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県木である「能登ヒバ(アテ)」は、抗菌・防虫効果に優れた建材として重宝されるほか、香りがよく、消臭効果があることでも知られる。そんな能登ヒバの間伐材チップを活用し、「ATTE(アッテ)」のブランド名で商品開発に取り組んでいるのがアシストエリアである。アロマルームスプレーに続く第2弾として、活性化ファンド事業の後押しを受けて商品化した靴用消臭キット「ATTE chouchou(シュシュ)」は注目度も高く、着実に売り上げを伸ばしている。
ATTE chouchouは再生紙に消臭・抗菌効果のある能登ヒバの粉末を混ぜ込んだシートを活用した商品である。筒状に組み立てて、靴の履き口に入れておくだけと使い方は簡単そのもの。気になる靴の臭いを消してくれる機能が約半年間持続する。車やトイレの消臭、安らぎを感じさせる空間を演出するインテリアとしても使うことができる。
現在は花やチョウなどをモチーフにした「山と歩く」シリーズ4種類、兼六園の徽軫灯籠(ことじとうろう)や金沢駅の鼓門などをかたどった「古都の美」シリーズ4種類の計8種類をラインアップ。金沢らしさを感じてもらえるよう金箔もあしらった。
2018年4月の発売以降、自社のネットショップのほか、東急ハンズ、県内の道の駅や宿泊施設、北陸自動車道のサービスエリアなど、2019年11月末現在で23店舗に販路が広がり、20~40代女性を中心に着実に売り上げを伸ばしている。また、ロゴマークなどを印字できるため、セールスプロモーションや企業の周年記念などノベルティとしても採用されている。
商品の新規性やデザイン性が注目され、これまでに「ウッドデザイン賞2018」(ウッドデザイン賞運営事務局)、「いしかわエコデザイン賞2018」(石川県)、「エコプロアワード2019 奨励賞」(産業環境管理協会)を受賞。2019年12月にはもてなしの心を感じる全国の商品やサービスを選ぶ「OMOTENASHI Selection」(おもてなしニッポン実行委員会)に選ばれ、野村英史社長は受賞を契機にさらに販路を拡大しようと意欲を燃やしている。
能登ヒバを利用した商品開発が始まったのは約5年前にさかのぼる。能登で林業に携わる人々との出会いをきっかけに、低迷する業界の現状を知った野村社長が、能登ヒバの魅力を発信し、ブランド価値を高めようと、製材業者や美容業者などと、能登ヒバ活性化プロジェクト実行委員会を立ち上げたのだ。第1弾としてはその香りに着目。リラックス効果のある独特の香りを気軽に楽しんでもらおうと、能登ヒバの精油を使った「アロマルームスプレー」を商品化した。
続く第2弾の開発に向け、野村社長が目を付けたのが能登ヒバの消臭効果だった。とはいえ、商品化するには機能性を科学的に裏付けるデータが欠かせない。そこで、2016年度には活性化ファンドの事前調査事業に申し込み、日本を代表する第三者テスト機関である一般財団法人カケンテストセンターに、能登ヒバの粉末を混ぜた再生紙の試験を依頼。結果は上々で、嫌な臭いの元となるアンモニアガス、酢酸ガス、イソ吉草酸ガスが2時間で96~ 99%以上も減少するとのデータが得られた。
「評価が悪ければ、開発は諦めようと思っていたが、しっかりとしたエビデンスが得られたので、自信を持って商品化することができた」。野村社長はそう話し、2017年度からは活性化ファンドの本事業の採択を受け、開発を加速させた。
商品のデザインに当たっては、野村社長が考案したイメージを、金沢美術工芸大学の学生が具体化していった。従来の靴用消臭グッズとは一線を画す、遊び心にあふれた商品に仕上げようと、形状は中敷きのように平面的なものでなく、飾っておきたくなるような立体的なものとした。また、「コミュニケーションが生まれるようなグッズにしたい」(野村社長)との思いから、一部の商品にはメッセージやイラストを書き込めるスペースを作った。
発売から約1年間は販路開拓に苦戦したが、一軒ずつ粘り強く交渉を重ねた結果、2019年春以降は一気に取り扱ってくれる店舗が増えていった。
ISICOのサポートも販路の拡大につながった。例えば、ISICOと金沢ホテル懇話会が開いた商談会を契機にホテル日航金沢などへの納品が決まったほか、ISICO能登サテライトに常駐する職員の働きかけで、能登地区の店舗との取引が増加。ISICOが派遣する専門家からは県外への販路開拓についてアドバイスを得た。
日本最大のパーソナルギフトと生活雑貨の国際見本市「東京インターナショナル・ギフト・ショー」のISICOブースに出展したことで大きな反響を呼び、この春海外の家具メーカーのノベルティとして採用されたほか、東京都庭園美術館での販売が決まった。
販売が苦戦していたアロマルームスプレーも、ATTE chouchouと併売することで、販路が広がり、売り上げが伸びるという相乗効果が出始めている。
「詳細はまだ明かせないが、第3弾として、能登ヒバとITを組み合わせた新商品を構想している」と話す野村社長。これまでとは違うアプローチで林業や森づくりを応援するブランドとして、ATTEの商品群をさらに大きく育て上げる考えだ。
企業名 | 株式会社 アシストエリア |
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創業・設立 | 設立 2008年10月 |
事業内容 | 地域資源を生かした商品の企画・製造・販売事業、総合保険代理店事業、コンサルティング事業、セミナー事業など |
関連URL | 情報誌ISICO vol.109 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.109より抜粋 |
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掲載号 | vol.109 |