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【巻頭特集】CASE01 職場の雰囲気を伝えるショート動画が応募の呼び水に ~野々市運輸機工(株)

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人材の採用力強化と定着率向上へ 中小企業の事例にヒントを探る

少子高齢化によって労働力人口が減少する中、人手不足や離職率の高さに頭を悩ませている中小企業は少なくない。企業の成長や新たな事業展開を支える人材の確保は、重要な経営課題の一つと言えるだろう。そこで今回の特集では、人材難を解消するために積極的な取り組みを進め、採用力の強化や定着率アップにつなげた2社の事例を紹介する。​

ここ2年で9人が入社 ミスマッチも減る

吉田章社長の写真。 鋼材など長尺物や重量物のトラック運送を手がける野々市運輸機工では今年4月に新卒社員1人を迎えたほか、これと前後して4人の20代社員が入社した。昨年も30歳前後の社員が4人入った。
 人手不足が慢性化する業界にあって、同社の採用の呼び水となっているのがTikTokやYouTube、Instagramで発信するショート動画だ。ドライバーへのインタビューをはじめ、トラックの日常点検のポイント、必要な資格など仕事に関わる内容はもちろん、ゲームやクイズ、「踊ってみた」といった柔らかいものまで、ここ2年間で100本を超える動画を投稿している。

 ハローワークや求人検索エンジンに掲出する求人票でもショート動画について紹介し、応募者の多くがこれをきっかけに会社に興味を持ち、応募してくるという。
 「動画を出し始めて求人の応募者数が増え、年齢層も若くなった。会社の雰囲気を理解した上で入社してくれるのでミスマッチが少なく、離職率は5%以下になっている」。そう話すのは吉田章社長で、自身もたびたび動画に登場し、時にはいじられ役として視聴者の笑いを誘っている。

撮影も編集もスマホ1台で完結

 同社がショート動画による情報発信に力を入れるようになったきっかけは、就活生向けの合同企業説明会に参加した際、有名企業のブースだけに人が集まる現実に直面したことだった。では、どうすれば若者に会社の存在を認知してもらえるのか。そう考える中でたどり着いたのが、若者が好んで見るショート動画だった。
スマホを使った動画の撮影風景の写真。 「文章や写真に比べて、動画は伝わる情報量が多い。スマートフォンが1台あれば、撮影から編集、アップロードまでを完結することができて、費用がかからないのもメリット」と感じた吉田社長は、まずは数多く視聴されている動画をまねることからスタート。現在は2人の社員が企画、撮影、編集に関わり、1週間に2本のペースで投稿している。
 ちなみにこれまで投稿した中で最も再生回数が多いのが「お菓子コーナーを作ってみた」という動画でTikTokでの再生回数は50万回を超えた。取引先や社員の家族などからも反響があり、ショート動画の拡散力を実感している。
 「人手不足と言われるが、足りないのは企業側の伝える努力。まだまだやれることはくさんある」と吉田社長は力を込める。

殺伐とした職場から10年かけて改革

 求職者が企業を選ぶ際、労働条件だけでなく、職場の雰囲気や人間関係の良さも大きな判断材料となる。その点、同社のショート動画からは、出演する社員の笑顔などを通じて楽しく、活気に満ちた職場の様子が伝わり、求職者を引きつけている。
 これがうわべだけのものならば、一旦入社したとしても長続きはしないだろうが、同社では約10年前から組織風土改革に取り組んでおり、その成果がしっかりと根付いている。
 改革の契機となったのは、吉田社長(当時は専務)がベテラン社員から「このままだと皆辞めていくぞ」と言われたことだった。当時の野々市運輸機工は労働環境が悪く、社内でのいざこざが絶えなかった。危機感を覚えた吉田社長は社員との対話を徹底し、不満や意見に真摯に耳を傾け、改革に取り組んできた。
 経営理念の策定、業務のデジタル化推進、「ありがとうカード」の運用、休憩室のリフォーム、休日の増加、資格取得支援制度の導入、社内行事の開催など、多岐にわたる改革を進め、現在のように風通しがよく、協調性のある社風を築いてきた。

よりよい職場づくりへ社員との対話を重視

菓子をつまみながら休憩時間に談笑する野々市運輸機工の社員の写真。 吉田社長が組織風土改革に向け、最も重視するのは社員との対話である。その際に心がけているのは、一人一人の良い面に焦点を当てることだ。また何か問題があったときに社員を責めるのではなく、指示の出し方などに原因がなかったか検証することで、より建設的で前向きな対話を可能としている。
 社員の声をヒントに近年取り入れたのがジョブローテーションの仕組みだ。「人は自分ばかりが苦労していると思いがち。それならば、一度入れ替えてみればよいのではと考え、制度化した」(吉田社長)。研修や配車の手間は増えたが、導入後は不満の声が減ったほか、相互理解が深まりチームワークもよくなった。仕事の属人化が解消したことで、介護や子育てのための休暇取得も容易になった。
 これからは健康経営に力を入れようとISICOの専門家派遣制度を利用し、健康指導や動画による啓蒙活動にも取り組み始めた。
 「畑に例えると一番重要なのは土づくり。会社で言えば、それが組織の風土や人間関係であり、これらが整っていなければどれだけ求人募集をしてもうまくいかない。また、組織改革は一度成果が上がってもダイエットで言うリバウンドがあるため、継続的な取り組みが重要」と話す吉田社長。これからもよりよい職場づくりに注力し、採用・定着につなげる考えだ。

企業情報

企業名 野々市運輸機工株式会社
創業・設立 創業 1966年1月
事業内容 一般貨物自動車運送事業

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関連URL 情報誌ISICO vol.136
備考 情報誌「ISICO」vol.136より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.136


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