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令和6年能登半島地震で被災しながらも、試練を乗り越え、明日への一歩を踏み出した地元企業の奮闘ぶりを紹介します。
「CとH」は6月、珠洲市中心部でかつて保険会社の営業所として使われていた建物を活用し、24時間年中無休のコワーキングスペース兼ビジネス交流拠点「OKNO to Bridge(奥能登ブリッジ)」を再開した。もともとはすぐ近くの別の建物で運営していたが、今年1月の能登半島地震によって全壊したため、金沢に拠点を移し、奥能登と行き来しながら活動していた。新たな拠点は184平方メートルの広さがあり、復興に関わる地域内外の人々が集い、多目的に使えるスペースを確保した。
同社を立ち上げたのは、東京都出身で昨年5月に母の故郷である珠洲市に移住した伊藤紗恵さんと珠洲市出身で今年1月まで能登町の宿泊施設で支配人を務めていた橋本勝太さんだ。地元の人材はもちろん、伊藤さんのネットワークを活用して首都圏から大手企業に勤める人材を呼び込み、地域の課題を解決する新たなビジネスや雇用を創出しようと活動を続けてきた。
2人の取り組みはISICOが主催する「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2023」の地域活性化賞を受賞。被災後は、知人の協力を得て、金沢市や富山県高岡市にも活動拠点を広げ、珠洲を中心に地域間連携を強化する。
現在進めている取り組みの一つが、地元の女性のテレワークスキルの育成だ。首都圏や関西の企業に連携を呼び掛け、オンラインでできる仕事も提供する。また、東日本大震災の復興に携わるキーパーソンとつながりを得て、耐熱ガラスメーカー・HARIO(東京)が手がけるアクセサリーを東北に続き、能登で製作する準備も進めている。「地元で働く選択肢を増やすことができれば、能登に残る・戻る・関わり続けるという可能性が生まれる。女性や若者が住みたくなる町をつくりたい」と伊藤さんは狙いを話す。
大学のない能登に若者を呼び込むため、今夏は地域での交流イベントの企画運営などを体験できるインターンシップを実施。5人の定員があっという間に埋まった。首都圏などからの企業研修を受け入れようと、プログラムの設計にも着手する。橋本さんは「日本は人口減少期に入って、従来型のビジネスモデルが通用しなくなっている。人口の少ない地域でいかに関係人口を増やし、ビジネスを作るか。ここからワクワクする未来をつくっていきたい」と話し、都市部と奥能登のリソースを掛け合わせた事業開発も視野に、意欲を燃やす。
企業名 | 合同会社CとH |
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創業・設立 | 設立 2023年6月 |
事業内容 | コワーキングスペース兼ビジネス交流拠点の運営など |
関連URL | 情報誌ISICO vol.136 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.136より抜粋 |
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掲載号 | vol.136 |