事業」の認定を受けた女性用インナー・ルームウェア「キモシ」の販路拡大に取り組んでいる。
「キモシ」は、同社が独自に開発した加賀起毛糸を使ったウェアで、合成繊維でありながらシルクのような肌触りと柔らかさを兼ね備える。さらに、目の細かなニット編みにすることで、薄くて軽い生地に仕上げ、高い保温性と吸水性を実現した。
同社が昨年、女性200人に対し、「キモシ」のモニター調査を実施したところ、試着した人全員が「着ていて気持ちがいい」と回答。手応えを感じた同社では今年5月、「キモシ」専用サイトを立ち上げ、着心地や肌触りを重視する30 ~ 50代の女性をターゲットに、ネット販売を開始した。価格はシャツが5,500~ 6,500円、パンツが6,500円で、6~7月の2カ月間で117枚、8月も100枚台の売れ行きを見せている。
実際に着用した女性に話を聞いたところ、「着ている感じがしないほど軽い上、しめつけもなく、リラックスできる。しわになりにくいのも便利」と好評だった。
「キモシ」が商品化されるまでには、長い道のりがあった。先代社長の角出市松氏が長年培った伝統技術を後世に残したいと考えたことをきっかけに、いくつかある技術の中から「起毛」を選び、7年前から市松氏と角出伸一社長の二人三脚で、新しい糸の開発に取り組み始めた。
フェルト生地などで使われる既存の起毛では、仕上げ段階で生地にサンドペーパーをかけるなどし、表面の糸を切断することで毛羽立たせる。一方、同社が開発した加賀起毛糸は、ポリエステルの糸を構成する繊維一本一本を切断しながら束ねてねじり、毛羽立たせる。そのため、合成繊維特有のハリやコシがない糸が完成した。
当初は糸そのものの販売を考えたが、通常のポリエステル糸の3倍以上もする価格と、糸が切れやすく生地にしづらいという点がネックとなり、なかなか買い手がつかなかった。そこで同社では、加賀起毛糸を編むための編み機を独自に開発し、自らウェアの製造に乗り出した。
「キモシ」の生地は、ヨーロッパのトップブランドの目に止まり、来秋冬モデルでの採用が見込まれるなど、その肌触りや着心地は、世界で評価されようとしている。角出社長は「誰にも真似できないものができた」と自信を見せ、今後、「安眠」「快眠」「癒し」をキーワードに新商品開発を進めていく方針だ。
企業名 | 角出合繊 株式会社 |
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創業・設立 | 創業 昭和12年4月 |
事業内容 | 合繊織物の製造販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.048より抜粋 |
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掲載号 | vol.48 |