現代はモノ余りの時代と言われる。そんな中で激しい競争を勝ち抜いていくためには、価格はもちろん、独自性や希少性、機能性といった部分で差別化を図ることが重要だ。同時に販売促進に向けては、的確に情報を発信するインターネット戦略も重要性を増す。そこで今回の特集では、県内でもとりわけ過疎化が進んでいる奥能登地区で奮闘し、成果を挙げている経営者やその後継者の商品開発やネット活用術にスポットを当てる。
昭和54年に日本で初めて、竣工後の住宅やビルに後付けできる金属製ひさしを開発したのが岩井工業所である。ステンレス鋼板やガルバリウム鋼板で作るひさしの施工は、ビスやくぎで外壁に固定した後、キャップを取り付け、防水用のシーリング剤を充てんするだけ。小型のタイプなら専門業者でなくても一人で施工できる。どんな建物でも外観のイメージを損なわないようにと、デザインやカラーバリエーションも豊富にそろえている。
現在では、サッシメーカーなども参入し、ライバルも増えたが、同社では他社にはない強みを武器に競争力を維持し続けている。例えば、他社製品が複雑な造作が求められる部材を樹脂で作るのに対し、同社ではすべて金属で作る点もその一つだ。これは板金工事で培った熟練の技術があるからできることで、美観が向上するほか、耐久性もアップする。
また、内部に発泡ウレタンを充てんするのも同社ならではで、これによってアルミ材などで内側を補強するのに比べ、軽量化とコスト低減を図っている。ちなみに同じようなサイズの商品で比較すると重量は約半分、価格は10分の1程度になることもあるという。
岩井工業所では現在、北陸4県を中心に全国のハウスメーカーや工務店、建材メーカー、リフォーム会社などにひさしを販売している。有力な販路となっているのがネットショップだ。
同社がネット販売に取り組みはじめたのは平成24年にさかのぼる。ホームページを通じた問い合わせが増えてきたことから、思い切って楽天市場とYahoo!ショッピングに出店。自社サイトにも通販機能を整備した。その後、ネットショップの売り上げは右肩上がりに上昇。同社の販路の中でネットショップは2位にランクし、ひさしの売り上げの15%を占めるまでになっている。岩井久美社長は「近年はひさしを付けない家が増えましたが、実際に住んでみて、雨や日差しを遮ってくれるひさしの必要性に気付くケースがよくあるようで、ネットショップの利用者には女性の個人客も多い」と話す。
ネットショップをさらに強化しようと、平成28年度にはISICOの専門家派遣制度を活用し、自社サイトのSEO対策やリスティング広告の最適化に取り組んだ。これによって「ひさし」や「庇」でキーワード検索した際、自社サイトが検索結果の100位圏外から20位前後に表示されるまでに改善された。
平成29年度には活性化ファンドを活用し、特殊塗装フィルムを使った店舗用鋼板ひさしを東京インターナショナル・ギフト・ショーでPRした。テント生地を使ってオーダーメードでひさしを作るよりも安く、耐久性に優れる点が特徴で、来場者からは「店舗の設計時に採用したい」といった声が寄せられ、岩井社長は「今後、販促活動に力を入れたい」と意気込んでいる。
企業名 | (有)岩井工業所 |
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創業・設立 | 設立 昭和54年9月 |
事業内容 | ひさしなどの製造、屋根工事、板金工事 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.99 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.99より抜粋 |
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掲載号 | vol.99 |