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薬の原料になる希少な天然成分を微生物を工場として活用し、安価に大量生産へ ~ファーメランタ(株)

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サキドリ

石川県立大学発のスタートアップ企業のファーメランタは、独自のバイオ技術を用いた機能性原料の量産化に向け、実証プラントを2026年6月に竣工した。研究室レベルの数リットル規模から一気に3,000リットル規模へのスケールアップに成功し、大量生産・安定供給プロセスの確立に向け大きく前進した。​

石川県立大学発のバイオテクノロジー企業

実証プラントの2階部分の写真。3,000リットルの培養槽の巨大なタンクがフロアの下に広がる。 ファーメランタは、石川県立大学で合成生物学を研究する南博道教授と中川明元准教授、外資系証券会社出身の柊崎(ふきざき)庄吾CEOの3人が、共同創業者として2022年10月に設立したバイオベンチャーだ。
 合成生物学とは、DNAなどの生命の構成要素を人工的に設計し、自然には存在しない新たな機能を創り出す学問だ。従来の応用微生物学や遺伝子工学が自然に存在する機能の「発見」「改変」を焦点とするのに対し、合成生物学は自然に存在しない機能を「創り出す」ことを目的とする点に違いがある。
 この合成生物学の知見を生かして同社が研究を進めるのが、微生物を用いた天然由来の有用成分の大量生産化だ。
 現在、医薬品やサプリメントの原料となる成分は主に植物から抽出しているが、そこにはいくつも課題がある。
 主なものでは、「年単位の栽培や天候による収量の不安定さ」「低含有量に伴う抽出コスト」「水の大量消費と廃棄物発生」などが挙げられる。こうした側面が供給量と価格に反映され、医薬品やサプリなどは先進国にしか出回らないという格差問題もある。
 これらの課題を克服すると見込まれているのが同社のバイオ技術だ。具体的には、植物が有用成分を産生するDNAを大腸菌に導入し、大腸菌を有用成分の工場に変えてしまう菌培養の手法だ。
 菌培養のメリットは、必要な栄養が糖、窒素、必須のミネラル栄養素と、生物の生育に必要なもののみでよい点にある。また、生産サイクルが培養と成分の抽出・精製で1週間程度と、安価に安定的に大量生産できる。
 合成生物学でプラットフォームに用いるのは、酵母菌と大腸菌が主流だ。酵母菌は植物により近い真核生物で、植物のDNAを移植しやすいメリットがあるが、倍加に2時間かかる。一方、同社が使う原核生物の大腸菌は、わずか20分で倍加し、生産性で圧倒的に優れている。

市場規模は巨大 大腸菌が紡ぐ、無限の市場と未来

トマトのリコピンを産生するDNAを導入した大腸菌の写真。 同社は現在、10数種類におよぶ成分の量産化の研究を進めている。いずれも医薬品やサプリに加え、化粧品や天然色素、食品添加物、香料などの原料になり、これらの成分の市場規模は一つ一つが数百億~数千億円にものぼる。
 この先、売り上げの主力になると見込むのが、医療用鎮痛薬の原料だ。こうした成分は市場規模が大きいことに加え、消費量の約90%が先進国に偏っている。加えて、同成分は栽培に非常に厳しい制限のあるケシ科植物から抽出しているため、現在の市場では非常に高価でもある。
 私たちになじみ深いものでは、トマトの赤い色素としてよく知られるリコピンが挙げられる。リコピンには強い抗酸化作用があり、紫外線から肌を守るほか、余分なコレステロールを回収する働きもあり、スキンケア分野や健康食品分野でのニーズが高い。
培養した大腸菌からリコピンを抽出する様子の写真。 同社の技術では、大腸菌に植物だけでなく、動物由来のDNAも導入することもできる。一例がブタの小腸から抽出している血液抗凝固剤のヘパリンだ。ヘパリンの原薬は大半を中国から輸入しており、重要物資の国産化という点でも意義がある。
 天然のDNAだけでなく、自然界に存在しないDNAの導入も技術的には可能だ。「DNAとは、さまざまな機能を持つさまざまなタンパク質を作るための設計図です。従って、例えばAIが設計したDNAであっても私たちは菌に導入でき、そこには限りない可能性が秘められています」(柊崎CEO)。

研究助成で実現した実証プラント スピード重視で委託生産

 こうした有用成分の大量生産に向けて、今年6月に大学の敷地内に竣工したのが3,000リットル1基と500リットル1基の培養槽を備えた実証プラントだ。これまで、同社の培養槽は2リットルと30リットルが複数基あるだけで、一気に大型化した。ちなみに2リットルの培養槽は、創業間もないころISICOの成長戦略ファンドDX枠による助成を受けて導入したものだ。
 同社が大学の研究室に留まらず、起業という道を選んだ理由も、まさにこうした最新設備の導入や、優秀な人材の確保にある。
 合成生物学の国際競争は非常に激しく、競争を勝ち抜くには最新の設備と多数の優秀な研究者が欠かせない。それには、多額の資金が必要になるが、大学の研究資金では圧倒的に足りないのが現状だ。そのため、法人化することで資金調達の選択肢を増やし、投資機関などから得た資金を投じて研究開発を強力に推し進めている。
柊崎庄吾CEOの写真。 同社では、量産の実証を終え次第、商業ベースの大量生産を2027年のうちに開始する予定だ。計画では、早期の市場投入に向けて、既に量産設備を持つ企業に菌株を提供し、生産を委託する方針で、自社生産への移行はその後、段階的に進めていく構えだ。
 実証プラントの本格稼働は今秋から。ファーメランタ発の産業構造の大転換が、目前に迫りつつある。

企業情報

企業名 ファーメランタ株式会社
創業・設立 設立 2022年10月
事業内容 微生物による有用成分の生産

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関連URL 情報誌ISICO vol.148
備考 情報誌「ISICO」vol.148より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.148


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