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2023年度の「いしかわアクセラレータープログラム」に参加したスパインクロニクルジャパンの米澤則隆社長と、スタートアップ支援の実績が豊富で、同プログラムの委託事業者であるHED(金沢市)の高田諭社長に、これまでの成果などを聞きました。
スパインクロニクルジャパンは、骨粗しょう症性椎体(ついたい)骨折や腰部脊柱管狭窄(ようぶせきちゅうかんきょうさく)症の患者を治療するための脊椎固定用インプラントと手術機器の実用化を目指すスタートアップです。現在、使われている機器は欧米製で、日本人の高齢者に合わないため、術後にインプラントが緩むなどの不具合が発生したり、合併症を引き起こしたりするケースが数多くあります。整形外科医の米澤社長は、こうした課題を解決するためにキャリアを中断し、会社を立ち上げました。
「勤務医だったので経営に関する知識がなく、不安を感じていたためISICOに相談したところ、いしかわアクセラレータープログラムを紹介され参加した」と話す米澤社長。金沢市出身でリード・キャピタル・マネージメント(東京)の谷本徹社長から半年間、指導を受けました。米澤社長は「事業計画書の作成、資金調達にあたって中心的な役割を担うリードインベスターとの関係構築、資本政策の考え方など、多くのことを学んだ。疑問や悩みについて的確なフィードバックが得られ、とても助かった」と振り返ります。ベンチャーキャピタルから2,300万円の資金調達にも成功しました。コーディネーターを務めた高田社長は「米澤社長は医師であり、最初は投資家の行動原理や求めているものを翻訳しながら伝える必要もあったが、今では経営者として大きく成長した」と評価します。
スパインクロニクルジャパンでは量産を見据えた生産体制の構築にめどを付け、正式な医療機器メーカーとしての承認も取得しました。来年からはいよいよ臨床試験を開始する予定です。臨床試験では新たに7億円の資金が必要になりますが、その調達にもプログラムを通して得たノウハウやネットワークが役立つに違いありません。
米澤社長は「本当に多くの人に応援してもらっているので、後は結果を出すだけ。背骨の手術は年間10万件ほどあり、この市場を狙って遅くても2027年にはリリースしたい」と力を込めます。
一方、高田社長は「米澤社長をはじめプログラムの卒業生がさらに成長し、スタートアップを志す若手をサポートする側に回れば県経済にとってプラスになる」と将来を見据え、「プログラムを進化させていくためにも、幅広い企業に参加してほしい。現状にもどかしさを感じている、あるいは最近刺激がないと感じている経営者はぜひ応募を」と話しています。
企業名 | 株式会社スパインクロニクルジャパン |
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創業・設立 | 設立 2022年9月 |
事業内容 | 整形外科医療機器の研究・開発 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.136 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.136より抜粋 |
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掲載号 | vol.136 |